進化した“ヒラリ感”「ロードスター」の大幅改良モデルに、ワインディングで試乗する機会を得た。 改良の骨子は「先進安全技術の進化」と、「マツダ コネクト」におけるサイバーセキュリティ対策だ。そしてここに、アピアランスのアップデートと、ダイナミクスの“小変更”が加わった。 しかしそのダイナミクスの“小変更”こそが、ロードスターの走りを“大幅”に変えていたと筆者は感じた。 >>9年目の改良で魅力マシマシ! マツダ ロードスターマイチェンモデル 来年1月発売 新型ロードスターを走らせてまず驚かされたのは、新しくなった電動パワーステアリング(EPS)の素晴らしさだ。大げさでも何でもなく、普通にカーブを曲がっただけで、誰もがその良さを噛みしめるだろう。 ステアリングシステムとしては、まずラックの摩擦が低減された。サプライヤーは同じだが、モーターを新型とし、その制御を今回からマツダ自身が行ったのだという。 その制御は初期から適正なフィードバックトルクが立ち上がるようになり、まず操舵感そのものが上質になった。そして肝心なカーブでは、車体の動きがとても操作しやすくなった。 比較すると旧型は、この微少舵角域でパワステの押さえが効かず、ハンドルが切れすぎてしまう。そして足周りに荷重が掛かってくると、ようやくそのロールスピードがジワッと抑えられる感じだった。 ロードスターといえば、“ヒラリ感”という言葉が有名だ。 そしてこの一舵目の動きをヒラリ感だと捉えるならば、新型にはそれがなくなったと言えるだろう。しかし筆者に言わせれば旧型のそれは“グラリ感”で、速度域が上がるほどその応答遅れが、“ヒヤリ感”に変わる。 つまりロードスターが持つ本質的なヒラリ感は、本当は別のところにあるということを、今回のアップデートで確かめることができた。 >>ロードスターってどんな車? 価格やスペックはこちら 新採用「アシンメトリックLSD」の効果は?そしてもうひとつの進化は、「アシンメトリックLSD」の採用だ。 これは従来の円錐クラッチ型「スーパーLSD」をベースに、アクセルオン側/オフ側にカム機構を追加したリミテッドスリップデフである。 いわゆるアフターマーケットの機械式LSDと違うのは、イニシャルトルクが極めて低いこと。そのトルクは先代型スーパーLSD(49Nm)に対しておよそ半分強(26Nm)で、エンジン回転が低い駐車時の切り返しやUターン、交差点を曲がるような場面では、オープンデフのように運転ができる。もちろんバキバキとした作動音もなく、引きずり抵抗でクルマがガクガクすることもない。 そして肝心な走りでは、まずターンインでの安定性を高めてくれる。ブレーキング時(つまりアクセルオフ時)にリア荷重が減った状況からターンを始めても、デフロック方向の制御が強まって内輪差が少なくなり、挙動が安定するというわけだ。 対して加速時は、カム角を緩めに取ることで穏やかに駆動力を確保する。そもそもロードスターは内輪の接地性が高いため、必要以上にロック率を上げなくても、トラクションが得られるというわけだ。またリア外輪にトルクを一気に伝えないことで、ドリフトコントロールも穏やかになる。 ただ筆者には、アシンメトリックLSDの効果がハッキリとは体感できなかった。 その理由のひとつは、同時に「キネマティック・ポスチャー・コントロール」(KPC)が高い効果を発揮しているからだと思う。これは旋回時リア内輪に極めて弱いブレーキを掛けてリアのリフトを抑える制御で、LSD同様にターンインでの挙動が安定する。DSCオフでKPCの作動をキャンセルすると、後輪が路面に張り付くような感じが和らいだから、このふたつがセットなのだと思う。 さらに言うと感覚的には、新型の進化をフロントサス周りに感じるのだ。まるでダンパーやブッシュが変わったかのように、ハンドルを切ったときの接地感が高い。このハンドリングが、EPSの制御だけで得られているとは思えない。しかしLSDとKPCという、主に“後ろ側”の作用が影響しているのだとしたら、もっと驚きである。 >>ロードスターってどんな車? 価格やスペックはこちら グレード選びは悩ましいちなみにエンジンは、今回1.5L直列4気筒がオクタン価の高い国内ハイオクガソリン用にマッピングを改め、その出力も3kW(約4PS)向上した。とはいえ重量増加もあるから、その速さに変化は感じなかった。 プラシーボ的に言えば、これまで盛り上がり感のなかったエンジンフィールに、少しパンチが出た気がする。むしろハンドリングの過敏さが取れたおかげでアクセルが踏めるようになり、さらにその良さを体感できるようになったという感じだろうか。 参考ついでに言うと、軽さを追求したグレードである「990S」が今回ラインナップされないのは、この重量増加で1t切りが難しくなったからだ。一番軽い「S」でも、その車重は1010kgである。 ともあれこうしたアップデートを経て、ロードスターの走りは大幅に良くなった。そしてワインディングロードで一番良いと感じたのは、レカロシートとスポーティな足周りを装備する「RS」だった。 しかしブレンボのローター&キャリパーにRAYS製鍛造アルミホイールを組み合わせたオプション込みだと約400万円という価格を見て、ちょっと引いた。もちろんこの3つで税込み33万円はバーゲンプライスだが、ロードスターの車格を考えると、そもそものイニシャルコストが高過ぎる。 そう考えると一番バランスが良いのは308万7700円の「S Special Package(6MT)」で、実際最も売れているのだという。 そしてダイナミクス性能をきっちり引き出して走りたいなら、コストパフォーマンス的には306万4600円の「NR-A(6MT)」が、やはり最良の選択だと思えた。 >>ロードスターってどんな車? 価格やスペックはこちら 1t超えでもその魅力は輝きを増す今回レースベースグレードである「NR-A」の試乗車はなかったが、実はbty編集部のH君が自身の初期型NR-Aを持ち込んでくれていた。初期型のNR-Aは確かにEPSの初期応答性が悪かったが、切り込んだ後ビルシュタインダンパーの減衰力が素早く立ち上がり、挙動を安定させてくれていた。 となると今回の改良が施された新型NR-Aのハンドリングは、かなり良くなるに違いない。 NR-Aはレースでの使用を前提にサイドエアバッグを省いているが、先進安全技術は標準装備だ。朗報は、今回から8.8インチモニターが標準となり、「マツダオンラインナビ用SDカード」の購入でマツダコネクトが使用可能になったこと(フルセグの地デジTVチューナーとBOSEサウンドシステムは選べない)。 電気系を刷新したことで、わざわざオーディオコントローラーを新設するよりは8.8インチモニターで統一する方が、コスパが良いとのことだ。だからナビはなくても、スマホをミラーリングできる。 >>【レース直系】2.0L×幌仕様ロードスター、待望の市販化へ! 2.5Lターボのマツダ3も開発中 また2.0L直列4気筒(184PS/205Nm)を搭載する「RF」も、大きく質感を上げた。 出力こそ184PS/205Nmのキャリーオーバーだが、6MT仕様のエンジン制御には1.5L同様最新の駆動力制御ロジックが用いられた。特にRFは排気量が大きな分だけ、アクセルを緩めた際トルク変動が滑らかになっているのがわかりやすかった。サウンドは旧型の方が荒々しく感じたが、洗練度では断然新型の走りがキャラに合っている。 総じて新型ロードスターは、マツダの言葉通り大幅な進化を遂げていた。何より残念なのは、メカニカルなもの以外、今回のアップデートがレトロフィットできないことだ。エンジンマッピングはもちろん、LED灯火類、そしてステアリング周りを旧型に移植することができないのだという。 このマイナーチェンジでロードスターの車重は、一番軽量な「S」でも1tを超えた。しかしそれと引き換えにしても、今回の改良には価値があると筆者は感じた。曲がり角をひとつクリアするだけで、その進化は体感できる。だからぜひ旧型オーナーは、ディーラーでその走りを確かめてみて欲しい。 そうしたら何人かのオーナーは、きっと新型へと乗り換えることになるだろう。そしてアナタの旧型が中古車市場でさらに買いやすい状況になれば、若者たちにもNDロードスターの魅力を分けてあげられることになる。こうして次世代に、意のままに操る愉しさを受け継いでいこうじゃないか。 >>ロードスターってどんな車? 価格やスペックはこちら |
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