スポーツ系からの脱却を目指した新デザイン第4世代となったスズキ「スイフト」が、その見た目と走りを大きく変えてきた。 デザイン面では、先代の丸みを帯びたグラマーなボディラインをシャープにリメイクした。ヘッドライトとグリルでスイフトの面影をきちんと残しながらも、クラムシェルボンネットでその印象をリフレッシュ。そこからボディサイドへと力強いキャラクターラインをラウンドさせて、新しいスイフト像を構築した。 |あわせて読みたい| こうしたデザインの大胆な変更には、先代スイフトについたイメージの払拭が少なからずあるという。それは「スイフトは、走り好きのためのクルマ」というレッテルだ。こうした印象は「スイスポ(スイフト スポーツ)」の影響が大きいからだと筆者は思う。 つまりこの世代でもスイスポが登場すれば同じことになるのではないか? とは思うのだが、とにもかくにもそうやって敬遠してしまっていたターゲットユーザーたちに、新しいスイフトのステアリングを握って欲しいという願いが、このデザインに込められている。 【スズキ スイフトの各種情報はこちら】 そんなスイフトの走りはというと、これがまた格別に「スポーティ」だったから、ちょっと戸惑った。 走り出す前にそのラインナップを説明すると、今回試乗したのはハイブリッドグレードの上級グレードである「HYBRID MZ」。ハイブリッドとは言いながらも、実際の走りはあくまでエンジンが主体であり、これをモーターが適宜アシストする「マイルドハイブリッド」であるのは先代と同じだ。 そのパワーユニットは新開発の1.2L直列3気筒エンジン(82PS/108Nm)に直流モーター(3.1PS/60Nm)の組み合わせで、トランスミッションは今回試乗したCVTの他に、標準仕様の「HYBRID MZ」には5MTも用意される。かたや同じ新開発エンジンを搭載する純ガソリン仕様の「XG」は、CVTのみとなるのが面白い。駆動方式は全グレードにFWDとAWDが用意されている。 ということでスイフトの走りだが、その乗り心地はタウンスピードからハッキリと硬めだ。先代ハイブリッドのまったりとした乗り味から一転して、シャキッとスポーティになっていた。これをして「乗り心地が悪くなった」と思うユーザーは必ずいると思う。しかし、それはちょっと違うと考えている。 >>現在販売中ハッチバック一覧はこちら パワートレーンの調律が見事硬さの主軸となっているのはエコタイヤ(ブリヂストン エコピア EP150)の特性によるもので、Bセグのベーシックカーが環境性能を重要視するのは仕方のないところ。タイヤの変形を抑えて加速時のエネルギーロスを防ぎ、これをスムーズに転がすための剛性が必要であり、その分突き上げる印象は強くなる。 対して足まわりは、こうしたタイヤの剛性感を生かす方向でスポーティにまとめられている。ダンパー自体は割としなやかに追従しており、早めにバンプラバーをじわりと当てるなどして、総合的にはシャキッとした印象となっていると感じた。 またスイフトはハイブリッドでも950kg、ガソリン仕様だと910kgという軽さだから、速度が低い領域だと路面によってはハーシュネスを感じる。対してボディは先代からのキャリーオーバーだが、依然として剛性感は高くバイブレーションがよく抑えられている。つまりシャキッとはしているが、不快感のない仕上がりになっていると感じた。 【スズキ スイフトの各種情報はこちら】 新開発の3気筒エンジンは、予想以上に好印象だった。 マイルドハイブリッドだけに冷間時のスタートではエンジンが“ブルン”と始動するが、走り出してしまえば振動が少なく、バルクヘッドまわりの遮音性の高さも相まって室内は静か。むしろタイヤのロードノイズの方が大きいくらいだった。 街中ではモーターがかいがいしくアシストし、加速時にもエンジン回転を大きく上げさせない。またCVTとの協調制御も見事で、アクセルを踏み込んだ際も加速と音のずれがない。いわゆるラバーバンドフィールが起こらないから、気持ち良くエンジンを回していく感覚が得られる。 アクセルをオフにすれば静かに空走し、再び踏めばリニアにトルクを追従させてくれる。ちなみに今回開発陣はパドルシフトの制御をに力を入れたとのことだったが、CVTの制御はDレンジの方が優秀だと感じた。アップ側のシフトはとてもスムーズだが、ダウン側のレスポンスがまだまだ鈍い。 |あわせて読みたい| こうした足まわりとパワーユニットのおかげで、ワインディングでの走りは実に楽しい。操舵に対するフロントタイヤのライントレース性はタメがなくスムーズで、割と高めな重心に対してロールもきちんと抑えられている。 ペースを上げると操舵レスポンスはやや鈍るが、それはダンパーのコンプ側(縮め側)減衰力を上げすぎていない、つまり足まわりを攻めすぎていない証拠だ。こうした状況でもブレーキで適切なフロント荷重を与えてあげれば舵が効いて、クルマと対話しながら気持ち良くコーナーを曲がることができる。そう、確かにスポーティではあるけれど、決してやり過ぎてはいないのである。 高速巡航でも、その良さは現れた。しっかりした足腰のおかげで直進性が高く、ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)を効かせたときの操舵支援がスムーズ。またエンジンも街中同様に静かで、常用域となる2000~3000回転での音量が小さく抑えられていた。 追い越し加速で絶対的な速さはないが、出足の良さがそれを補ってくれるからストレスもない。通常の流れの中であれば、十二分に快適な高速移動ができるだろう。 >>bty 現在販売中のSUV一覧はこちら これならスイフトスポーツいらないかも…?インテリアはインパネまわりがプラスチック然としているものの、シボやパネル表面の形状が工夫されており、ダッシュボード及びステアリングの2トーン配色と相まって居心地は良好。これといった飛び道具はないが、スッキリとした室内空間になっている。 シートは見た目がゴツいけれど、クッション自体は張りと柔らかさのバランスがちょうどよく、サポートも良好で座り心地がかなりいい。 また全高(1500mm)やホイールべース(2450mm)に変更はないが、リアの居住性が高いのも相変わらずで、ひざまわりやつま先まわりに余裕がある。ヘッドクリアランスも同様で、グラスエリアも広くて解放感が高い。 肝心な乗り心地は、荷重が軽い分だけ突き上げ感はフロントより高くなるが、軽いボディの割に不快な振動がきちんと抑えられているのには好感が持てた。試乗車はまっさらな新車だったことを考えると、距離が増えればその乗り心地もさらに良くなるだろう。フワフワ、ガタガタしない分だけ酔いにくい乗り心地だとも言える。 【スズキ スイフトの各種情報はこちら】 総じてスイフトは、とってもまじめな仕上がりだった。そして、スポーティなコンパクトカーだった。 となると、スズキのやりたかったことと、実際に乗って感じたことが違うように思えるかもしれないが、そうではない。スイフトにとってスポーティな走りは、基本キャラなのだ。しかしその気持ち良さは、走り好きや走り屋のためだけにあるのではない。 |あわせて読みたい| ごく普通にコンパクトカーが好きなアクティブユーザーが乗って「あ、気持ち良いな」と感じられるように仕上げているのであって、それをイメージだけで敬遠しないで欲しいというのが開発陣の思いなのだ。 乗り心地のシャッキリ感に対しては、これを硬いと感じるなら乗らない方がいいと思う。スイフトはフレッシュなZ世代に向けたクルマであり、乗り心地にうるさいベテランのためのクルマではない。 またこの出来映えをして、新型スイフトに試乗したら「これならスイスポじゃなくてもいいや」と思うユーザーは沢山出てくるだろなとも思った。ハイブリッドの5MTで気持ち良く走れたら、それで十分幸せになれそうな予感がする。 とはいえ、この後控えているはずの“スイスポ”は、ニッポンの宝。出さないわけにはいかないでしょう! 標準車には設定されないチャンピオンイエローをまとって、早く我々クルマ好きの前に現れて欲しい。 【スズキ スイフトスポーツの各種情報はこちら】 <おわり> >>btyの新車情報カタログはこちら |
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