パワートレーンはディーゼル+マイルドハイブリッドとPHEVの2種類マツダが開発を続けてきた新型プラットフォームと新開発パワートレーンを用いた新型SUV「CX-60」のプロトタイプを、同社が山口県にもつ美祢自動車試験場(かつてのMINEサーキット)で試乗した。直6ディーゼルターボエンジン+MHEV(マイルド・ハイブリッド)、直4ガソリンエンジン+PHEV(プラグイン・ハイブリッド)という2種のエンジンを、新開発の8速ATと組み合わせて新開発のエンジン縦置き用プラットフォームに搭載した意欲作で、マツダはこのモデルで上級移行とさらなる環境負荷低減の一挙両得を狙い、生き残りをかける。 CX-60はトヨタ・ハリアー、RAV4、日産エクストレイル、ホンダCR-V、三菱アウトランダーPHEVあたりとほぼ同じサイズのSUV。マツダはこのカテゴリーにCX-5をもつが、CX-60のほうが若干大きい。CX-60はCX-5の純粋な後継モデルというわけではなく、両モデルは併売されるが、いずれは一本化されるだろう。 エンジン横置きのFWD(とFWDベースの4WD)のCX-5と違い、CX-60はエンジン縦置きのRWD(とRWDベースの4WD)となる。搭載されるパワートレーンは、3.3L直6ディーゼルターボエンジン+MHEVと、2.5L直4ガソリンエンジン+PHEVのという2種類。 3.3L直6ディーゼルターボエンジン+MHEVは、最高出力254ps/3750rpm、最大トルク550Nm/1500-2400rpmを発揮するエンジンに、電気モーター(同17ps、同153Nm)と小型のリチウムイオンバッテリー(0.33kWh)を用いた48Vのマイルドハイブリッドシステムが組み合わせられる。直6エンジン、モーター、8速ATがそれぞれ間にクラッチを挟んで直列に配置され、後輪もしくは4輪を駆動する。 メルセデス・ベンツ、BMW、ジャガーランドローバー、それにトヨタの6気筒ディーゼルターボエンジンは、軒並み最高出力300ps超、最大トルク650Nm超のスペックを誇り、車重2トンを超えるクルマに強力な加速力を与えているが、マツダのエンジンはそこまでの高出力、高トルクではない。これは狙いの違いだ。 マツダによれば、低負荷の領域を除けば、エンジンの排気量が大きいほうが回転数を下げられ、燃費率は高い。ATを自社開発するマツダは長らく6速ATを使い続け、この点で燃費に不利だったが、この度ようやく新開発の8速ATが登場。多段化によっても低回転を維持しやすくなった。さらにこのATはトルクコンバーターレスとすることで効率を高めたという。 発進直後や極低速走行時といった低負荷領域の効率の悪さはモーター駆動がカバーするという考え。その結果、正確なデータは未発表ながら「CX-3並みの燃費性能を発揮する」という表現でエンジニアはアピールした。ちなみにCX-3ディーゼル(AT)の燃費は19.0~20.0km/L。CX-60ディーゼルの車重は約1900kgというから、この燃費性能はすごい。 ドライバーが意図した通りに動き、運転が楽しい走らせてみた。マツダの4気筒ディーゼルもライバルに対し、静粛性、制振性の面で優位だったが、新エンジンは両面でさらに進化している。直列6気筒の吹け上がりは一瞬ディーゼルであることを忘れさせる気持ちよさを感じさせた。5000rpm未満でどんどんギアアップしていくので伸びやかではないが、車速は猛烈に上がっていくので頼もしい。この加速力と触れ込み通りの燃費性能が両方得られるのなら、新しいパワートレーンは間違いなく魅力的だ。プロトタイプということでまれにATの動きがギクシャクすることがあったが、市販までにチューニングを煮詰めてくるはずだ。 続いて2.5L直4ガソリンエンジン+PHEVに試乗した。マツダ初のPHEVとなる。最高出力191ps/6000rpm、最大トルク261Nm/4000rpmのエンジンに、同175ps/5500rpm、同270Nm/4000rpmの電気モーターが組み合わせられる。ディーゼル+MHEV同様、エンジン、クラッチ、モーター、クラッチ、8速トランスミッションが直列に配置され、後輪もしくは4輪を駆動する。 システムとしての最高出力は327ps、最大トルクは500Nmと強力で、トヨタRAV4PHVや三菱アウトランダーPHEVを上回る。車重は約2100kg。駆動用のリチウムイオン・バッテリーは、総電力量17.8kWh。EV走行可能距離はグレードによって61~63km。燃費は66.7km/L(WLTC)、燃料タンクは50L(ハイオク仕様)。 電力残量が十分である限りモーター駆動を基本とするのは他社のPHVと同じ。モーター駆動である限りEV同様の静粛性とスムーズさを味わうことができる。RAV4PHVやアウトランダーPHEVがプロペラシャフトを持たず、前後それぞれにモーターを備えるの対し、CX-60は1モーターからプロペラシャフトを通じて後輪に駆動力を伝え、ATから前方へ向かって伸びるトランスファーによって前輪へも駆動力を配分する。この辺りのメカニズムの違いによって、RAV4PHVやアウトランダーPHEVはEVっぽさを、CX-60はモーター駆動ながらどこか従来のICE(内燃エンジン)っぽさを感じさせる。絶対的なパワーは十分。発進時の力強さはディーゼルと同等だが、80km/h以上のスピードの伸びは圧倒的にPHEVが上回る。 縦置きするレイアウトを採用するため、両方のパワートレーンを受け入れることができるエンジン縦置き用プラットフォームが新設された。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーンで、リアがマルチリンク。サスペンションの作動軸が前後で揃えられているのが最大の特徴。それによってピッチング(車両の前後がそれぞれに揺れる動き)の動きを抑え、快適な乗り心地を目指したという。 多くのクルマはピッチングセンター(前後が上下する動きの軸)がホイールベースの間のどこかに存在するが、CX-60では車両を飛び出してかなり後方にある。このため路面から入力を受けた際、ピッチングではなくバウンシング(車両全体がそろって上下する)の動きをするようにチューニングされている。また先般ロードスターに初めて採用された、コーナリング時に内輪のリフトを抑える効果があるKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)も備わる。さらに前後重量配分がディーゼルで55:45、PHEVで51:49と理想的。 これらの効果が相まって、加減速時、旋回時、そしてそれらが組み合わさった動きの時、要するに走行中は常に、車両がドライバーが意図した通りに動いてくれ、運転が非常に楽しい。 マツダが新エンジン&車台に込めた願いとはマツダは直6エンジンとそれを縦置きするプラットフォームを新開発した理由について、モーターと組み合わせることで“大排気量”を効率追求の武器にできるからと説明する。と同時に、一般的に4気筒よりも上等とされる6気筒エンジンを開発することで、現在のCX-8を頂点とする商品ラインアップの価格帯を上級移行させ、少ない台数でも大きな利益を出せるような体質に変革することも狙っている。 大排気量エンジンというユニークな手法によって、ビジネスの効率と環境負荷低減の効率の両方を上げようというチャレンジだ。マツダも2030年移行は本格的にBEV(バッテリー電気自動車)への比重を高めた商品ラインアップへ移行することを表明している。それまでの間を6気筒エンジンとPHEVによって生き抜くことができるか、注目だ。 スペック例【 CX-60 e-SKYACTIV D(4WD)欧州仕様プロトタイプ 】 【 CX-60 e-SKYACTIV PHEV(4WD)欧州仕様プロトタイプ 】 |
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