トヨタが得意とするカッコ良すぎないデザイン車名に「クロス」が付くクルマが本当に増えた。末尾に付くパターンだけでも、「トヨタ ヤリスクロス」、「三菱 エクリプスクロス」、「VW Tクロス」。さてもう一車種は? 正解は三菱の軽自動車「ek X」。イーケークロスと読む。途中に含まれるパターンでは、「ミニ クロスオーバー」、「シトロエン C3 エアクロスSUV」と「C5 エアクロスSUV」、「DS DS3 クロスバック」、「DS7 クロスバック」。「スズキ クロスビー」という頭に付くパターンもある。そして最新のクロス仲間が「トヨタ カローラ クロス」だ。他にもあったらごめんなさい。 クロスには掛け合わせるという意味が込められていて、ハッチバックとSUVの掛け合わせであったり、クーペやカブリオレとSUVの掛け合わせだったりすることが多い。大径タイヤを装着したりフェンダーの縁を樹脂パーツで覆ったりして、ワイルドさを演出するのが“あるある”だ。カローラクロスもまさにそのパターン。加えてフロントグリルがボディと異なる色で縁取られるなど、加飾も多め。ダイレクトルーフレールも備わり、アウトドア・アクテビティが似合うスタイリングとなっている。 デザインコンセプトは「アーバン・アクティブ」という。都会的かつ活動的ということか。アーバンという言葉を好んで使うのもありがたがるのもサバーバン(郊外)育ちの人と相場が決まっている。僕自身がまさにそうだからよくわかる。つまりカローラクロスのデザインも流行りの要素を盛り込んでいるが、決して垢抜けていない。トヨタが最も得意とするカッコ良すぎないデザインだ。大衆車がカッコ良すぎると大して売れないことをトヨタは熟知している。 カローラ クロスはカローラスポーツ、セダン、ツーリングよりも大きい。史上最大のカローラだ。全長4490mm、全幅1825mm、全高1620mm。ホイールベースはスポーツ、セダン、ツーリングと共通の2640mm。先にアジア地域で発売された際、その姿が明らかになり「日本でも売られるのか!? 」と話題になったが、登場した日本仕様は巨大なフロントグリルをもつ海外仕様とはやや顔つきが異なり、グリル上部がガーニッシュの上品なデザインとなった。海外ほどラギッド(無骨な)な風貌が求められないだろうという社内の判断でそうなったようだ。 パワートレーンは2種類。HV(ハイブリッド)が他のカローラシリーズやプリウスと同じ1.8LエンジンとTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)IIの組み合わせで、最高出力98ps/5200rpm、最大トルク142Nm/3600rpm、システム最高出力は122psとなっている。WLTC燃費は26.2km/L。ICE(内燃機関車)は他のカローラシリーズと同じ1.8LエンジンとCVTの組み合わせで、同140ps/6200rpm、最大トルク170Nm/3900rpm。同燃費は14.4km/L。HVにのみ4WD(e-Four。同燃費24.2km/L)が設定される。 トヨタ カローラ クロスのカタログページを見る セダン、ツーリングよりもさらにソフトな乗り心地HVはおなじみのTHSの挙動だ。トヨタの新世代の車台であるTNGAと組み合わせられることで音も振動もうまく抑えられていて、一般的なペースを維持する限り、走行中に頻繁にエンジンオン/オフが繰り返されても気にならない。長年経験することで我々ユーザーに"HVとはこういうもの" という認識がしっかりできているというのもあるだろう。どちらかというと常にザーッと聞こえるロードノイズが気になった。車体はスポーツやツーリングよりも大きいが、車両重量はそれらに対し20kg増しの1410kg(試乗したZグレードの場合)に抑えられているので、スポーティではないもののパワー不足でもない。 ICEは今や少数派といってもよい自然吸気エンジン。活発な挙動を求めるなら積極的にアクセルペダルを深く踏み込んでいく必要があるが、踏み込めば実用上十分なパワーを発揮する。ストレスなく回るので、CVTではあるもののちょっとした爽快感を味わえる。HVと比較して最高出力は18ps多く、車両重量は60kg軽い1350kgなので、理論上はICEのほうが速いかもしれない。体感的には似たようなものだった。渋滞でちょこまかと動く時には静かだしレスポンシブなのでHVのほうがありがたい。これまでHVとICEが設定されているモデルの場合、総合的にHVのほうが魅力的と感じることが多かったが、このクルマについてはICEのほうがいいなと思えた。なんとなくとしか言いようがないのだが。 カローラ クロスはスポーツよりずっと、セダン、ツーリングよりもさらにソフトな乗り心地にしつけられている。クルマのキャラクターに合っているように思え、気に入った。他のカローラとの最大の違いはリアサスがダブルウィッシュボーンではなくトーションビームという点だ。スペースを確保しやすく、軽くでき(20~30kgの軽量化となるそう)、コストを抑えられるといった複数の理由でそうしたという。ダブルウィッシュボーンを含む独立懸架のマルチリンクのほうが立派でハンドリングや乗り心地に優れ、車軸懸架のトーションビームは安価だがそれなりというのが一般論として存在するが、やりようによってはトーションビームでも十分な路面追従性を見せ、快適な乗り心地も確保できるというのは、現行のPSA各モデルやVWゴルフなど、よくできた欧州のFWD車を運転すればわかる。 新開発されたカローラ クロスのリアのトーションビームサスもなかなか優秀だ。ブッシュ(衝撃を吸収する各部のゴム)で乗り心地を追求し、ジオメトリー(設計)でハンドリングをカバーしたとのことで、その説明通り十分に快適な乗り心地を味わうことができた。もちろん大きな入力を受けるとバタつくこともあるが、それまで乗員に不快な思いをさせずに収束させるには相応のお代をいただくことになり、価格の魅力を失ってしまうことになる。 トヨタ カローラ クロスのカタログページを見る お世辞でも嫌味でもなく、実にトヨタ車らしいトヨタ車カローラ クロスの車内は広い。カローラとしてはワイドな車幅を活かし前席左右の間隔は広々しているし、高い車高のおかげで目線の高さも確保され、だれでも運転しやすいはずだ。前方視界も良好。後席も膝前、頭上ともに余裕があり、リクライニングもできる。ラゲッジ容量は487L。左右幅は標準的だが、天地で容積を稼ぐタイプだ。後席背もたれを倒すことができるが、倒してできる平面とラゲッジ床面との間には大きな段差が生じる。これは後席乗員の見晴らし確保のために座面を高くし(座面下にハイブリッドシステムがあるのは確かだが、物理的にはもっと座面を下げることもできたという)、一方で容量を確保するためラゲッジ床面をできるだけ下げた結果だという。これで段差やむなしで済ませないところがトヨタで、「ラゲージアクティブボックス」なるオプションを装着すると、倒した後席とフラットな床面をつくることができるという。 全方位的にネガを徹底的に潰し、ディスプレイオーディオを採用するなど、価格アップにつながる過剰な動力性能や快適装備を備えず、199万円~のスターティングプライスを実現。奇をてらわず万人受けするスタイリングを採用し、同社最新レベルの安全デバイスを全車標準装備として、HVには1500Wの非常時給電モードをオプション設定とする。お世辞でも嫌味でもなく、実にトヨタ車らしいトヨタ車であり、カローラを名乗るにふさわしい。九分九厘ヒットするだろう。あとはCarPlayおよびAndroid Autoを無線接続させてくれれば言うことなし。 トヨタ カローラ クロスのカタログページを見る スペック例【 カローラ クロス ハイブリッド Z(FF)】 トヨタ カローラ クロスのカタログページを見る |
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