第一部前編:最大の魅力は程よい高さとスライドドアスズキから「ワゴンRスマイル」という新しい軽自動車が発売されました。この車は「そもそも車に何を求めるか?」によって、紹介方法も評価も変わるべき車であるように、筆者には思えます。 そのため本稿は二部構成とし、前半と後半で「別々の仮想ユーザーグループ」に向けてお話しをしたいと思います。 まず第一部は、「走行性能うんぬんではなく、とにかく便利で経済的であることを重視したい」という人に向けてお話しいたします。濃い口なカーマニアの方は、第一部は読み飛ばしていただけますと幸いです。 さて、ワゴンRスマイルは、現在隆盛をきわめている「軽スーパーハイトワゴン」に対する軽いアンチテーゼとして誕生した、「絶妙な車高」と「スライドドア」を兼ね備えた軽自動車です。 軽スーパーハイトワゴンというのはスズキ「スペーシア」やホンダ「N-BOX」などのことで、1.8mにも達しようかという強烈な背の高さと、両側スライドドアによる利便性の高さで大人気となっています。 それらよりも1段階背が低い「軽ハイトワゴン(スズキ「ワゴンR」や日産「デイズ」など)」の使い勝手も決して悪くはないのですが、全高が1650mmぐらいでしかないということと、後部ドアがスライド式ではなくヒンジ式(ちょうつがいを起点にバタンと普通に開くタイプ)のドアであるという点で、人気の面では遅れを取っています。やはりヒンジドアですと狭い場所での開閉には気を使いますし、乗り降りも、スライドドアの車と比べればちょっと面倒ですので。 そんななか、2016年9月に登場したのがダイハツの「ムーヴ キャンバス」という車でした。 ムーヴ キャンバスは、スーパーハイトワゴンより13cmぐらい背が低いものの、ハイトワゴンよりは少しだけ高い「1655mm」という絶妙な車高に、便利な両側スライドドアを組み合わせた、それまでにないジャンルの軽自動車でした。 そしてムーヴ キャンバスは、その愛らしいデザインの魅力とも相まってヒット作となり、登場から5年が経過した今も順調に売れ続けています。 そして今回ご紹介するワゴンRスマイルは、スズキがムーヴ キャンバスにぶつけてきた――といえる一台です。 全高はムーヴ キャンバスより4cm高いですが、それでもスーパーハイトワゴンであるスズキ スペーシアと比べれば9cm低い1695mm。そこに便利な両側スライドドアを組み合わせ、ムーヴ キャンバス同様の――というか、いかにも女子っぽいムーヴ キャンバスと比べるなら若干「男女兼用」寄りのデザインをまとわせています。 スズキ ワゴンRスマイルハイブリッドのおすすめグレードとユーザーの評価を見てみる 第一部後編:最新の安全装備というアドバンテージ搭載エンジンは最高出力49psのノンターボエンジンですので特にパワフルではありませんが、加速時に小さなモーターがアシストする簡易なハイブリッドシステムも付いていますので、平坦な都市部を大人1~2名乗車ぐらいで走る分には何の問題もありません。 問題ないどころか、ハーテクトという新世代の軽量・高剛性な骨格と、ホイールハウスを中心に構造用接着剤を適用しているなどのおかげで、その走りのニュアンスは「上質」とさえ言えるものです。段差を越える際も不快な突き上げ感や振動はほとんどなく、まるで高級車のように――と言うと大げさですが、まぁそれにちょっとだけ近い感じでショックをいなしてくれるのです。 スズキいわく、ワゴンRスマイルは基本的には1名または2名乗車で「パーソナルに使う」ということを想定しているそうですが、リアシートは前後のスライドが可能で、ワンタッチでほぼフルフラットにもなりますので、3~4名乗車も苦になりませんし、1~2名乗車でイケアなどに長尺物を買いに行ったりするのにも向いています。 この車のキモの部分であるスライドドアは、開口幅600mmで開口高が1165mm、地上高は345mmです。同じスズキの軽スーパーハイトワゴンであるスペーシアのスライドドアと比べると、地上高と開口幅は同じで、開口高が8.5cm低いということになりますので、成人が後部座席に乗り込む際は、たしかに背が高いスペーシアのほうがラクです。 しかしワゴンRスマイルも「ほんの少々体をかがめる程度(※身長175cmの筆者の場合)」という感じで乗り込めますので、大勢に影響はないと考えられます。 先進安全装備のパッケージである「スズキ セーフティ サポート」は全車標準装備で、アダプティブクルーズコントロールや標識認識機能などを含む「セーフティプラス・パッケージ」も、最廉価グレード以外にはオプションとして装着可能。そして12通りのしゃれたカラーバリエーションが用意されつつ、価格は129万6900円~171万6000円と非常にお手頃です。 まぁいちばん安い129万6900円のやつはスライドドアが手動式なのであまりおすすめしませんが、いろいろ揃った中間グレード「ハイブリッド S」のおしゃれな「2トーンルーフパッケージ」でも153万3400円でイケますので、価格は非常にお手頃であるといえます。 なお蛇足でありながらきわめて重要な蛇足として、ワゴンRスマイルは4万4000円から6万500円の追加出費が伴う「2トーンルーフ」はマストであると思ってください。モノトーンと2トーンでは、おしゃれ感が10段階ほど異なってしまうのがワゴンRスマイルという車です。 ライバルであるムーヴ キャンバスも相変わらず魅力的ではありますが、ワゴンRスマイルの設計年次の新しさと、「甘み成分」のようなものを比較的抑えた内外装デザインは、男性にとっても女性にとっても魅力的です。 便利でかわいい、でも決してかわいすぎない実用的な軽自動車を手頃な予算で探している人には、ワゴンRスマイルは絶対的におすすめできる一台です。ぜひお近くの販売店などで、実車をご覧になっていただきたいと思います。 スズキ ワゴンRスマイルハイブリッドのおすすめグレードとユーザーの評価を見てみる 第二部:パッケージングは最高だがパワーが欲しい……というのが「走行性能うんぬんではなく、とにかく便利で経済的であることを重視したい」という人に向けて書いた第一部であり、以降が、ある程度以上の車好きである諸氏に向けて書く第二部である。 第一部で述べた「便利でかわいい、でも決してかわいすぎない実用的な軽自動車を手頃な予算で探している人には、ワゴンRスマイルは絶対的におすすめできる一台」という言葉にいっさいの嘘はない。 だが、それをそのまま「車好き」の諸氏にまで当てはめてしまうと、本件に関係する全員が不幸になるだろう。 ワゴンRスマイルは、甘み成分を抑えたデザインと、実直かつ便利なパッケージングを持ち合わせることにより、例えば筆者のような「車そのものと運転が好き」みたいな人間にも「……コレ、ちょっといいかも。買ってみようかな?」と思わせる車だ。 まぁ人にもよるのだろうが、筆者の場合はスポーティでハイパワーなクーペなどでぶわっと走ることも好むが、それと同時に「実直な四角い車(例えば昔のフォルクスワーゲン ゴルフみたいなやつ)でのんびり旅に出る」みたいな“走り”も好むからである。 だがワゴンRスマイルは、誠に残念ではあるが「旅」にはまったく向いていない。向いているのは、平坦な都市部に住まう人が、買い物や趣味などに楽しく便利に使う――という使い方だけなのだ。 平坦な道を走る分にはノンターボエンジンであっても何ら問題はないワゴンRスマイルだが、山坂道の上りセクションにさしかかると最高出力49psのR06D型エンジンはモーモーとうるさくいななき、CVTはただひたすら回転を上げ、車はあまり前に進まない(いや、もちろんいちおう進むが)……という状況になってしまうのだ。 「これは筆者を含めて体重60kg台の男3名が乗っているからか?」と思い、筆者以外の2名を車外に追い出したうえで同じ箇所を走ってみたが、やはりR06D型エンジンはモーモー言い、車はあまり前に進まなかった。 旅の道のりが「平坦な道と下り坂だけ」というなら問題はないが、そんな旅路はあり得ない。大変残念ではあるのだが、現状のワゴンRスマイルは「都市部スペシャル」であり、旅人や釣り人などには向いていないのだ。 まぁそれはスズキが割り切って決めた方向性なので、外野が文句を付ける筋合いはいっさいない。だが素敵なデザインと素敵なパッケージングを有する車であるだけに、残念ではある。 今後、場合によってはターボエンジンの追加や、ターボではなくても何らかの方法で「山坂道の上りも苦にならないパワー&トルク」を獲得させる可能性も「なくはない」とのことなので、この手の車でのんびりと旅に出たい筆者としては、ターボエンジンまたは別手法の登場を心待ちにしたいと思う。 ただ、現状のノンターボエンジンであっても、スズキの想定どおりの使い方――つまり平坦な都市部で、主に買い物などだけに使うという乗り方をするであれば、濃いめで辛口な自動車ファン各位であっても、ワゴンRスマイルの走りに大きな不満を覚えることはないはずだと、最後に断言はしておきたい。 スズキ ワゴンRスマイルハイブリッドのおすすめグレードとユーザーの評価を見てみる スペック例【 ワゴンRスマイル ハイブリッド X(FF)】 スズキ ワゴンRスマイルハイブリッドのおすすめグレードとユーザーの評価を見てみる |
GMT+9, 2025-4-30 18:28 , Processed in 0.072775 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .