バッテリーチャージモードはキャンプなどに便利2021年12月16日に発売された三菱「アウトランダー PHEV」。立ち上がりは好調で、すでに受注台数が9000台を突破した。昨秋の最終プロトタイプサーキット試乗で、速さとコーナリング性能の高さは確認済み。このほどようやく一般道試乗の機会を得たので、その印象をご報告する。 約1時間与えられた試乗時間。試乗開始時、バッテリー残量は約30%だった。最上級グレードの「P」は満充電からのEV走行可能距離がWLTCモードで83kmのため、ざっくり25km前後のEV走行が可能のはずだ。 バッテリーセーブモード、バッテリーチャージモード、EVプライオリティモードと3つある走行モードのうち、まずはバッテリー残量に余裕がある限りできるだけエンジンを始動しないEVプライオリティモードを選択。これだと運転感覚はEVそのものだ。停止状態からアクセルペダルを踏み込むと、スーッとスムーズに発進し、途中で変速を挟むことなく望む速度に達する。静粛性も高い。エンジン音が発生しないクルマで目立ちがちなロードノイズもよく抑えられている。 数百メートル先の交差点の信号が赤なのを認識して減速を始める。アクセルペダルから足を離すと空走状態に。左パドルを引く度に減速が強まり、最後はフットブレーキを踏んで完全停止。これはイノベーティブペダル オペレーションモードがオフの状態。オンにするとアクセルペダルから足を離すと同時に強い減速Gが立ち上がり、ほどなく停止寸前まで減速できる。ただしこのモードでも最後はフットブレーキを使って完全停止しなければならない。街なかではオンの状態で走行するほうが、ペダルを踏み替える頻度を減らすことができ、運転しやすい。 バッテリー残量が約10%ほどになった段階で、ノーマルモードに切り替える。メーター表示のうえでバッテリー残量がなくなるまでは(実際になくなるわけではなく、わずかになった段階)、このモードでもEV走行が基本となる。高い負荷を掛けた場合にエンジンが加勢することになるが、街なかを交通の流れに沿って走行する程度ではほとんどエンジンのお世話になることはない。 このほかセーブモードは現在のバッテリー残量を維持して走行するモードで、チャージモードは目的地でバッテリーの電力を取り出してキャンプなどのアクティビティに使えるように、着いた段階で十分なバッテリー残量を残すべく、エンジンで発電しながら走行するモードだ。多くの輸入車のPHVにもセーブモードやチャージモードが備わるが、バッテリーの電力を取り出して走行以外に使うことができない車種が多いため、走行以外に電力を使うことができる点はアウトランダーをはじめとする国産PHVの大きな利点だ。 ともあれ、EVプライオリティモードだろうとノーマルモードだろうと、アクセルペダルの踏み方次第で強烈な加速を生み出すこともできるし、ジェントルな振る舞いに徹することもできる。この日、クローズドのオフロードコースでの走行の機会もあった。昨秋のプロトタイプ試乗で2.5Lエンジン+前後モーターが繰り出す強力なパワーによる、2.1トンにおよぶ車両重量をものともしない猛烈な加速力に舌を巻き、長年のWRC参戦で蓄積したノウハウを注ぎ込んだ自慢の車両運動統合制御システム「S-AWC」(スーパーオールホイールコントロール)によるコーナリング性能の高さに感心したが、悪路ではどうか。 >>三菱 アウトランダーPHEVのカタログページを見る >>三菱アウトランダーPHEVの買取相場 RAV4 PHVにはない7人乗りは魅力だが3列目空間はミニマム用意されていたのは、コース幅が狭く曲がりくねったグラベルコース。ドライブモードセレクターをグラベルに合わせて走行開始。スタート直後の直進で力強い発進加速を体験した後、左コーナーに差し掛かり、減速しながらステアリングを切る。この状態では前輪にしっかり荷重がかかっているので、想像通りにしっかりと舵が利く。減速を終え、コースなりにステアリングを切ったまま右足をブレーキペダルからアクセルペダルに踏み替えて加速を始める。荷重は後輪に移動し、舵が効きにくくなるはずだが、S-AWCに含まれる「AYC」(アクティブヨーコントロール)機能が内側の車輪を細かくブレーキ制御(従来型では前輪のみだったが、新型では後輪も)することで旋回性能を上げるため、加速しながらでもグイグイと鼻先が内側を向こうとする。同時に前後モーターの駆動力配分も、直進→旋回→直進という一連の流れのなかで連続的に最適化される。 S-AWCはエンジンで駆動する4WDの時代に開発されたものだが、電動駆動と組み合わせられることで格段に細かい制御が可能となり、より真価を発揮するようになった。飛ばさないから関係ないと考えるのは間違いだ。路面状況を問わずハイペースで走行できる性能は、低いペースで走行する場合には安全マージンとなる。一般道を常識的なペースで走行していても、人の飛び出しなどで緊急回避のための急旋回、急減速の必要に迫られることもある。そういうケースで結果を左右する可能性は十分にあるわけだ。アウトランダーPHEVが速く走らせて楽しいクルマであることは紛れもない事実だが、開発陣の狙いは楽しさ“だけ”ではない。 新型はこのクラスのSUVとしても、上級グレードのPで532万700円に達する価格のクルマとしても、納得できる乗り心地を獲得している。加減速では常にモーター駆動の滑らかさを感じさせ、足まわりもうまくチューニングされていて、路面からの入力が突き上げるように乗員を襲うことはないし、コーナーでのロールの量も速度もちょうどよい。ドライバーは常に重心の低さを感じることができ、旋回中でも安心感が高い。 新型はサイズアップした。全長4710mm、全幅1860mm、全高1745mmと、先代よりも15mm長くなり、60mm幅が広がり、45mm背が高くなった。ホイールベースは35mm伸びて2705mmに。これにより、大容量バッテリー搭載が可能となり、室内が広くなり、7人乗り仕様が設定された。またフロントシートのスライド量に加え、ステアリングのテレスコピック量、チルト量ともに伸びたため、より多くの人が好みのポジションを得られるようになった。 2列目シートはラゲッジ側からレバーで倒すことができる。3列目シートは小さく軽いので折りたたみも簡単。2列目と3列目を倒すと広大でフラットなラゲッジが広がる。3列目使用時は258~284L、3列目収納時は634~646L、2、3列目収納時は1373~1390Lと容量は十分(サブウーファーの有無で容積は変わる)。ただし3列目シートは簡易なタイプで、シートサイズも足元スペースも、おとなが長時間を過ごすには適していない。2列目シートを結構前にスライドさせて初めて3列目用の足元スペースがギリギリ確保できるといったところ。 ただし現在入っている注文の8割が3列目シートありの仕様だという。上級グレードは7人乗りのみ、中間グレードでは5人乗りと7人乗りを選択でき、廉価グレードは5人乗りのみの設定。開発陣によれば、“いざというときのため”と考える顧客が多いのだそうだ。 日産とアライアンスを組んだ三菱は、日産でいうプロパイロット、三菱でいうマイパイロットを得た。ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)とLKA(レーン・キープ・アシスト)を統合した制御によって、先行車との車間距離と車線の中央維持をアシストしてくれる。日産車同様の安心感のある動きで、ロングドライブになればなるほど助かる。ステアリングホイールにあるスイッチ類も共通で、簡単に車速設定、車間設定が可能だ。 新型アウトランダーPHEVの完成度は高く、弱点という弱点が見当たらない。ライバルはクラスも価格帯も同じトヨタ「RAV4 PHV」だ。ともにそこまで必要か? と思えるほどにパワフルで、主にモーター駆動の4WDであることをコーナリング性能の向上にも活かしており、さらにエコカーとしての実力も伯仲している。当然どちらも給電機能も充実している。7人乗りが設定されるのはアウトランダーPHEVのアドバンテージか。いずれにしてもPHVとしての総合性能は、輸入車を含めてもこの2台が一歩抜きん出ている。ここに同じプラットフォームを用い、パワートレーンにe-POWERを擁する日産「エクストレイル」がどう絡んでくるのか楽しみだ。 >>三菱 アウトランダーPHEVのカタログページを見る >>三菱アウトランダーPHEVの買取相場 スペック例【 三菱 アウトランダー PHEV P 】 >>三菱 アウトランダーPHEVのカタログページを見る >>三菱アウトランダーPHEVの買取相場 |
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