ドライビングポジションがどうにも決まらない…が?しなやかに、軽やかに。石畳の上をステップしている自分が目に浮かぶ。訪れたこともないフランスの街並みの中を。208に乗っていると、凝り固まった頭の中がほぐされていくような気分になる。 プジョー「208」は、2019年のフルモデルチェンジを受けて2代目となり、PSAグループのコンパクトカー用のプラットフォーム『CMP』を新たに採用した。日本車でいえば、トヨタ「ヤリス」やホンダ「フィット」などと肩を並べるBセグメントのコンパクトカーだ。また、内燃機関のモデルだけでなく、電気自動車の「e-208」が登場したことも大きなトピックとなっている。 今回試乗したのは、1.2L 3気筒ターボエンジン(100ps/205Nm)を搭載した中間グレードの「208 Allure(アリュール)」。そのデザインに黄色のボディカラーがよく似合っていて、写真で見るよりも“からし色”のような少し落ち着いた色合いだ。 デイライトは、ヘッドライトからキバのように伸びており、まるで小さなライオンが口を開けて威嚇しているよう。個人的には可愛いと思うのだが、先代のような柔らかいデザインが好きだった方は、少々面食らうかもしれない。 ドアを開けて運転席に乗り込むと、シートを囲むように計器類やボタンが配置されていて、まさに“コックピット”と呼ぶのにふさわしいレイアウトになっている。個人的に好きなのは、二重になっていて立体感のあるメーター。プジョーでは『3D i-Cockpit』と呼んでいて、おそらくガジェット好きな人は、このサイバーなメーターはひと目で気に入ると思う。 しかし、運転席に座り、ドライビングポジションを取ろうとすると、なかなか自分の思った通りのポジションにならない。何度もシートをずらしたり、ステアリング位置を変えたりしていると、編集のKさんが「それ、僕もなかなか合いませんでした」と言う。どうやらブレーキの位置が思ったより手前にあるので、足が縮こまってしまうらしい。ちょこちょこポジションを微調整しながら、とりあえずクルマを発進させた。 208のアクセルをポンと踏んだ瞬間から、獲物に飛びかかるかのように、勢いよく加速してスピードがぐんぐんと伸びていく。PSAグループの3気筒エンジンは、インターナショナルエンジンオブザイヤーの1.0~1.4L部門で4年連続受賞するなど、世界的にも認められているエンジンだということも頷ける。3気筒エンジンは音がうるさいイメージがあったが、208は防音対策がしっかりされているようで、エンジン音も気にならず、ロードノイズやその他の車外音も静かだった。 サイズ感が十分ならCセグ検討中の人にもアリかも208は、スペックを見れば紛れもないコンパクトカーなのに、日本車の同セグメントのクルマと比べると、骨格がもっとギュッと凝縮されて“骨密度”が増しているかのような、ワンランク上の剛性の高さを感じる。 ステアリングを切れば、ごく自然にクルマが右へ左へと追従してくるので、いつも通りの道を運転しているだけでも楽しい。乗り心地は、昔ながらのフランス車のようなふわふわした乗り味というよりは、もう少しコシが強くて、しっかりとした足回りになっている印象だ。ただ、不快な硬さはなく、路面の凹凸を走る時も、スキーのモーグルのように上手く衝撃をいなしてくれる。このエンジンとボディとサスペンションの三位一体が気持ちよく、ずっと走らせていたくなる。 気になるのは価格。コンパクトカーとはいえ、輸入車ゆえ同セグメントの日本車と比べると値段は高め。ヤリスとフィットのハイブリッドの最上級グレードが約230万円で、208 Allureは約260万円。「それなら日本車を買う」という人もいるかもしれないが、日本車のBセグメントではなく、Cセグメントを検討している人が208を選択肢に入れるのはアリだと思う。 208は、日本車と比べるとワンランク上の質感を持っているので、Cセグメントと比較しても、ネガティブな部分はボディサイズくらい。おそらくCセグメントを検討している人の中には、ファミリーユースではなく、基本的に自分で使うクルマとして考えている人も多いはず。もしサイズ感は208でも十分だと感じるなら、試乗だけでもおすすめしたい。 208を運転していて、少し寒くなってふとエアコンをつけた(※編集部注:取材日は気温10℃前後でした)。設定温度を24℃にする。なかなかあたたまらない。どうやら日本車の設定温度の感覚と違うようだ。エアコンのボタンが分からず、指先がうろうろ。エアコン用のパネルが無い。やっと見つけたタッチパネルのボタンで設定温度をマックスに。ようやくあたたまってきたことに苦笑いしながら、ハンドルを握り直す。 相変わらずブレーキペダルが変な位置にあるけれど、もう気にならなくなっていた。アクセルをぐいと踏み込んで、208にパワーを送り込む。弾むように208は飛び出していく。トトッ、トトッ、と、動物が4つの足を滑らかに動かして駆けているようなリズムが体に伝わってくる。小さくて軽いステアリングを回して、様々な道をすいすいと走っていくと、なんだか難しく考えていたことも、フッと吹かれた綿毛のように飛んでいくような気持ちになった。 208の欠点を探せば色々とあるのかもしれないが、ペットのように“その子らしさ”がある方が、愛着が沸くのがよく分かる。これだけクルマを返却するのが惜しくなったクルマは久しぶりだった。 ---------- 【 プジョー 208のその他の情報 】 スペック【 プジョー 208 アリュール 】 |
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