車台をゴルフと共有し1.0Lはパワートレーンも同じかつてこんなに間を開けずにアウディ「A3」とフォルクスワーゲン「ゴルフ」が導入されたことがあっただろうか。A3は5月に発表されていたが、本格的なデリバリーがこの時期になって先日メディア向け試乗会が開かれた。 一方ゴルフは6月15日の発表を前に報道解禁日付き試乗会が開かれた。その結果、メディアに試乗記が掲載されるのがほぼ同時期になった。互いにコロナ禍や半導体不足などにより本来インポーターが予定していたタイミングではないはずだが、期せずしてほぼ同時発売となり、売る側、迷う側(買う側)ともに盛り上がった。自動車メディアもいろいろ企画しやすいし。 新型A3は第4世代となる。歴代ゴルフと車台を共有し、パワートレインも一部それぞれにしかないものもあったが、多くを共有してきた。今作も同様。MQBプラットフォームを用い、スポーツバック(5ドアハッチバック)と4ドアセダンがある。 エンジンは1.0L直3ターボ(30TFSI)、2.0L直4ターボ(40TFSI)、ハイチューンの2.0L直4ターボ(S3)の3種類。全車7速Sトロニック(デュアルクラッチ・トランスミッション)との組み合わせ。30TFSIはFWD、40TFSIとS3はクワトロ、つまり4WDとなる。燃費改善と加速アシストを目的に、全車MHEV(マイルドハイブリッド)化された。ベルト駆動式のスタータージェネレーターと48Vリチウムイオンバッテリーが組み込まれる。 最初にゴルフのベーシックグレード「Active(アクティブ)」と同じパワートレーンを採用する30TFSIのセダンを試す。セダンはオワコンか否かといった論争自体が少し前まであったが、今ではその論争自体がオワコン化しつつある。A3も先代の実績も新型の受注でもスポーツバックの割合が圧倒的だというが、それでもラインアップするということはやめるには惜しい程度には売れる見込みがあるのだろう。 国産メーカーは輸入がない分、生産調整、在庫管理が輸入車よりもイージーなはずなのに次々セダンをやめるということは、つまりよっぽど売れないということなのかもしれない。やめると残念がるが、あるうちは買わないというのはクルマに限らない消費者あるあるだ。 高いボディ剛性から伝わってくるいいモノ感話を戻そう。全長4.5m程度(セダン:4495mm)だし、エンジン横置きなので、A4、A6、A8のような伸びやかさは望むべくもないが、それでもA3セダンのスタイリングはなかなか魅力的だ。セダンに求められるフォーマルで落ち着いた雰囲気がちゃんとある。 ゴルフで確認済みだが、1.0L直3ターボ、7速Sトロニック、MHEVのパッケージは、上品な挙動に終始し、力強さも十分といえば十分で、気に入った。まず発進時にギクシャクすることがあったSトロニックの弱点がモーターによる加速アシストによって解消されている。アイドリングストップからの再始動時のエンジンの振動もほぼ感じられない。 加速もOK。先日ゴルフの原稿に「(アクセルを踏み込むと)ブーンという3気筒らしい音が聞こえるが、音量と振動はよく抑え込まれていて、安っぽさ、不快さはない。肝心のパワーは、速いわけではないが、かったるいほどでもない」と書いたが、そっくりこのクルマにも当てはまる。 さすがに箱根の登り勾配のきつい区間ではグイグイ加速するというわけにはいかないが、平坦路では十分だ。過給器付きとはいえ排気量が小さいので最大トルクは200Nmに過ぎないが、加速、特に発進加速の力強さは230~250Nmあたりに思える。モーター万歳。 前後して30TFSIスポーツバックにも乗ったが、ワインディングロードを活発に走らせても、車両重量がほとんど変わらないこともあって、ボディ形状による挙動の違いは感じられなかった。ゴルフでも感じたことだが、セダンにせよハッチバックにせよ、ボディ剛性の高さを乗員に常に感じさせてくれ、いいモノ感に包まれる。ちょっと贅沢してよかったなと思える。逆に試乗してここに恩恵を感じないようなら同クラスのもっと安いクルマで十分かもしれない。 従来型同様、リアサスが上級版はマルチリンク、廉価版(1.0L)はトーションビームだが、トーションビームがダメというわけではなかった。自分自身のゴルフバッグを入れてみると、ハッチバックだと入らなかったが、セダンなら楽に入った。 A3とゴルフのどちらを買うべきか?この日はもう1台、S3スポーツバックにも試乗した。最高出力310ps、最大トルク400Nmのハイパワーを誇る。近い将来登場するであろうゴルフGTIにも同じエンジンが搭載されるはずだが、GTIはFWDだろうから、このエンジンと4WDのパッケージはS3ならではということになる。S3セダンを選べるのも特徴だ。 S3はA3とだいたい同じデザインだが、ボンネット先端とフロントグリルの間にスリットが入り、フロントバンパー両脇のエアインテークが大型化し、リアに左右4本出しのテールパイプが付くなど、ハイパワーモデルの古典的な演出が随所に施されている。またサポート性の高い専用形状のシートが付く。 アップダウンが激しく、かなり曲がりくねった芦ノ湖スカイラインで、加速、減速、旋回をひたすら繰り返す。こっちは十分というレベルを大幅に超え、かなりパワフルでスポーティーだ。低回転からトルキーなエンジン、変速が素早くトルクが抜けないトランスミッション、頼もしいブレーキを全面的に信頼してスポーツドライビングを楽しんだ。路面状況を常時センシングしてダンピングを最適化してくれる「ダンピングコントロールサスペンション」は付けておきたいオプションだ。もちろんドライブセレクトでダイナミックにもコンフォートにも振ることができる。 A3の価格は一番安い30TFSIが310万円。ゴルフはeTSIアクティブベーシックの291.6万円がボトム。装備が充実した売れ筋の30TFSIアドバンストは346万円、ゴルフeTSIアクティブは312.5万円となる。エンジンが同じこの辺りのグレード同士、両車販売合戦を繰り広げるのだろう。Sモデルではない2.0Lモデルの40TFSIシリーズは秋に導入される予定。A3はスポーツバック、セダン、Sモデルと一気にラインアップを発表したのに対し、ゴルフはこの後GTIとバリアントが登場する。 今後しばしば「A3とゴルフのどちらを買うべきですか?」という質問をされることになるのだろうが、ここまで内容が似ていると選べない。価格が高い分、A3のほうがインテリアの質感が若干高いかもしれないが、ゴルフもその辺のCセグハッチよりはよっぽど上質だ。 逃げるつもりはなく、どちらを選んでも失敗はない。値引きやサービスといった条件を決め手に選んでもよいのではないだろうか。どちらにもディーゼルがないのは残念だ。 【 アウディ A3スポーツバックのカタログページ 】 【 アウディ A3セダンのカタログページ 】 スペック例【 アウディ A3 セダン 30 TFSI 】 【 アウディ S3 スポーツバック 】 |
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