初代ミライは5年で1万台。新型はなんとしても売る必要があったまさかこういう手で来るとはねぇ。昨年末、鳴り物入りで登場したトヨタの新型燃料電池車、2代目「ミライ」ですよ。かつては「走るスペースシャトル」とも言われ、走ってる時には水しか出さない究極のエコカー。 ただし、水素と酸素を反応させる燃料電池スタックは素材的にも技術的にも難易度が高いのと、水素タンクもデカく特殊技術がいるわで原価バカ高。かつて1台1億円以上と言われ、それをなんとか克服して700万円台で発売されたのが2014年発売の初代ミライ。 ただし、燃料電池車にはまだ難点があって基本臓物がデカい。前述スタック&専用水素タンクのほか、骨格は電気自動車なので高出力モーターやパワーコントロールユニット、一部バッファ用のリチウムイオン電池まで必要です。 初代はそれをお手軽なFFプラットフォームに組み込んだので、あのような船の如き個性派フォルムになりました。コスト、スペースユーティリティ、スタイル制約など、なかなか消えないハンディキャップを背負った究極のエコカー、それがミライの本質なのです。 ついでに水素ステーションは未だ全国100カ所ちょいと少ない。初代の販売台数にしろ、頑張ったものの約5年で世界累計約1万台で国内約3400台。今回はなんとしても売らねば! と考えに考え抜いて作られたわけです。 新型は発想の逆転でプレミアム路線に。弱点は後席&荷室スペース果たして新戦略とはミライの超プレミアムセダン化であり、スタイリッシュな大型4ドアクーペ化作戦。収める臓物サイズは技術進化で小型化したとはいえまだまだ大きい。よって骨格にレクサスLSと同じFRのGL-Aプラットフォームを使い、徹底的にプレミアムかつカッコ良くする。ミライでしか作れない高級車にしてハンディキャップをなくす。結果、価格的にもサイズ的にもレクサスの域に突入しても構わないという判断です。 実際、新型は見るなり、ライバルはレクサスセダンどころかメルセデスの「CLS」やジャガーですか? と言わんばかりの優雅な伸びやかさ。全長ほぼ5mで、全幅も1.9m弱。国内はもちろん海外の高級4ドアセダン&4ドアクーペまで睨んだ佇まい。日本では「ミライ」というマジメなイメージから少し離れますが、全く別の高級車になったと考えた方がよいでしょう。 内装も本革シートに革風マテリアル当たり前で古くさいウッドパネルこそ使いませんが高級素材の嵐。メーターは8インチデジタルでセンターディスプレイも12.3インチのイマドキっぷり。同時にそれでいてディスプレイ下にはオーディオやエアコン操作用のメカスイッチ、運転席右にも分かり易いトラクションコントロールオフスイッチなどがあり、一見テスラEVの如きハイテクカーでありながら、年配が乗っても違和感がないよう「オッサン親和性」を高めています。もしやクラウンからの買い換えも狙ってるのかも? かたや乗るとイマドキ珍しいくらいのスポーティさ。ドライビングポジションは古典的FRのそれでひざ下はロングノーズにすっぽり収まり、メーターパネル類は驚くほど手元。開放感は正直ありませんが、独特のクルマを着るような感覚が得られます。 リアシートも今回はショーファードリブン用グレードまで用意して居住性を高めてますが、正直広々とは言い難い。身長176cmの小沢が座ってヒザ前スペースはそれなりで頭上も狭め。特に後席の中央座席は、今回から設けた3本目の水素燃料用のタンクを床下に配しているためかなり座面高め。ぶっちゃけ子供用です。 ラゲッジも同様にゴルフバッグが3本入りますが321Lと広くはなく、新型ミライの苦悩が見て取れます。今回満を持して高級セダンとして生まれ変わりましたが、スペース効率では依然としてガソリン乗用車を超えられないなど、ギリギリのせめぎ合いがリアシートの居住性とトランクルームの使い勝手に伺えます。 走りはレクサス超え。意外にクラウンオーナーにウケるかも!?その分は走りはメチャクチャ頑張ってます。社内で“匠”と呼ばれる走行実験部の担当者は「クラウン、レクサスを超える理想のトヨタFRの走りが実現できた」と言うほどで、スペースでかなわない分、走りの質をガソリン車以上に仕立ててあります。 最大のポイントは前述3本目の水素タンクを配したことで得られたボディ中央の大口径トンネル構造。結果、ガソリン車以上のフロア剛性が得られて、低重心も両立。同時にレクサスセダンでもなし得てないでも50対50の前後重量配分も実現しました。 その結果、乗り心地は、エアサスを使ったレクサスよりいいんじゃない? というレベル。同時にコーナリング時の滑らかな舵の効きと限界領域での挙動はクラウン&レクサス超え。ヘタなピュアスポーツを超えるフィーリングの良さです。 普通にタウンスピードで走ってる限りは、素直にクルマが動くなぁと感じる程度ですが、雨の日に高速で飛ばすとその安心感、ステアリングフィールの良さに驚きます。 かたや動力性能ですが、燃料電池に圧縮空気を送り込むコンプレッサ作動音を初代ほどは感じないのと、182ps&300Nmの駆動モーターによるパワフル感はなかなか。欧州の高級ピュアEVには負けますが、出足の良さと滑らかさはさすがです。 さて結論、車両価格700~800万円台、補助金の百数十万円を引くと600万円台から買える新型ですが、メルセデスやBMWのミドルセダン、あるいはその4ドアクーペから乗り換えるかは少々疑問。そのパターンもあるでしょうが、セクシーさで超えたとは言い難い。 ただし、国産高級セダンのレクサスやクラウンユーザーが振り向く可能性はありでしょう。走るのが好きで、クルマに500万円以上払う余裕があり、なおかつ「クルマのことを分かっている」と自負するセダン好きは意外にミライに食いつくのでは? もちろん水素ステーションの少なさはハンディキャップで、自宅のそばにたまたまある人しか現実的には買えないと思いますが、大都会に住むクルマ好きリッチマンは結構います。 意外に今後なくなる? ともウワサされる年配のクルマ好きクラウンオーナーに響くような気がします。もちろんその拡大したボディサイズが許せる人のみですが。 ぶっちゃけアルファードを好むイマドキのオーナーには響かないと思いますが、我こそは! と思う違いのわかるクルマ好き&セダン好きにオススメ。小沢はそのように感じた次第であります。 スペック例【 ミライ Z 】 |
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