N-BOXの強さはハンパじゃないぶっちゃけ言うと、最初は侮っていた。それは新型日産「ルークス」。今や軽自動車どころか、乗用車全体で一番売れるジャンルである両側スライドドア付き軽スーパーハイトワゴンの最後発モデルである。 軽スーパーハイトワゴンの元祖は2003年デビューの初代ダイハツ「タント」。しばらくはクラストップの座を欲しいままにしていたが、2011年に初代ホンダ「N-BOX」が登場するとその様相はガラリと変わる。 2013年に軽自動車販売ランキングでトップを獲得し、2017年には乗用車全体でもトップを奪取。最近でも19年までに3年連続でトヨタ「プリウス」や日産「ノート e-POWER」などを抜いて日本で一番売れているクルマなのだ。 N-BOXの強さは尋常じゃない。小沢自身、2年前にマイカーとして購入しているからよくわかる。軽枠内の小さいボディからは想像できないシートアレンジとラゲッジの広さを持っている。 さらにN-BOXにはホンダ独自の軽のレベルを越えた質感と、「ホンダブランド」自体の強さがあった。だからこそ軽自動車界に長らく君臨するタントやスズキ「スペーシア」でもN-BOXをなかなか越えられないのだ。 去年、タントが4代目となり魅力がアップしたが、N-BOXを越えたのは19年11月のみ。ダイハツの開発役員自体「アチラさん(N-BOX)とは微妙に違うビジネスをしてますから」と売れ方の違いを認めるほど。 それだけに、軽スーパーハイトワゴンにおいてN-BOXの存在感は非常に大きい。ゆえにゴーン事件をはじめ、冴えない話が続く日産&三菱陣営からN-BOXに太刀打ちできるようなモデルが出るとは思えなかったのだ。 細かいアイデアでユーティリティを引き上げただが開発した斎藤雄之エンジニアの「後席の広さと走りのキモチよさでは勝ってます」という自信に満ちた一言と、実際に乗ってみたことで印象が変わった。これは結構…ヤルかも? と。 見た目はおとなしめの正常進化だ。2代目デイズ ルークスがノーズに色気を出したスタイリングだったのに対し、四角さを素直に押し出した新型。フロントのVモーショングリルは前より強くなっているが、兄弟車の三菱「eK クロス スペース」ほどアクは強くない。 同時にスペースユーティリティの物差しであるホイールベースも旧型比で65mm広がったが、現行N-BOXの2520mmより25mm短い。しかし、身長176cmの小沢がフロントシートをドライビングポジションに調整し、リアシートスライドを一番下げてリアに座ってみるとアラ不思議! 広さ感はN-BOXと同等なのだ。斎藤エンジニアによれば「ヒザ前スペースはN-BOXに数ミリ勝ってます」という。 さらにビックリはラゲッジで、リアシートスライドを一番前にすると、容量はN-BOXより確実に広い。奥行きは60mmほど勝っていて、48Lスーツケースが4つとBBQグッズにベビーカーも載る。 N-BOXはせいぜいスーツケース3つほど。床下収納もN-BOXが5Lなのに対し、20Lもある。ええ、なんで? 根本的にはノーズが短くてホイールベースが一番長いN-BOXが室内は広いはずではないか! 秘密は3つある。1つはフロントシートの取り付け位置で、前方&上方に設定し室内長を稼ぎつつ後席の足元を広くしたのと、リアシートのスライド量をクラス最長の320mmにした。お陰で一番後ろに下げるとN-BOXに微妙に勝ち、一番前にするとダントツで勝つ! 言わば狭いワンルームマンションにセミロフトを付けてスペース効率を上げるような手法を採る。実際、フロントの着座位置はN-BOXはもちろん他のどのライバルよりも高い。 さらにセンターピラーを通常より前に設定し、スライドドアの開口部をクラストップに。結果、腰を折り曲げてリアのチャイルドシートに座らせていた子供を、腰を伸ばしたまま車内に運べるという。 リアシートのスライド量が大きくなったことで、今まで以上にフロントシートとリアシートを接近させることが可能となり、N-BOXであれば助手席スーパースライドシート、タントであれば運転席ロングスライドシート機能と同様な、前後シート間の密着度を得たという。つまり、運転席に座ったお母さんがリアシートの子どものお世話をする時のやりやすさで、そのために助手席のシートバックを運転席から簡単に倒すためのレバーが設置されている。 細かいことを言うと、リアシートスライドのしやすさもクラストップで、ラゲッジ側からリアシートの肩にあるレバーを使ってスライド&リクライニングが可能。リアゲートの開閉の軽さもトップで、これはN-BOXを確実に越える使いやすさだ。 基本性能の向上だけでなく、この手の細かいアイデアが新型ルークスのユーティリティを、一部王者N-BOXを凌駕するレベルにまで引き上げているのである。 なんだかんだいっても日産のブランド力は強い走りの質感も明らかにN-BOXとは方向性が異なる。プラットフォームやパワートレインは、現行「デイズ」がベース。この世代から開発は三菱主導から日産主導に変わり、質感が軽レベルから登録車レベルに引き上げられている。 室内にはソフトパッドなど高級素材は使われてないとはいえ、ツヤ感が良いインパネ樹脂など良く出来ている。9インチのナビやシフト回りのガラスパネルとピアノブラックパネルが質感を上げているし、従来日産の軽にはなかった薄型ティッシュボックスが入るグローブボックスも備わり気も利いている。 そしてなにより走りの良さだ。パワートレインはノンターボで52ps、ターボで規制枠ギリギリの64ps。ノンターボは現行N-BOXの58psに負ける。このあたりは相変わらずN-BOXの底ヂカラを感じるが、ルークスは2.7psのモーターを使った自慢のマイルドハイブリッドでサポート。加速の良さは遜色ない。 一方、おもしろいのは乗り心地で、N-BOXほどの柔らかさ、しなやかさはない。これは明らかにハンドリング重視で、あえて足を固めに仕上げてコーナリング時のロールを減らしている。乗り心地のN-BOX、走りの楽しさのルークスと言った住み分けだ。かたや後席の静粛性はピカイチで、エンジンルーム回りやピラーの根元に吸音材を重点配置。嫌なノイズをカットしている。 最後に、ルークスの売りはなんといっても先進安全の「プロパイロット」だ。王者N-BOX自慢の「ホンダセンシング」による前車追従オートクルーズが完全停止できないのに対し、ルークスのプロパイロットは完全停止できるだけでなく、高速のレーンキープ性能がイイ。ロングドライブがラクチンなのと、今回の世代から高性能カメラにミリ波レーダーが付いて、走行時に2台先のクルマの動きまで捕捉できるようになった。 ついでに片側24個のハイテクLEDによるアダプティブLEDヘッドライトも凄い。これで前走車や対向車がいてもかなりの領域でハイビーム照射が出来る。このあたりは世代分、N-BOXに勝ってるし、部分的には去年登場のタントにも勝っている。 そして侮れないのが日産のブランド力だ。近年の事件で落ちたとはいえ、ノート e-POWERのような凄い商品が出るとすぐに持ち直す日産の販売力。根本的にスズキやダイハツはない高級車イメージとリッチなファンを持っており、ヘタするとN-BOXに次ぐ人気を獲得する可能性はあるのだ。値段高めとはいえ。 ってなわけでますます戦国時代の様相を呈してきた軽スーパーハイト、今後の動向から目が離せない。 スペック【 日産 ルークス ハイウェイスターX プロパイロットエディション 】 |
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