第一印象はヒットの要素だけを集めた“エレガント”のかたまり新型「トヨタ ハリアー」プロトタイプの試乗会が千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイで開かれ、試乗の機会を得た。一応正式発表前の、まだ登録していない車両(ナンバープレートが付いていない車両。だから試乗会も公道じゃなくクローズドコースで実施)のために“プロトタイプ”と付いているが、まもなく市販のこのタイミングでメディアに体験させるプロトタイプは市販モデルと同じだ。先に公開されたスタイリングと概要を見た段階で、ヒットしやすい必要な要素が集められ、ヒットしにくい要素が丁寧に取り除かれた“ザ・売れ線”だと感じていたが、実際に見て乗って、その印象をますます強めた。 新型ハリアーの実物は、画像で見るよりもギュッと凝縮された感じが強く、全長4740mm、全幅1855mm、全高1660mmという実寸ほど大きく見えない。車両の前後が絞り込まれ、一方でフェンダーはやや張り出し、迫力があるものの上品でもある。初代のキャッチコピー「Wild but Formal」を思い出す。DRL(デイタイム・ランニング・ランプ。常時点灯しているランプのこと)含むヘッドランプユニットやリアコンビランプなどにはLEDが多用され、シンプルだが未来的。シルエットは流行の、というかかつてのハリアーがその流行に大きく貢献したクーペSUVそのもの。なんというか、20年前に想像した未来のハリアーという感じだ。ひと言で言えばエレガント。←じゃそう言え。 2ドアクーペのような囲まれ感をもった室内室内からは明確なコンセプトが感じられる。広さを目指していないのだ。もちろんこの外寸のSUVだから狭いわけではなく、大人4~5人が無理なく過ごせるスペースは確保されているのだが、それに必要な空間を確保し、あとは囲まれ感の演出に充てている。象徴的なのは、丸太にレザーパッドを貼ってカップホルダーを掘ってシフトレバーを生やしたようなぶっといセンターコンソールだ。センターコンソールの位置が高いため、相対的に見た目の着座位置が低くなり、それこそ囲まれ感の強い2ドアクーペに乗り込んだような感覚に包まれる。この丸太、いやセンターコンソールをすっきり見せるためか、日本車にしてはスイッチの位置がまとまっていて、全体にごちゃごちゃしていないのが好印象。エンジニアの説明によれば、丸太ではなく馬の鞍をイメージしたのだそうだ。 ただその囲まれ感が狭い印象につながってはよくないと考えたのか、トヨタ車として初めて障子のように光を通すようにもサングラスのように光を遮るようにもできる特殊フィルムを用いた調光パノラマルーフを設定した。 ハイブリッドかガソリンか、FWDか4WDか採用されるパワートレーンのラインアップは、車台を共有するRAV4に準じる。2.5L直4エンジンにTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)IIを組み合わせたハイブリッド仕様と、トヨタの最新世代のエンジンであるダイナミックフォース2L直4エンジンとCVTを組み合わせたガソリン仕様があり、そのどちらでもFWDと4WDを選ぶことができる。この日、ハイブリッド4WD(リアはモーター駆動の電子式4WD「E-Four」)、ハイブリッドFWD、ガソリン4WDの3種類を試乗した。 ハイブリッドシステムは、RAV4への採用以来、後輪を駆動するモーター容量が拡大されていて、いわゆる昔ながらのオンデマンド4WDのように前輪が滑ってどうしようもない場合に限って後輪が駆動するのではなく、さまざまなパラメーターによってそのほうがよいとなれば積極的に後輪が駆動するため、トラクション能力に優れ、純粋に走らせて楽しい。システム全体の最高出力は222psに達する。 そのリア駆動がないとどう変わるのだろう?と興味津々でFWDのハイブリッドに乗り換えると、ほぼ同じように気持ちよく走らせることができた(笑)。さっき感じた好印象はリアモーター駆動によるものではなく、ハイブリッドシステムに含まれる動力分割機構の制御のきめ細かさや足まわりを含む車体性能の高さによるものだったようだ。RAV4で雪上を試乗した経験からいうと、低μ路ではE-Fourがわかりやすく真価を発揮するはずだ。 RAV4で感じたのと同様に、ハリアーにおいても予算に余裕があってもガソリン仕様を選ぶという人がいても十分理解できる。“それはそれで的な”良さがある。実際に速さを計測すればハイブリッドのほうがほとんどの局面で速いはずだが、体感的な力強さはさほど変わらない。このエンジンが2L自然吸気エンジンとしては異例の高効率エンジンだということもあるのだろうが、CVTの出来がよいからだと思う。発進専用のギアが機能して鋭くダッシュできるほか、一定以上の負荷をかけた加速時に無段階に変速するのではなく、普通のATのように一段ずつ変速しているかような制御が入っていて、自然な加速フィーリングを得られる。効率だけを考えればこの制御は邪魔なはずだが、フィーリングを重視している。こうしたことの積み上げが、なんか昔のトヨタと違う……と感じる人を増やしているのだと思う。 RAV4よりもマイルドな乗り心地や操縦フィールパワートレーンを問わずハリアー全体に共通するのは、乗り心地がマイルドそのものだということ。サーキットなので路面に不整部分はないのだが、ピットロードにあるわずかな段差や、あえて乗り入れたコース端の縁石をさまざまなスピードで通過してみても、身体に感じるのはあくまでマイルドな入力で、いわゆる突き上げがない。同じ車体と同じサスペンションパーツを使うRAV4も決して不快ではないし、ボディ剛性が高く一般的には乗り心地のよいクルマだが、入力は入力としてもっとはっきり身体に感じた。ハリアーの場合は同じ段差を超えても、ぶ厚い座布団で弱められたかのような振動しか尻に伝わってこない。ステアリングホイールおよびペダル類の操作フィーリングにも、乗り心地と統一されたマイルドな印象を得た。 ハリアーは脱SUVを果たした。試乗後の感想を一言で表現するならこうなる。SUVに乗っているという感覚が薄い。姿かたちはSUVだが、乗る人がどう乗りたいかによってクーペにもサルーンにもSUVにも思えてくるのではないか。それが“都市型SUV”というコンセプトで歴代をヒットさせてきたトヨタが、ハリアーで提供したかった世界なのだろう。新型ではそれはとてもうまくいっていると思う。トヨタが、同時に同じコンポーネンツを使ってWild but FormalなハリアーとWild and CasualなRAV4をつくり分け、多岐にわたるSUV需要をごっそりもっていこうとしている。 スペック例【 ハイブリッド Z レザーパッケージ 4WD 】 |
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