ハリアー好きの心を満たす正常進化都市部でSUVを使う。スーツ姿でSUVに乗る。泥臭さが漂うSUVを都市部に持ち込み、オシャレに普段乗りもこなす“シティ派SUV”というジャンルとマーケットを生み出したモデル、トヨタ「ハリアー」が4代目へとフルモデルチェンジした。 シティ派SUVは今やセダンやワゴンはもちろん、ミニバン以上に市民権を獲得し、その勢いはとどまることなく各メーカーから続々とニューモデルが発表されている。パイオニアモデルであるハリアーがどのような進化を遂げたのか興味深いところ。 結論から言えば、シャーシが一新されボディ剛性が大幅に高まり運動性能やハンドリングが向上。その分だけ少し乗り心地のコツコツ感はあるが、内外装のオシャレ感の洗練とともにハリアー好きの心を満たす正常進化をしていた。 やや先代3代目ハリアーの面影を引きずりすぎという印象もあるが、3代目のデザイン性が今でも現役トップランナーでいけるほど高いとも言える。ただ、リアまわりがアグレッシブに変わった分、フロントはもっと変えてよかったかもしれない。 しかし歴代ハリアーは当然として、他のSUVに乗られている人でも“このスタイルが気になる”と興味がわいてきたなら、注目をしても損はない完成度の高いモデルだ。すでに人気と受注も集めているので、いざ欲しいとなったときの納期が心配になるが、いずれにせよ列に並ばなければ手には入らない。 今回のハリアーはスタイルで人を惹き付け、乗り味で満足させる。この抜け目ない戦略からなのか、ハイブリッドモデルにもガソリンモデルにもFFと4WDが用意されている。そしてトヨタの次世代プラットフォーム「TNGA」によりボディ剛性が高められたことで、それぞれ乗り味がはっきり異なっている。 そして、乗り味の違いが個別の好みを満たすかのように仕上げられているようなのだ。新型ハリアーに興味を持ったら、自分がどのような使用環境でハリアーを使うのか、さらにはどのような乗り味を好みとするのかを明確にしておく必要がある。 ハイブリッドは高級セダンから乗り換えても不満なしハリアーを所有してどのような環境で使うのか? 市街地中心、高速道路中心、山道中心…。最も使用頻度の高いもの、重視するモノで選択肢は変わる。 市街地中心であれば、価格は高めになるがハイブリッドがいいだろう。電動モーターによる停止状態からの動き出しの良さ、滑らかさは大きな魅力だ。バッテリーを積んでいることでクルマ自体はガソリン車と比べて約90kg重くなるが、モーターによるトルクはその重さを感じさせずにクルマをスタートさせ、エンジンがコラボレーションして本格的に加速していくあたりは見事。車重からくる重厚な乗り心地も街中の走行に向いている。 また電動ドライブによる静かさは、防音材や吸音材、さらには遮音ガラスの採用など、高級車として徹底的に音対策をしたのと相まって明確に活かされている。侵入した音が広い車内に響く面はあるが、高級セダンなどから乗り換えても大きな不満は出ないはずだ。 乗り心地にとことんこだわるなら4WDをオススメする。SUVなど大型車両はFFだと前が重く後ろが軽くなりがちで、後ろが路面の凸凹で跳ねるような動きになるが、4WDは駆動系の重さが後ろに加わることで、その動きが緩和される。ハイブリッドにすれば重量級バッテリーがリアシートの下に積まれ、さらに後ろが重くなり、これも乗り心地に寄与する。 ついでに言うと、快適性や静粛性にこだわるなら19インチを履くZグレードよりも、18インチのGグレードがおすすめだ。ホイールサイズが大きくなるとクルマの車両重量を支えるタイヤのエアボリュームが減り、しっかり感が高まってハンドリングは良くなるが、その分コツコツとした動きとロードノイズは大きくなってしまう。個人的には、見た目のカッコよさから19インチを選びたいが、悩ましい選択となるだろう。 高速道路中心ならどの組み合わせでもアリでは高速道路中心だとどうだろう。その場合は唯一の自由選択となる。19インチタイヤであればハンドル操作への反応が良く、結果レーンチェンジした際のグラつきが少なく走りやすい。さらにはハイブリッドはいくらか静かに走れるなどの強みはあれど、その差によりクルマ選択が変わるというほどのものでもない。 もし追い越し車線をガンガンに走りたい、というのであれば、出力とトルクにゆとりがあるハイブリッドとなるが、アクセルを床まで踏み切ることに抵抗感がなければ、加速感やエンジン音などガソリンが良い場合もあるし、つまりは高速道路中心での利用であればパワートレーンの選択はあまり気にしなくても良い。ただ、後席に人を乗せる頻度が高いのであれば、4WDの乗り心地の良さを選択しても損をないはずだ。 運転支援は最も安いSグレードでも付いているし、高速道路の移動では足回りもよく動くし、どのグレードでも快適だ。ちなみにサイドミラーの死角にクルマがいるなど、車線変更時の安全確認の補助をしてくれる「ブラインドスポットモニター」はおすすめ。Zグレードだと標準だがそれ以外だとOPとなる。 そして最後に、山道を走る頻度が高いなどアクティブなライフスタイルの人は特によく考えてほしい。そこで何を重視するか? 連続するカーブをストレスなくシャキッと軽快に気持ちよく走りたいならガソリンモデルだ。逆に山道では景色を見ながらゆったり走りたいというならハイブリッドがいい。もちろんどっしりとした安定感まで求めるなら4WDがいいというのは前述の通りだ。 走りとは関係ないが、床下収納を確保するためスペアタイヤは全車オプション(パンク修理剤対応)になっているが、山道を頻繁に走る人は積載力は減ってしまうが、スペアタイアを選択するべきだ。細い山道などでありがちなサイドウォールカット(タイヤの側面に小石などで傷がついてパンクしてしまう)は、パンク修理剤がまったく使えない。こうした道は交通量が少なく携帯もつながらない場合もあるので、なおさらだろう。 軽快感からくるレスポンスの良さが強みのガソリンモデルさて、2.0L直4のガソリンモデルはどうか? 強みは軽快さだ。ハンドルを切り込んだ際の反応、そこからクルマが旋回しだすレスポンスはお見事。車両重量がハイブリッドより軽いことが影響しているが、軽快ゆえ気持ちよく走れる。組み合わされるトランスミッションは機械式スタートギアを持つ特殊なCVT。停止からの動き出しはハイブリッドの滑らかさに敵わないが、十分に上質であり軽快さを引き出している。 専用ギアがスタートを補うことで通常のCVTよりも効率が良く、2.0L直噴エンジンの207Nmというトルクを活かしきり力強く走れる印象があるのだ。もちろんハイブリッドでもスポーティに走れるが、ここでは若干重さが目立つのが気になる。ハンドリングは、Zグレードの19インチは手応えもあり操作性が良いが、山道にありがちな凸凹を適度に吸収しつつ粘るようなグリップ感や素直なフィーリングを求めるのであれば18インチがいいだろう。 乗り味以外のおすすめとして、ノンビリと景色を楽しみながら走りたい、さらには後席によく人を乗せると言うなら、調光パノラマルーフがいい。電気的に太陽の光を遮断するもので、広い頭上ガラスエリアからの開放感ある気持ちよさも魅力だが、その調光の手軽さや先進感は所有満足度を上げるはずだ。 内外装に触れておくと、ハリアーの上質で大人なSUVの世界には「レザーパッケージ」がよく似合う。室内の各部の洗練されたデザイン、特に存在感を示す12.3インチ(Zグレード標準)や、大型モニター、馬の鞍をイメージしたというセンターコンソールなどと調和してグンと高級感が高まる。予算に余裕ががあれば選んで損はないだろう。 気になる点として、後席の広さは十分だがリクライニングの操作感やリクライニング角度が2段式調整しかできないのは、ややハリアーのクオリティからは残念に思うところだ。 高いシャーシ性能が、全てのパーツや選択の効果をはっきりさせてしまうのが今回のハリアー。選択で乗り味は大きく変わるので、是非とも自身に合った仕様に巡り合っていただきたい。 ラインアップの共食いになるかもしれないが、最後に独り言を…あのRAV4 PHVのシステムを静粛性を磨いたハリアーに搭載したら…SUVとしての可能性はまだまだ広がるかもしれない。 スペック例【 ハイブリッド Z レザーパッケージ 4WD 】 |
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