フェラーリ初のダウンサイジング・ターボ--- ドイツの雄が出揃ったところで、スーパー・スポーツカーに視点を移そう。ランボルギーニ「ウラカン」以外にも、各社がこぞって話題を振りまいた。 フェラーリは、「149M」プロジェクトとして予告していた新型「カリフォルニア T」を発表。2008年のデビュー時にはフェラーリ初のハードトップカブリオレ、初の直噴ユニット+DCT、V8初の2+2シーターと、「初」の文字が並んだが、6年を経て行われたアップデートではフェラーリ初のダウンサイズを敢行した。 フロントミドに積まれるV8ユニットは、従来の4.3L直噴自然吸気90°V8エンジンから3885cc2基のツインスクロール・ターボ付きにダウンサイズ。複合モード燃費を9.5km/Lへ向上しつつ、CO2排出量は250g/kmに低減された。最高出力は+70psの560ps/7500rpm、最大トルクは+50%の755Nm/4750rpmと、心臓部の強化も忘れてはいない。ターボラグを取り除き、非常に鋭いスロットル・レスポンスを実現したのも、セリングポイントだ。ターボ化で気になるのは、フェラーリらしい甲高いエギゾーストノートが健在か否かだが、ルカ・ディ・モンテゼーモロ会長の「ターボ史上、最高のエンジンサウンド」という言葉を信用するべきだろう。 さらにサプライズは続く。ジュネーブ・サロン開幕直前にアップルから発表された車載iOS「CarPlay」について、モンテゼーモロ会長の招きでアップルの副社長が登壇。iPhoneと車載インフォテインメントが連携し、iPhoneのアプリを使える機能について、大々的な発表をしていた。アメデオ・フェリーザ社長いわく、「フェラーリのユーザーの70%がアップル・ユーザーであり、スマホで使える便利な機能をフェラーリのユーザーに提供できるならいち早く搭載しない理由はない」とのこと。「FF」から採用がスタートする。 多士済々なスーパー・スポーツの競演アストンマーティンからは、「V8ヴァンテージ」の高性能版「V8ヴァンテージ N430」が登場した。GTレースで蓄積した空力設計のノウハウやブレーキシステムを加えて、動力性能を追求したで、10ps/20Nmのスープアップをはかった4.7LV8ユニット(436ps/490Nm)をフロントミドに搭載する。最高速305km/h、0-100km加速は4.8秒をマークする。価格は89,995ポンド(約1550万円)。 CO2規制の強化もあって、多くの自動車メーカーがダウンサイズに向かう中、あえて自然吸気エンジンを継承するのには理由がある。 「社会的責任のある企業として、世の中の要求や課税の課題に対して応えていく一方で、アストンマーティンの最大の魅力であるデザインやパフォーマンスで、現在も将来も妥協することは一切ありません」と、技術担当トップは語る。 マクラーレンからは、3台目のマクラーレンとなる「650S」のクーペとスパイダーが同時にデビューした。なぜ、これほど急ぐのか? という質問にチーフ・デザイナーのフランク・ステファンソン氏は「私たちはF1をベースとした企業ですから、毎年、新しいモデルを開発することになんら抵抗はありません。スタートしたばかりのメーカーとして、ラインナップを強化する必要もあります。また、『P1』があまりにも好評で、手に届かないお客様もいらっしゃいました。そうした需要に応える意味合いもあって、『650S』はクーペとカブリオレの両方を同時に発表しました」 実際、「650S」はカーボンモノコック製ボディのミドに650ps/678Nmを発揮するターボ付き3.8LV8ユニットを積み、0-100km/h加速をわずか3秒でこなす俊足ぶり。「12C」以上の性能に「P1」風のデザインを纏うスーパー・スポーツカーと言っていい。 ケーニセグは、世界最速のスーパー・スポーツカーを目指しての創業から今年で早20年。記念碑的モデルとして登場したのは、パワー・ウェイト・レシオが1:1(!)を標榜する「ONE:1」だ。ボディやパネル類はもとより、ホイールにまでカーボンを採用した結果、約1340kgと超軽量。最高出力1340psゆえに、1:1となる。最高速アタック専用に開発されたミシュラン製タイヤを履き、最高速440km/hを誇る。 「伊」と「仏」からも魅力的なモデルが続々今年は、イタリア勢やフランス勢も頑張りを見せた。アルファロメオからは「4C」のオープン版「4Cスパイダー」が登場。チェントロ・スティーレの手になる流麗なフォルムと、ターボ付き1.75L直4ユニットと6速DCTを組み合わせたパワートレーンに変わりはないが、こうしたオープンカーが登場するのもジュネーブ・サロンらしいところだろう。 ワイルドなバンパーと大きめなホイールでマッシブ感を高めたフィアットの「パンダ クロス」も、話題の一台。初代から伝統的に4×4モデルを用意しているだけに、待ち望んだファンも少なくないだろう。ビスカス・カップリングの4WD機構は、テレインシステムや3モードを持つ4×4機構などオフロード性能に磨きをかけた。 フランス勢では、シトロエンがコンセプトカーさながらの「C4カクタス」を発表して話題を振りまいた。エキセントリックな内外装が話題になった「Cカクタス」のイメージを踏襲した量産モデルであり、多少インテリアが“常識的”になったものの、切れ長のランプと「エアバンプ」(内部に空気を入れた新素材)をボディの前後とサイドに装着した個性派のデザインはそのままだ。10色のボディカラーに3色のエアバンプの組合せは、合計で21のバリエーション。81psのターボ付き1L3気筒のVTiユニットでは非力にも思えるが、シトロエンいわく「ボディ重量を1トン以下に抑えるので、81psのターボ付き1L3気筒のVTiユニットで十分」とのこと。あくまで個性を主張するシトロエンらしい。 プジョー/シトロエン/トヨタの共同開発となる小型三姉妹のブランニューも注目に値する。プジョーの「108」を代表例に取ると、全長は3.47mに伸ばされたものの、全幅は1.6mへとわずかに縮められ、ボディ重量が840kgに軽量化された。68psを発生する1L3気筒のベーシックな「VTi」、CO2排出量を88g/kmに低めた高効率版の「e-VTi」、82psを発生する1.2L直3を積む高出力版の3機種が揃う。5速MT/5速ATの組み合わせ、3ドア/5ドアのバリエーションが揃う。 「108」がシックな大人っぽさを表現したのに対し、シトロエン「C1」の内外装は前衛的だ。LEDのポジションランプや立体的なリアランプは、他で見たことがないデザイン。ファブリック製のオープンルーフを持つモデルも人気だ。それに対して、トヨタの「アイゴ」は日本のストリートダンスやアニメなどの若者のカルチャーをアイコンに、“バッテンマーク”のフロントビューを提案。子供っぽいと揶揄する人もいれば、ドレスアップにはいいんじゃないの、と評価する声もあり、賛否両論。だが、強烈な印象をもたらしたのは間違いない。 日本勢はデザイン・技術力・ドライビングプレジャーをアピール!日本車では、ホンダ「シビック タイプR」とレクサス「RC "Fスポーツ"」、そしてマツダ「HAZUMI」が話題の中心だ。 マツダでは「マツダ3(アクセラ)」がアメリカのカー・オブ・ザ・イヤーでファイナリストに残り、ジュネーブ・サロンで発表されたワールド・カー・オブ・ザ・イヤーのデザイン部門のファイナリストにも残っている。「魂動」なるデザイン哲学を打ち出し、躍動感のあるスタイリングのモデルをコンセプトとして発表することで、デザイン性の高さを訴える。 同時に、「HAZUMI」に積まれる1.5Lディーゼル・エンジンもワールドプレミアされた。詳細は明かされていないが、後処理装置なしでユーロ6をクリアするらしい。内装はコンセプトカーらしい前衛的なものだが、外観はかなり完成されている印象で、このまま出てくればかなりの人気を獲得できそうだ。 レクサスは、デトロイトで登場した高性能クーペ「RC」のスポーティ版「F」を発表。スピンドルグリルの採用、専用19インチホイールなどでドレスアップする。直噴とポート噴射を併用したアトキンソン・サイクルの5LV8「D-4S」は、チタンバルブ、鋳造コンロッド、シリンダーヘッドなどを新設計して出力を向上。FRにはじめて採用した車両制御機構「TVD」など、最新技術が満載のスポーツカーだ。 ヨーロッパのメディアにとって、ジュネーブ・サロンで最も気になる日本車だったのがホンダ「シビック タイプR」だ。日本では2010年に生産が終了したが、欧州では英国生産が健在。280ps以上の最高出力の発揮を眼目に開発中のターボ付き2L直噴ガソリン・エンジンを搭載し、「歴代最高のシビック タイプR」を目指す。ダウンフォースを高めつつ、フロントスポイラーやLEDコンビネーションランプ内蔵のリアスポイラーといった空気抵抗を低減するパーツを採用するなど、見た目でもスポーティネスを強調する。ヨーロッパにも日本同様、ホンダ・ファンが根強くいて、かなり期待値が高い。ホンダには、ぜひとも彼らの期待に応える渾身のスポーツ・ハッチを市販してもらいたいものだ。 自国に自動車産業がない国で開催されるモーターショーということもあって、非常にリベラルな雰囲気の中、開催されるジュネーブ・サロン。スーパー・スポーツカー、オープンカー、デザインを重視した華やかなモデル、そして技術を凝らした和製スポーツカーなど、どこを見回してもクルマ好きにはたまらない。それがジュネーブ・サロンの魅力であり、毎年行っても飽きないどころか、ショーが終わった瞬間から来年のジュネーブ・サロンに行くことが楽しみになってくる。 |
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