アルミやカーボンで剛性アップしたスチールボディ「メルセデス・ベンツ SLS AMG」「メルセデスAMG GT クーペ」に続く、AMGオリジナルモデル第3弾の、ようやくの登場だ。F1アメリカGPの舞台でもあるアメリカ テキサス州にあるサーキット・オブ・ジ・アメリカを拠点にステアリングを握ったのは、3月のジュネーヴ モーターショーでお披露目された「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」である。 AMGパナメリカーナグリルとシグネチャーライトによる表情がインパクトたっぷりの、全長5メートルを超える4ドアクーペボディは、オールアルミ製専用ボディのGTとは異なりスチール主体のモノコックとなる。但し、単なる「Eクラス」や「CLS」などのデザイン違いではなく、アルミダイキャスト製のパーツが各部に使われ、ガゼットやクロスメンバーの類もこれでもかと入れられ、後席バックレスト背後、ラゲッジ床下などにはCFRP製パーツも採用するなどして、徹底的に剛性アップが図られている。 パワートレインは「63」「63 S」の、お馴染みV型8気筒4.0Lツインターボを筆頭に、直列6気筒3.0Lターボ+電動スーパーチャージャー+ISGの「53」、更にはそのパワーを抑えた「43」まで設定される。いずれもトランスアクスルではなく通常のレイアウトで、63/63 Sには湿式多板クラッチを使った9速MCT、53/43にはトルクコンバーターの9速TCTギアボックスを組み合わせる。そして全車、AMGパフォーマンス4MATIC+と呼ばれる電子制御式AWDとなる。 シャシーは、63/63 Sにエアサスペンション、電子制御式アクティブデファレンシャル、後輪操舵機能も加わる。53/43はコイル式サスペンションに減衰力可変ダンパーの組み合わせだ。 メルセデス風とGTクーペ風を合わせたようなインテリア大型TFTディスプレイが2枚連結されたワイドスクリーンコクピットを備えた室内の眺めは、GT 2ドアクーペとの共通性は少なく、むしろ最新のメルセデス・ベンツに共通の雰囲気といえる。しかしながらセンターコンソールは、左右に各種スイッチが配されたGTクーペと似たデザインに。このスイッチはそれぞれにTFTディスプレイが埋め込まれていて、モード変更などをグラフィック表示で知らせてくれるが、率直に言ってオモチャ的で、高級感は今一歩である。 もうひとつの新たなフィーチャーがステアリングホイールに設けられたドライブプログラム切替スイッチだ。ダイヤル式のこれを操作することで、コンフォート、スポーツ、スポーツ+などの設定を切り替えることができる。これまではセンターコンソール上にあったスイッチだが、場所が変わるだけで、確かに気分のアガる演出となることは間違いない。 リアシートは3人掛けのベンチタイプ、2人掛けの左右独立のもの、更に大型センターコンソールを備えたVIP仕様とでも言うべきものまで、多くの選択肢が用意される。とは言え、背の低いクーペフォルムだけに背もたれは立ち気味だし、座面も小さく、更にはエギゾーストの音も結構入り込んでくるから、快適性はそこそこというレベルである。 このリアシートの背後には、容量395L+床下60Lのラゲッジスペースが備わる。3名乗車の後席を選べば、左右分割可倒式のバックレストを倒すことで、荷室を最大1324Lまで拡大することも可能だ。 想像以上の剛性感とシャープさを増したV8ツインターボまず試乗したのは「GT 63 S 4MATIC+」。リアドアを開けて手荷物を後席に置き、ドライバーズシートに腰を下ろす。こういう一瞬だけでも、4ドアの使い勝手の良さを実感できるのは確かである。 走り出して、驚かされたのはボディの凄まじいほどの剛性感だ。軽くはなさそうだが、その分、鎧のようにガッチリとしていて、相当ハードなサスペンションの先にある21インチタイヤからの入力を、何事もなかったかのように受け止めてしまう。乗り心地は良いとまでは言わないが、決して不快ではない。 フロント周りがしっかりしたからだろう。EクラスやCLSで特段不満と思っていなかったステアリングフィールが、目に見えてクリアで生々しいものになっているのも軽い衝撃だった。リアも、テールゲートが備わるなんて想像できないほどの塊感がある。こういう高剛性感のあるクルマ、初めて乗ったかもしれない。 ここで抱いた走りへの大きな期待は、サーキットでも裏切られることがなかった。これほどの巨体にも関わらず、テクニカルなS字コーナーの連続を切れ味鋭く駆け抜けていく様には感心させられ、圧倒されてしまったと言っていい。確かに重さは感じるが、その重いクルマが操舵した通りに曲がり、加速し、減速する。スライドさせればコントロール性は高く、クルマを常に手のうちに置いておけるという感覚が得られる。 それはクルマをうまく曲げ、そして前に押し出すアクティブディファレンシャル、同様に力を余さず路面に伝えるAWDシステム、走行状況に応じてダウンフォースを変化させるアクティブエアロシステム等々、あらゆるアイテムの協調の賜物。とにかくドライバーを鼓舞してくるのだ。 最高出力639hp、最大トルク900Nmまで高められたV型8気筒4.0Lツインターボエンジンのアウトプットが申し分無いものであることは、改めて言うまでもないだろう。特筆すべきはアクセル操作に対する反応がシャープさを増していること。間違いなくボールベアリングタービンを使った恩恵である。単なる大パワー発生機ではない、回す歓びが加わったと言っていい。 一般道メインなら53も魅力的。最大のライバルはパナメーラひと通りサーキット走行を満喫したあとには、改めて一般道で「GT 53 4MATIC+」も試すことができた。こちらはコイル式サスペンションに減衰力可変ダンパーの組み合わせとなり、よりソフトな設定のおかげで乗り心地は至極快適。ボディの良さが、大いに活きている。 最高出力はそれでも435psあり、動力性能は普段使いには十分以上。直列6気筒ならではの甘美な吹け上がり、回すほどに澄んでいくサウンドも魅力的で、サーキットに行く機会はほとんど無いというなら、こちらの選択もアリだろうと思えた。メルセデス・ベンツとひと味違ったブランド性、特徴的なデザイン、そして満足度の高い走りを備えたグランドツアラー的な存在として、選ぶ価値は十分ある。 但し、53のパワーユニットを選ぶとすれば、EクラスやCLSの存在がちらついてくるのも確かだ。まさにブランド代、ボディ代等々で、価格には数百万円の差がつくだけに…。何なら、「E 63 S」なども視野に入ってくるとすると、果たしてどれを選べばいいのか、相当悩ましいことになりそうな気がする。63 Sとて、やはり「メルセデスAMG S 63」などと、そう変わらない価格帯になるとしたら…? メルセデス・ベンツの各モデルとの比較の結果としてではなく「AMGだから」と迷わず選んでもらえるようになるためには、AMGというブランドの意味や価値、オリジナルモデルの存在感を、一層明確なものにしていく必要はあるだろう。一方で、「ポルシェ パナメーラ」の購入を考えている人などには、却ってストレートにライバルとして気になる存在になるのかもしれない。 AMGモデルの販売では世界でもトップ5に入り、AMG GTの販売成績も上々という日本で、このクルマがどのように受け入れられていくかは興味深いところ。但し、日本上陸までにはもうしばらく時間を要しそうだ。 参考スペック【 メルセデスAMG GT 63 S 4マチックプラス 】 【 メルセデスAMG GT 63 4マチックプラス 】 【 メルセデスAMG GT 53 4マチックプラス 】 |
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