乗用車用とSUV用のパターンをほぼ同一化120年の歴史を有するフィンランドのタイヤメーカー、ノキアンがリリースした新型ハッカペリッタR3とR3 SUVは、“ノーザン・コンフォート"がコンセプト。氷雪路やドライ&ウエットなど、あらゆる路面の快適性と安全性向上を目指した最新スタッドレスだ。北欧では環境意識の高まりから燃費指向ユーザーが増加中で、ハイレベルな転がり抵抗低減を備えた点も注目に値する。 首都ヘルシンキから200kmほど北西のノキア市にノキアンタイヤは本拠地を構える。フィンランドといえば厳寒地の印象があるが、1~2月のヘルシンキの平均気温はマイナス5℃で、北海道とほぼ同じ。暖冬傾向が強まり、雪が積もらない期間が増えているのは世界的な傾向で、北欧も同様。そんな理由もあって、期間限定で許可されるスパイクタイヤから、静粛性や快適性、低燃費の点で優れるスタッドレスに乗り換えるユーザーが増加中だという。 新開発したR3は、V字溝を巧みに組み合わせた回転方向指定タイプのパターンデザインを採用した。日本で主流となっている非対称デザインなど35種のデザインをテストした結果、溝に雪が詰まりにくい点や、耐ハイドロプレーニング性能などにメリットがある新型のパターンに決定したそうだ。 旧型のR2は乗用車用とSUV用でパターンデザインを分けていたが、新型はショルダー端部がわずかに異なる程度で、ほぼ同一化した。センター部のストレートリブに刻むサイプは、深さ方向に工夫を凝らして剛性を確保。旧型はポンプサイプをショルダー部に刻んでいたが、新型はミドル部に移設。ショルダー部はコームサイプと3Dロックサイプでブロック剛性を高めるなど、氷上や雪上でエッジと吸水の両効果を発揮するサイプの刻み方は、大変細かく工夫している。 コンパウンドはクライオクリスタル3パーティクルという新開発ゴムが特徴。低温時に結晶化する物質を混合して、氷上のミクロのスパイク効果を狙った点が興味深い。 乗用車用R3は快適性とグリップの向上が特徴的フィンランドの北極圏、イヴァロにあるテストコースと北海道でR3とR3 SUVに試乗した。まず乗用車用R3の印象から。VWゴルフに装着してイヴァロの氷上テストコースを走ると、まず特徴を感じるのが乗り心地。テストコースの氷路面は自然に凍結した湖なので凹凸があるが、本当にスムーズに静かに走り抜ける。R3はホイールと接合するビード周辺のゴムを改良した。この効果が乗り心地や静粛性に好影響を与えている様子だ。 氷上ブレーキやスラロームではグリップの高さと限界域の粘り強さを感じた。アンダーステアが出にくいため、危険回避のような急操舵時もしっかり回頭し挙動遅れが少ない。 次はアウディA5とR3の組み合わせで、一般道試乗に向かう。北欧では市街地を抜けると一般道でもかなりハイスピードで走行する。その流れに沿って走るR3は極めて快適。晴れから吹雪、また晴れと目まぐるしく天候が変わり、ドライや凍結、圧雪と変化する中でも、路面状況がドライバーに的確に伝わって走りやすい。 北海道では旭川空港から士別のテストコースまで、高速道路を含め試乗した。試乗車はアウディA3セダンとVWゴルフ。旧型R2装着車と比較すると、新型のグリップ向上がはっきり確認できる。旧型も非凡な性能を発揮するが、高速ではスタッドレス特有の変形が気になる。 新型はパターン剛性が確実に高まった。ストレート形状のセンターリブによる直進性の高さと、ショルダー部の横剛性向上が効果的。接地面が広く、サイズの大きなタイヤを履いているような安心感があって、自然なハンドリングが楽しめる。 R3 SUVはアラミド繊維を混合する独自技術で剛性アップR3 SUVはフィンランド・イヴァロでアウディQ5、北海道では日産エクストレイルに装着してテストした。イヴァロではゲレンデに向かうワインディングや、一般道の圧雪、凍結が混ざった路面を走行した。乗用車用R3と同様に路面変化に強く、乗り心地の快適さと走りの安心感があるタイヤだ。 北海道では旧型と比較した。旧型R2 SUVは乗用車用R2と異なるパターンデザインを採用し、SUVの車重を考慮した硬めのコンパウンドを搭載している。凍結路グリップは少し見劣りする。新型は乗用車用とパターンデザインを統一化。コンパウンドも柔軟性を備え、乗用車用に性能が近くなったイメージで、凍結路でも安心感のある粘りとグリップを披露してくれた。 SUV用は、乗用車用と異なりアラミドサイドウォールを採用している。防弾チョッキにも使われるアラミド繊維をサイドゴムに混合し、段差や穴ぼこ通過時のサイドカットを抑制するオリジナル技術だ。強固なアラミド繊維を混合しているため、剛性が高まり、キビキビした走りが楽しめるメリットもある。サイドカットは乗用車の低偏平サイズでも発生が多い。ぜひ乗用車用にもアラミドサイドウォールを採用してほしい。 転がり抵抗は旧型比5%低減した。旧型の転がり抵抗は日本のラベリング制度のAA相当という優秀なものなので、さらなる低燃費が期待できる。スピードレンジは偏平率45%以下がT(190km/h)、他はR(170km/h)という高めの設定。氷雪路の安全性、高速域の走り、燃費や乗り心地も含めて完成度が高い。北極圏のイヴァロや本拠地のノキアで10万Km以上のテスト走行を実施した成果が実感できる。 サイズラインアップ【 ハッカペリッタ R3 】 【 ハッカペリッタ R3 SUV 】 |
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