コンバーチブルに続き、クーペを導入ジャガーが売れている。2013年の世界販売は前年比42%アップを記録した。実に17のマーケットで史上最高記録を達成しているというから恐れ入る。ただ、正直に言って日本ではパッとしない。長年浸透してきたジャガーのイメージをそう簡単に覆せないのだろうか。販売に大きな動きはない。ジャガーの「新世代デザイン」の認知度は思いのほか低いようだ。 とはいえ、Fタイプの登場はセンセーショナルである。2シーターの本格派スポーツのラインナップは、確かにカーガイの視線を集めている。そして、すでに日本にも導入されているコンバーチブルに続き、ついにクーペが加わる。今回はそのステアリングを握るため、スペインへと飛んだ。場所はバルセロナの北西に位置するリェイダという街。その市街地とワインディング、高速道路、それとフェレールボベにあるモーターランドというベタな名前のサーキットが試乗コースに設定されていた。 ではその中身だが、フレームはコンバーチブルと同じオールアルミ構造に他ならない。アルミ加工と成形について10年以上のキャリアを持つジャガーのなし得るワザだ。ただ、今回はルーフがあるのでそこは新しい。ハイドロフォーミング成形によるルーフの梁が設けられた。結果、ねじれ剛性はジャガーの量産車のなかでもっとも高い33000Nmとなる。 強固なボディによって一体感が増したパワートレーンは3つのエンジンが用意される。340psの3.0L V6+スーパーチャージャーと380psのパワーアップバージョン、それと550psを発揮する5.0L V8+スーパーチャージャーだ。V6エンジンに関してはコンバーチブルと変わらないが、V8は495psから550psへスープアップされる。ボディ剛性が高まった分、思い切ったことができたのだろう。0-100km/h加速4.2秒、最高速度300km/hは立派である。ちなみに550psという数値は、ジャガーの頂点モデル「XKR-S」と同じ。ただ、あちらが4シーターのGTカーであることを鑑みれば、スポーツ走行ではこちらに軍配が上がりそうだ。 それではさっそく走った印象へ話を移そう。はじめにステアリングを握ったのは380psバージョンのV6を積む「Fタイプ S クーペ」であった。ドライバーズシートに座ってエンジンをかけると唸るようなブリッピングがするのはコンバーチブルと同じ。前を見ているだけではクーペであることを感じない。 ただ、ルームミラー越しの後方視界がそれを自覚させる。縦長のリアガラスが目に入るからだ。このときの視界の広さは「まぁ、こんなもんかな」といったところ。が、これが走り出すと驚く。リアウィングが立ち上がり、限られた視界をさらに限定するのだ。さすがにしばらく呆然としたが、それでも走りを優先する彼らのスタンスに賞賛を送りたい。 それはともかく、V6のウリはやはりハンドリングだった。380psのパワーは必要十分で、出だしからかなりのGフォースをドライバーに与えるほど力強いが、鼻先の軽さや軽快なハンドリングが気持ちいい。ボディ剛性が高まったことで一体感が増し、カラダとマシンがひとつになっている感覚が生まれる。お尻のすぐ後ろにあるリアタイヤのトラクションのかかり方もリアルに伝わり、アクセルとの連動性が高いこともわかった。この辺はアダプティブ・ダイナミクス、メカニカル・リミテッド・スプリップデフあたりの作動と関係する。 V8モデルはもはやモンスター級その後に乗ったV8搭載の「Fタイプ R クーペ」はまたひと味違った。550psというクラストップレベルのパワーもそうだが、専用の電子デバイスチューンがキャラクターを変えている。言うなれば、もはや“モンスターマシン”であり、あり余るパワーがグイグイ顔を出す。V6でもけたたましいサウンドはさらにステージが上がり、空気を切り裂くエキゾーストノートが峠道に響き渡った。 と同時に、暴れ馬のような車体はしっかりジェントルにしつけられていて、ステアリングやアクセルワークを通してドライバーの意図を理解する。これは専用のアダプティブ・ダイナミクスが行うもので、最大一秒あたり500回のダンパー調整をする仕組みからも納得できる。ワインディング走行中、「ここで跳ねたら嫌だな」というところで、ピタッと振動を収めて車体を安定させてくれる場面がそうだ。 ではサーキットではなにを体感したかと言うと、ショートコースではトルクベクタリングを、本コースではカーボンセラミックブレーキをリアルに味わった。まぁ、トルクベクタリングに関してはすでにドイツ車にはかなりの確率で付いているのでそれほど新しさは感じない。ただ、タイトコーナーでのオーバーステアやアンダーステアを修正する能力は高かった。 カーボンセラミックブレーキはポルシェやフェラーリでお馴染みだが、こうしてサーキットで踏み込むとその信頼性はものすごく高い。ただし、あいかわらずオプショナルプライスも……高い。 といったFタイプクーペだが、特にRクーペに関してはポルシェターボあたりが競合になりそうだ。なので、ジャガーにとってこれまで必要のなかったパワー系装備が表面化してきたと考えられる。いやはやお見事。ジャガー新時代の最終兵器はこのクーペかもしれない。 |
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