ESの日本発売は今年後半。後輪駆動のGSは終了へ1989年の登場以来の累計販売台数は実に218万台という、レクサスのグローバルセールスを支える存在であり続けてきた「ES」が、7世代目となる新型から、これまで未導入だった日本、そしてヨーロッパでも販売されることとなった。これらの地域で今まで売られていなかったのは、同じセグメントに属する「GS」とカブるから。それが遂に…ということは、正式なアナウンスこそ無いものの、レクサスは今後この市場ではESに集中していくということなのだろう。 では果たして新型ESは、GSを愛好してきたユーザーに、あるいはこのセグメントのサルーンを求める潜在的カスタマーに、どんなかたちでアピールするクルマに仕上がっているのか。今年後半の日本導入に先立ち、アメリカはテネシー州ナッシュビルにてステアリングを握り、確かめてきた。 ESは、トヨタのTNGAに基づく「GA-K」プラットフォームを用いた前輪駆動車である。しかもパワートレインは直列4気筒2.5Lエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッドと聞けば、「トヨタ カムリ」と近い構成だと察する人は少なくないだろう。しかしながら、両車は単なるデザイン違いなどではない。ESのボディはホイールベースがカムリより45mmも長く、ボンネットやフェンダーのアルミ化、カウルセクションの閉断面化、ルーフガゼットの追加、リアバルクヘッドの環状構造化とVブレースの追加に前後パフォーマンスダンパーの装着等々により軽量・高剛性化が図られている。 ハイライトはLSを思わせるスタイリングいい意味で驚かされるのがスタイリングだ。その流麗さは、一見まるで「LS」かと思わせるほど。GA-Kプラットフォームが可能にした低フード、後方に寄せられたAピラーなどによりプロポーションは悪くないし、凝った3D形状のスピンドルグリルはノーズの長さを意識させない。量感あるリアフェンダーのおかげもあり、一見しただけでは駆動方式が判らないほどだ。 結果としてこのESのスタイリング、結構な存在感のあるものに仕上がっている。豊富に用意されたボディ色も美しく、新色サンライトグリーンのような中間色も、艶やかなレッドマイカのような色もよく似合う。スタリイングは、間違いなくこのクルマのハイライトと言うべきだろう。 一方のインテリアは、LSを見た後だということもあるが、表現はコンサバ。しかしながらシートに腰を下ろしてみると、着座位置は低めで、ステアリングやペダルなどとの位置関係も良く、ドライビングポジションは想像以上にスポーティだ。これを実現するためにスカットルは相当低められている。ダッシュボードも薄型化され、ドアまで繋がる横方向に広がりのある造形となって、広々感が強調されている。 特等席はリアシートかもしれない。レッグルーム、つまり座面後端から足元までの長さは996mmで、新型LSの990mmすら凌ぐのだ。背もたれも8度のリクライニングが可能。低いルーフのわりに頭上にも十分なスペースがあるから、ゆとりはたっぷりだ。 日本向けのハイブリッドはカムリなら合格だったが…では肝心の走りはどうか。日本向けに用意される「ES300h」のパワートレインは高速燃焼技術を採用して熱効率を高めた直列4気筒2.5Lエンジンと電気モーターを組み合わせ、システム最高出力215hpを発生するハイブリッドシステム。シャシーは標準と「F SPORT」の2種類が用意される。 まず乗ったのは可変ダンピングシステムのAVSを装備し、19インチタイヤを履くF SPORT。乗り心地はタイヤの扁平率を考えれば悪くないが、低速域ではややコツコツと路面のデコボコを拾うし、鋭い突き上げに対する衝撃がやや大きめに感じられるのが気になる。 一方、ステアリングレスポンスは上々で、切った通り軽やかにノーズがインを向いていく。リアも落ち着いていて、ペースを上げても安心感は高い。ドライブモードセレクトをSPORT S+にセットすると操舵力がやや重めになり、ダンピングも強くなるが、差は大きくはなく、NORMALでも不満を感じる場面は無かった。 動力性能は十分というレベル。スムーズだしアクセル操作に対するレスポンスにはリニアリティがあって走らせやすいが、愉しさや贅沢な感じといったものは色濃くないのも事実だ。また、フロアの93%を遮音材・制振材で覆い、ダッシュパネルを大きなサイレンサーパッドで覆うなど静粛性にも十分に配慮しているのだが、回すと4気筒エンジン特有のサウンドが響く。カムリでは大いに満足したパワートレインだが、プレミアムカーの心臓としては、例えばもう少しモーター走行距離が長いなどの違いがあってもいいと感じた。 乗り心地に大いに感心させられたのが、続いて乗った「Ultra Luxury」、日本での「Version L」に相当するモデルだ。こちらは18インチタイヤを履き、サスペンションに世界初採用のスイングバルブショックアブソーバーを組み合わせる。ピストンスピードの極低い領域で働いて確かな減衰力を発揮する一方で、それより速い領域ではフリーになり、しなやかな動きを可能にするこのダンパーの効果は大きく、特に低速域や比較的良好な路面に於いて、ベタな表現だがまさに魔法の絨毯的なフラット感を味わわせてくれるのだ。しかも、ホイールはノイズリデューシングタイプとされ共鳴音を低減している。かと言ってフットワークも軽快感は失われてはいない。 不満はないが独自の強力な個性を発揮できていないこの時代にも、いやこういう時代だからこそセダンを求める層は確実に居る。彼らはコンサバとも言えるかもしれないが、多くはクルマへの思い入れが強いユーザー達に違いない。 そういう観点で新型ESを見ると、スタイリングは見映えがするし、室内は広い。走りもそれなりに軽快で、それでいて安心感が高い。LS同様、最新のプリクラッシュセーフティシステムや、レーダークルーズコントロールとレーントレーシングアシストを組み合わせたレクサス コドライブといった先進安全・運転支援装備も備わるといった具合で、総じて大きな不満はないのだが、しかし独自の強力な個性を発揮できているとまでは言い難いというのが率直な印象だ。強力なジャーマンスリーをはじめとするライバルと戦うには、あるいは現GSユーザーだったり、サイズアップしたLSに躊躇している人に選んでもらうにしても、今ひとつインパクトを欠く感は正直言って否めない。 実は新型ES、海外向けにはV型6気筒3.5Lエンジンを搭載する「ES350」も設定されている。こちらも試してみたら、自然吸気V型6気筒の吹け上がり、8速ATのステップ変速の心地よさに、欠けていた部分が埋められたような気分になった。燃費はお世辞にも良くはないが、代わりに得るものが大きければ、そこまで気にしないオーナーは少なくないはず。是非、こちらの日本導入も検討してほしい。 また、現時点では未設定の4輪駆動モデルも、やはり必須だろう。それらの展開も含めて、どうやって既存の、あるいは新規のユーザーにアピールしていくのか。スタイリングに負けない大胆、そしてしなやかな戦略を期待したいところだ。 スペック【 レクサス ES 300h 】 |
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