ポルシェの量販モデルで最も魅力的なグレードがGTSGTS。ポルシェ好きなら、このワードに心惹かれるのではないだろうか。スポーツグレードの象徴、優れた性能への安心感、お買い得なモデル、保証付きの商品力など、ポルシェの中にあって、ひとつのブランドのように捉える人もいるだろう。ポルシェ全般に言えることだが、グレード選びに悩んだらGTSを選択のベースにして、性能や装備を取捨選択しながら、価格と相談するのがセオリーでもある。 そんな中、発表発売から半年近くを経て、ようやく「718 ボクスター GTS」の試乗車が用意された。試乗車は戦闘機のような色(グラファイトブルーメタリック)がクールだ。ブラックアウトされたヘッドライトや、リアコンビネーションランプのGTS専用のダークフィニッシュとも調和が取れているし、細いスポークでデザインされた黒の20インチホイールとも合う。 個人的な感覚かもしれないが、最近のボクスターと言えばホワイトや蛍光色のボディをイメージしたくなるなかで、この色は魅力的に映った。わずか10mmではあるが車高が下げられ、ホイールハウスとタイヤの隙間が薄くなった効果も大きい。フロントリップ周りのGTS専用のデザインなども相まって、駐車場で対面した時、ワクワクと走りへの期待感が盛り上がるルックスもGTSならではの魅力だ。 btyの豪華な駐車場では周りの目もあって試せなかったが、ステアリングにあるドライブモードボタンをスポーツもしくはスポーツプラスに回すと、排気音がガラリと変わる。ノーマルでも十分に屋内駐車場で存在感があるが、スポーツモード以上は否応無しにドライバーの心理的スイッチが切り替わる。アクセルを踏む必要すらなく、アイドル時から音が変わるのだ。屋根を開ければ、刺激的なサウンドがダイレクトに耳に届くので気分はさらに盛り上がる。スピードを出す必要もない。乗員を取り巻く世界観そのものを積極的に変えていくのが、ボクスターGTSの魅力とも言えるだろう。 屋根を開けた状態での風の巻き込みは平均的。特別少なくもなく、60km/h巡航程度が最も心地よく、それ以上の速度になってくると帽子が欲しいし、女性だと髪がバサつくなど嫌がる人もいるだろう。高速道路主体で使うのであればクローズドボディで剛性感に勝る「718 ケイマン GTS」のほうが魅力的かもしれない。しかし爽やかな天候の下、適度に耳にダイレクトに届く排気音を聞きながら、風や景色の流れを肌で感じて、操作に瞬時に反応する高性能版ボクスターの世界を体験したら…そんなチャンスは所有しても1年に数えるほどしかないだろうが、感動とともに癒されるはず。幸運にも、試乗した日がまさにそうだった。 911モデルを超える718GTSの走りのクオリティその運動性能は予想を大きく超えてきた。ポルシェファンを敵に回しそうだが、個性や味の世界ではなく、走りの質に注目するならば718 GTSは「911」を超えている。前後重量バランスや慣性バランスで上回るボクスターの車高を下げて低重心に磨きをかけ、太いスポーツタイヤを履き優れた基礎グリップもある。路面への強い張り付き感や、意のまま感があるのは当然だろう。 しかも、電子制御ダンパーがブレーキを踏んだり、加速する際の無駄な姿勢変化や、うねり路面でフワッとする動きを抑えている。電動パワステは重めの手応え重視の味付けで、取り付け剛性が高く遊びが少ない上、これは911にも共通するがパラレルステアリングのジオメトリーが取り入れられてフロントのグリップ感を強烈に得られている。 走りの質から言えば、この価格帯では間違いなくトップの実力ではないだろうか。首都高の霞ヶ関付近には速度を上げなくてもフワッと荷重抜けするカーブが存在する。そこを走り抜けた時の動きなど、こんなにも素早く荷重抜けの影響が収まるのか? と驚かされる。しかも、アクセルを踏んでいようが、ブレーキを踏んでいようが、巡航状態でそこを走り抜けようが、前後が同調して動く特性に変化はなく、素早く車の動きが収束する。スポーツモデルを乗り継ぎ、クルマの動きに注意を払ってきたドライバーなら、感動レベルだと思う。 こんなにも車体が安定していたらつまらないという声もありそうだ。911などは安定性を確保しながらも、ボクスターのような前後が同期同調する動きは少なく、そこに操る難しさ楽しさがあり、味があり、燃料の減りまで乗り味に影響してくるなど、乗っていて飽きないのも事実。そう考えてみると、ボクスターは純粋なスポーツ性能を追求したサラブレッドという見方もできる。 ボクスター Sにはない鋭さや刺激があるちなみにGTSと「ボクスター S」ではベースエンジンは一緒だが、インテークダクトの形状や最大ブースト1.3barのタービンへの変更で15ps向上。低回転の使いやすさはボクスター Sも変わらないが、GTSの魅力は伸び感、特にレッドゾーン手前500回転の吹け上がりの鋭さが違う。スポーツモード以上にしている際の、最後の伸び感の有無は、加速感というより刺激として大きく異なっている。エンジンが全てを絞り出し、吠えている感覚が伝わってくると言えば良いだろうか。屋根を開けている時など、こちらまで吠えたくなるのだ。 試乗した718 GTSはMTだったので、ツインクラッチのPDKとの相性は未知数だが、MTにも変速時の回転数制御が組み込まれ、今までであれば怖くてできなかった人でも、シフトダウンで高回転を積極的に使ってエンジンの刺激を味わえるようになった。 懸念材料があるとするとパッケージングが若干ストイックすぎること。2シーターオープンなのでシートがタイトだし、目的地に着いてリクライニングして休むなんてこともできない。前後にトランクがあるので旅行などは困らないだろうが、2人で移動する際などは助手席が使えないから、鞄や小物の置き場所にも困る。しかし、多少不便でも所有したいと思える魅力が「718 ボクスター GTS」にはあった。 スペック【718 ボクスター GTS】 |
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