いま『私をスキーに連れてって』を撮るのなら!?もしも今、映画『私をスキーに連れてって』を撮るのなら、こういうちょっとナゾで魅力的なペアでスノードライブを敢行しちゃうのかもしれないと思った。そう、アウディR8スパイダーとQ2だ。 かたや生粋のミッドシップオープン2シーターでフルタイム4WD、かたや5人乗りのジャストサイズSUVでリーズナブルなFF。正直R8にスキー&スノボ板の類は一切載せられず、せいぜいフロントラゲッジに着替え入りのバッグを入れるのが精一杯。冷静に考えるならQ2単独で行くのが正解だろう。 だが、あの映画は成蹊学園出身の遊び人集団によりプロデュースされ、バブル期ならではの妙にリアルな夢が散りばめられていた。男はトランシーバーを駆使し、OL2人がトヨタ・セリカGT-FOURで雪道バトルを繰り広げ、プロ級の腕前のアマチュアスキーヤーがゲレンデのコブ斜面でヘリコプタージャンプをする。 当時なんとか手が届きそうなモダンな遊びアイテムがジャカジャカ散りばめられ、あの時代、頑張れば自分たちでも楽しいライフスタイルが送れるかも? という幻想をかきたててくれたのだ。 大学生がバイト代を貯めてクルマを買うのは当時の常識で、時代は上り調子。ラジカセ、ヘッドフォン、スキーにビリヤード。道具を使いこなすことによる夢の実現が確実にあった。クルマを乗りこなし、スキーが上手くなれば、可愛い彼女と愉快な青春時代が手に入るという淡い幻想があったのだ。 雪山ドライブは安心感に楽しさが加われば鬼に金棒だかたや現在クルマは夢に直結する魔法のアイテムではなくなった。もっと冷静にシェアリングやレンタカーで合理的にスキーやスノボドライブに行く。単純に実用の道具になってきている。 しかし、小沢が思うに未だに雪道ロングドライブで何がキツイかって帰りの退屈な高速だ。ワクワクして話も弾む行きはともかく、帰りはどうしても眠くなる。特に途中のサービスエリアで夕飯を済ませた後は、ドライバーのみ起きていて残り2~3人が寝るのが普通。 そんな時にもしも1台ピュアスポーツカーがあったらどうだろう。中でもR8のような安心と楽しさを両立するスーパーカーが在れば完璧だ。もちろん板も荷物もほとんどは残りのQ2に載せるハメにはなるものの。 だが、考えようによっては帰り道もゲレンデスキーの延長のごとく移動が楽しくなり、交互で乗れば悩みが確実に減るはず。もちろんかなりとんでもないお金持ちにしか許されない真冬の夢たるツインドライブではあるが。 というわけで今回小沢はスノボ好きの編集と一緒にこの2台で春の雪山ドライブへと向かった。もちろんスキーとスノーボードはQ2の左リア席を倒して載せ、R8のフロントに自分の着替えのみ入れてだ。 ポップな装いとはウラハラの高い安心感と使い勝手の良さ…Q2予想通りこの2台での長野往復700kmはある意味理想的だった。まず行きのQ2で味わえたのはなんともアウディSUVらしい磐石の安心感。 ボディ骨格はVWグループ自慢の新世代プラットフォームMQBで剛性感はバッチリ。細かい不安定な揺れはなく、ステアリングフィールはスタッドレスタイヤ(ミシュラン・X-ICE 3+)ということもあって多少甘めだったが手応えは重厚。乗り心地もしっとり厚みがあり、タイヤが確実に路面を捉えていた。街中はもちろん高速ドライブでも恐さがない上、大雨の常磐道、時速100km近くなってもまったく恐くないことに感心した。 さらなる驚きが1リッター直3ターボの実力だ。最高出力は116psとことさら凄くはない。だが、その1.3トン前後のコンパクトボディを本当にグイグイ引っ張る。直3がゆえにエンジン音は多少ラフだが、言われない限り気付かないくらい十分に上質で滑らか。 さらに予想以上だったのが使い勝手の良さ。全長はジャスト4.2mとこの手にしては小ぶりだが、リアシートは大人が3人座れ、ラゲッジも400L強。長尺モノも片側リアシートを倒せばそれなりに載る。 そのポップなポリゴンデザインから想像できないほどの実用性の高さで、その気になれば1台だけで大人3人スノードライブもこなせるはず。非常にモダンで万能なSUVなのだ。 ソリッド感や乗り心地の良さは雪道でもぼやけない…R8スパイダー一方、主に帰りに乗ったのはR8スパイダーでコチラはまさに走りに特化したスペシャルモデルだ。Q2に比べ、ビジネスホテルとリゾートホテルくらいの違いがあり、安心感と楽しさの高バランスはまさに別次元。つい2年前、2016年にフルモデルチェンジ(日本には2017年導入)した超モダンなスーパーカーで、骨格は新世代のアルミスペースフレームとCFRP、カーボン強化プラスティックとの複合素材。骨組みだけなら約200kgと軽量で、全長4.4m台の本格的スーパーカーでありながら車重は1.7トン台に収まる。 エンジンはいまどき潔い電動モーターなしの5.2リッターV10 DOHCノンターボ。最高回転数は8000rpmを超え、乗ったとたんに感じるのがキレ味の鋭さとそれとはウラハラの恐さの無さだ。ちなみに今回タイヤはピレリ・ウィンターソットゼロ3を履いていた。 ステアリングフィールは地面をナイフで切り裂くように鋭く、これはQ2にはまったくないソリッド感。いわば競技用のカービングスキーでゲレンデを滑っているようだ。 一方、ここからがいまどきスーパーカーの不思議で、足回りは硬いが乗り心地はQ2より確実に良い。細かい振動を吸収し、まさに良質なマテリアルの乗りものを操っている感覚で満たされる。 しかも意外だったのが、このシャープさや乗り心地の良さが雪道でぼやけるどころか、よりクリアに感じられた。常にジャリや氷混じりでゴツゴツの路面でも、やっぱりR8は走りがいいのだ。素材の良さがここまで路面を選ばないとは思わなかった。 またこの手のスポーツカーにありがちなリアの不安定さともR8は無縁。自慢のクワトロシステムは、ミッドシップスポーツならではのノーズの軽さを実現させつつ、リアタイヤが容易にドリフトアウトすることもない。これが滑りやすい雪道でもそうなのだから凄い。ミッドシップカーならではのタイトロープ感覚を、雪道でも安全に味わえるのだ。 短い人生、マズくて退屈なものを味わっているヒマはないドライの高速道に入ったら後はぶっ飛ばすのみだ。ソリッドな走行フィールを感じながら走らせていると、1~2時間ぐらいアッという間に過ぎてしまう。 運転に飽きたらドライブモードを変えるのもいい。日本では真価をすべては発揮できないが、ステアリング上の「アウディドライブセレクト」をダイナミックモードに変えれば、ギアが瞬時に一段下がってエンジントルクとレスポンスが上がるうえ、電子制御のマグネティックライドサスペンションが締め上げられ、タイトさが一段増す。言わばレース前に、スキーブーツのバックルを一段締め上げて緩みを無くしたような状態だ。公道がゆえに絶対的なスピードは出せないが気持ちは引き締まる。 ついでにR8スパイダー自慢の電動ソフトトップの恩恵もたっぷりと味わえた。雪山ワインディングで撮影中、雪の晴れ間に気持ちいいので屋根を開けたはいいけどものの10分で寒くなる。もちろんエアコンやシートヒーターで暖めれば問題はないが、やはり閉めたくなる。その点このスパイダーなら時速50km以下ならわずか20秒で開閉可能。好きなところで開け、好きなところで閉められる。 最新のモダンスポーツというのは、実にわがままかつ贅沢なものだということを実感した。というかムダで退屈な時間をキレイに取り去れることに驚いた。今後はおそらくバブル期の様に、高価なクルマを手に入れることによる自己実現といった夢は減っていくだろう。人の幸せは、皆が求めるいいクルマを買うことだけでは達成できなくなるからだ。かといっていいクルマも否定されることはない。それは確実に乗る人のライフを上質なものにするからだ。 ポップな実用SUVと研ぎ澄まされたモダンスポーツカーで雪山に行く。スノースポーツをゲレンデのみならず、行き帰りの移動の質までこだわる行為で、まるで夕食を最後のデザート1つに至るまでこだわるような贅沢だが、今後の幸せとは、もしやこういうことなのかもしれない。短い人生、マズくて退屈なものを味わっているヒマはないということで。 Q2・スペック【 Q2 1.0 TFSIスポーツ 】 R8スパイダー・スペック【 R8スパイダー V10 5.2 FSIクワトロ 】 |
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