2.5Lガソリンエンジンに気筒休止技術を採用マツダCX-5がマイナーチェンジした。見た目は変わらず。低負荷時、4気筒のうち2気筒を休止して燃費を向上させる技術が2.5リッターガソリンエンジンに盛り込まれたほか、2.2リッターディーゼルエンジンは上位モデルのCX-8と同じ最大トルク450Nmを発揮するバージョンに切り替わった。都市高速と一般道で試乗した印象をご報告。 「スカイアクティブD」ことマツダのクリーンディーゼルエンジンは、同社の技術のハイライトであり、ロータリーに代わる看板技術としてイメージをブーストしている。その結果、販売におけるディーゼルエンジン車の比率が高まりすぎ、ガソリンエンジン車が思うように売れないという贅沢な悩みを抱えている。現行CX-5でいうと7割がディーゼル、3割がガソリンという。マツダとしては半々が理想だそうだ。 そこで、ガソリンエンジンの魅力を増すべく盛り込んだのが気筒休止技術。低負荷時に外側の2気筒の吸排気バルブを閉じて機能させず、擬似的に1.25リッター2気筒エンジンのような動きをさせる。そのほうがスロットルを大きく開くことができるため、ポンピングロスを減らせるし、エンジン自体の放熱も小さくできるので、効率が上がるのだ。 切り替わりは極めてスムーズ。参考値ながら燃費は約5%改善試乗中、アクセルペダルを踏んだり戻したりしながら大げさに加減速してみたが、4気筒→2気筒、2気筒→4気筒へと切り替わる瞬間を体感することは一度もできなかった。「あれ、切り替わってる!?」と『君の名は』のパロディをやりたかったのだが、全然わからなかった。気筒休止技術は現行のVWゴルフにも用いられる。あちらも切り替わった瞬間を体感できない(メーター内に表示が出るのでわかる)。まぁ、振動や音の変化でわかるようでは実用化レベルとはいえないのだろう。 試乗車に特別に取り付けられたモニターによれば、実際には結構な頻度で切り替わっている。2気筒でカバーできる範囲なら気筒休止し、それでは足りない負荷が求められば瞬時に4気筒となる。理論上、仕事量としては2気筒で事足りる場面であっても4気筒とも働かせたほうが(効率は落ちるものの)音と振動は少ないという。また、急激に変化してしまうと乗員に違和感として伝わってしまうので、エンジンの油圧、空気量、燃料量、点火時期などを緻密に制御することで、切り替えの瞬間を目立たぬようにしているとのこと。 気筒休止によって、カタログ燃費は変わらないものの、実走行での燃費を約5%改善できたとマツダは主張する。現在売られるクルマのエンジンはどれも乾いた雑巾を絞るように燃費を追求しているので、実燃費5%改善が事実なら大した仕事だ。とはいえ、なんとも地味なアップデートだ。同じコストをかけてスタイリングを変更するマイナーチェンジもあり得たはずだが、こっちを選ぶあたりがマツダらしい。 新エンジン搭載でCX-8に迫る高級感を得たディーゼルしかしである。しかしそれでも依然ディーゼルのほうがより魅力的だと、今回両方を同じルートで乗り比べて思った。新しいディーゼルエンジンはCX-8に搭載されているものと同じもの。中高回転域を担うセカンダリーターボをバリアブルジオメトリー化することで過給圧を上げたほか、より緻密な噴射を行うピエゾインジェクターを採用することで、ピークトルクのみならず広範囲でトルクを太らせた。 その改良によって体感できるのは、力強さというよりも、回転を上げないで済むことによる静粛性の向上だった。同じ負荷をかけた場合のエンジン音が一段小さくなっている。スカイアクティブDエンジンは、ある時期にDE精密制御という技術が盛り込まれて以来、ディーゼルエンジンとしては細かいアクセル操作に対する反応がよいのだが、その点に更に磨きがかかった。やや落ち着きのなさと感じることもあるくらい敏感に反応する。もちろん反応が悪いより良いほうがいい。 この結果、新しいディーゼルのCX-5は、CX-8に迫る高級感を得た。CX-8とCX-5は似ているがプラットフォームが異なる。CX-8は北米で販売しているCX-9と共通のプラットフォームであり、CX-5よりも大きく、よりコストがかかっている。例えば鉄板の板厚などが異なるそうだ。そのあたりの違いによってCX-8はCX-5よりも乗り心地がよく、落ち着いた印象だったのだと思っていたのだが、新しいCX-5はCX-8に近い乗り味を感じさせた。今回のマイナーチェンジではボディ補強などは施されていないというから、ディーゼルエンジンの制振性および静粛性のアップに起因する好印象ということになる。 450Nmが400万円以下で買える新車は他にないマイナーチェンジでは、全車を通じ、擬似的に作り出した自車を真上から見た映像を車内モニターに表示することができるようになったり、車速感応式オートドアロックが備わったりと、ユーザーから出ていた細かい要望に応える改善も施された。 結局、ガソリンとディーゼルはどちらが買いなのか。答えは……わからない。というか答えはない。だれもが書きそうな内容で恐縮だが、走行距離が多い人はディーゼル、少ない人はガソリン、多人数乗車や高速走行の機会が多いならディーゼル、街乗り中心、少人数乗車ばかりならガソリンといった選び方になるのだろう。あとはディーゼルのほうが約30万円高い(正確にはディーゼルには補助金があるため、その差は縮まるが)ことをどう考えるか。 私ならたとえ燃費のよさと燃料の安さによって元を取ることができなくてもディーゼルを選ぶ。低回転域からの大トルクは何物にも代えがたい。400万円未満で最大トルク450Nmが手に入る新車は他にない。私に言わせれば4気筒ディーゼルは”貧者のV8”なのだ。 スペック【 CX-5 XD Lパッケージ(4WD) 】 【 CX-5 25S プロアクティブ(4WD) 】 |
GMT+9, 2025-5-1 04:47 , Processed in 0.070402 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .