マツダに敬意を表しつつ歴代ロードスターに試乗今回ボクは歴代のロードスター全てに乗ることができた。その経緯は昨年末の現行NDロードスターのマイナーチェンジと、マツダが新たに始めた「NAロードスターレストアサービス」がリンクしたから。この機会に「全てのロードスターに乗ろう!!」という企画になったのだ。 それと同時にボクが偉いと思ったのは、マツダが初代ユーノス・ロードスター以外にも歴代車輌を動態保存していることだった。通常現役を退いた車輌は直接的な宣伝活動には役に立たないわけで、企業として考えれば単なる税金のムダ。もちろんロードスターは「世界で一番売れたオープンスポーツカー」だから、マツダが歴代車輌を保管するのは当然のようにも思える。そして今回のようにメディアがこれを取り上げれば、ブランディングとしては成功だと言えるのだけれど、果たしてそれが功を奏するか? というのはまた別な話であり、普通に考えれば思い切れないことである。 なぜなら大衆車メーカーであるマツダは、スポーツカーメーカーのように過去を遺産化してプレステージを高めることが、業績につながるメーカーではない。プレミアムシフトへの道を模索しているフシは確かにあるけれど、ともあれ今回マツダがNAロードスターをレストアしたり、歴代車輌を動態保存したのは、それが直接的な理由ではないと思うのだ。そもそも論として、マツダがロードスターを大好きであり、そのオーナーたちを愛しているからだと思うのである。前置きは長かったけれど、ボクはこれが言いたかったのだ。さぁオープントップを開け放って、歴代ロードスターの試乗を開始しよう。 NAから様変わりしてしまったデザインに愕然二代目ロードスターは、完全な“名作”となった。うん、“NB”は本当にいい。もし今ボクがマツダ・ロードスターを手に入れるならば、間違いなくNBの中から、どのグレードにするかを悩むと思う。なぜなら今もってNBが一番、バランスが取れたロードスターだからだ。 しかしこの二代目、出た当時は喧々ごうごうだった。あまりにプリティだった初代NA型から一気に変わってしまったその見た目。リトラクタブルヘッドライトが北米における歩行者保護の観点から禁止されてしまったことは残念だったが、それにしてもそのデザインは、あまりに様変わりしてしまった。素朴で可愛らしかったイギリスのカントリーガールが、西海岸に出てきて化粧バリバリになってしまったかのように、小さなボディになまめかしいうねりを加えてきたアンバランス感には、初代NAオーナーとして怒りを感じた程だった(笑)。 またNAの後期型で1.8リッターとなったエンジンはその素性をコツコツと磨き上げ、最終的には160psを発揮するまでになったけれど、やっぱり何かが違っていた。たぶん当時の僕たちは、トルクでこれを走らせるのではなくて、“テンロクNA”という記号性と共に、“回す愉しさ”を見いだしていたのだと思う。初代NAのB6エンジンはファミリアに搭載された量産車用ユニットだったから、例え高回転まで踏み込んでもホンダ「V-TEC」のような切れ味やパンチはない。むしろ“ただ回っているだけ”感の方が強かったのだが、それでも誰もがレッドゾーンまでエンジンを回しきれる愉しさに、ハートをつかまれていたのだ。 ネイキッドバイクに乗ったみたいな清々しさちなみにマツダはこのNBから、一度は廃盤にした1.6リッター(125ps)を復活させている。しかしこれも、時すでに遅しだったとボクは思う。人間というのは1.8リッターと1.6リッターの両方を見せられたら、そりゃあいい方が欲しくなるものだ。そして一度失った信頼というか勢いを取り戻すのは、とても大変なことなのである。またこの頃から日本の経済は下り坂になって、こうしたスポーツカー論争さえも、もはや消費者が熱くなれなくなっていた気さえする。だから世界的にこのNBは“最も売れたロードスター”となったはずだが、日本にいるボクにとっては、いまいちピンとこないモデルだった。 だが、そのNBに今乗ると、どうだ。……とってもいいじゃないか! それはまるで250ccくらいの、ネイキッドバイクに乗ったみたいな清々しさなのである。軽い車体をそこそこトルキーなエンジンで走らせると、アクセル開度が全開になっていなくても加減速がしやすくて、オープンカーのキャラクターにはとっても合っている。そしてこの気持ちよさに乗せられて、思わず床までアクセルを踏み込んでみると、トップエンドの7500rpmまできっちりエンジンが回りきってくれる。うほほほほ~ッ! と青空に向かって吠えてしまうのである。 小排気量ターボが全盛となったいま、日常性のドライバビリティをしっかり保ちながらも、ここまで気持ち良く回ってくれるエンジンは本当に少なくなってしまった。その加速に過激さはまったくないけれど、車速は確実に高まって、何よりアクセル追従性が素直なことが、乗り手との一体感を高めてくれる。 ライトウェイトスポーツカーにおけるひとつの完成形足回りはボヨンボヨンだ(笑)。けれどそのボヨンボヨン具合が、前後にダブルウィッシュボーンを備えて、本来曲がりたがりであるロードスターのハンドリングを、良い具合に中和してくれている。もしこのNBに、現代のクルマたちのようなステアリング応答性を与えたら、その分リアサスペンションのセッティングは、安定志向になってしまうだろう。また万人が乗るオープンスポーツカーとしては、電子制御でそのスタビリティを補填しなければならなくなる。事実その判断に苦しんでいたのが、初期型NDロードスターである。 しかし、トラクションやヨーコントロールの電子制御が未発達だった時代に生まれたNBは、これを天然のセッティングで全てまかなっている。フロントの応答性を適度に緩くしつつ、リアにも自由度を与えているから、クルマがフロントだけじゃなくて、全体で曲がる感覚が強い。トルセンデフの効き具合も絶妙だ。だからNBロードスターは、腕のあるヤツには楽しいし、のんびり走っても気持ちよいのである。そしてこの曲がりたがりな素性を活かし、“つるし”じゃない自分だけのロードスターへと仕上げるために、好きモノたちは思い思いのサスキットを選んで、これをセッティングしたワケだ。 ワインディングをひとっ走りしたあと、いま一度クルマを降りてその姿を眺めてみる。今見るNBロードスターには、当時感じたような違和感がなく、むしろその小ぶりなボディで、精一杯カッコつけている姿に愛らしささえ感じた。時が経つのって、不思議なものだ。 そして結論として、「あぁ、やっぱりロードスターって最高だな」となる。特にNA時代のシャシーを進化させたNBは、ライトウェイトスポーツカーにおける、ひとつの完成形である! とすら言える。だからもし今、ロードスターを再び手に入れるなら、ボクはNBを選ぶんじゃないかと思う。もちろん原点回帰したND型は最高だ。けれどトータルパフォーマンスでは、50万円近辺で手に入れてコツコツ直したNBにはかなわないんじゃないかな? と思うのである。 スペック【 ロードスター RS(NB型) 】 |
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