初のSUVにして4WD。見た目は“背の高いファントム”ロールス・ロイスは5月10日正午(英国時間)、オンライン上でブランド初のSUVとなるカリナンの姿を明らかにした。数カ月前から同社がナショナルジオグラフィックと組んで、ゼブラにカモフラージュされたカリナンでアメリカ、スコットランド、UAEなどの大自然を走破する映像が公式に公開されていたので、カリナンの存在とおおまかな姿かたちは明らかになっていたが、ついにその全貌が明かされた。 公開前の4月某日、ロールス・ロイスは中国・北京市内でカリナンを一部メディアに対して、5月10日まで一切公開しないことを条件にプレビューした。夕刻、マグマレッド(赤)とダーケストタングステン(ガンメタ)の2台のカリナンが同時にアンヴェールされ、我々の前に姿を現した。第一印象、大きい。昨年登場した同社のフラッグシップサルーンのファントムVIIIを見たときにも同じことを感じたが、今度は背が高い。実際、カリナンは全長5341mm、全高1835mmと、ファントムよりも約400mm短く、190mm高い。2164mmの全幅はファントムとさほど変わらない。 数年に一度しか新型車を発表しないロールス・ロイスの場合、すべての新型車発表が特別で新しい挑戦だが、カリナンの場合は特別中の特別だろう。なにしろブランド初のSUV(発表前、彼らはカリナンをHBV<ハイ・ボディード・ヴィークル>と分類していたが、プレビューの現場で普通にSUVと呼んでいた)であり、初の4WDである。 そのスタイリングは端的に言えば、背の高いファントムだ。スピリット・オブ・エクスタシーが鎮座したパンテオングリルとその両脇の控えめなヘッドランプユニットの関係性はファントムそのもの。サイドに回り込むとこのクルマがSUVでありながら、わずかにトランク部分が突き出たノッチバック形状であることがわかる。3ボックスまでいかない2.5ボックスといった感じだ。デザイナーのジャイルズ・テイラーは「1930年代のグランドツアラーは旅行用トランクを車外に固定して積載していたが、カリナンのリアにそのイメージを盛り込んだ」と説明している。 サイドウインドウグラフィック全体が大きく、特に天地の寸法が長い。悪路走破には外部の路面状況の目視が最も重要。“なんちゃって”ではなく走りに定評があるSUVは、総じて乗員が路面を直接目視して確認できるようウインドウの下端が低く設定されている。半分様式美でもあるが、であればゆえにカリナンもこのことを守っているのだろう。車体の下部には彼らが「サクリファイス」と呼ぶ、悪路走破によって何かにぶつかったり擦れたりすることを想定した黒い樹脂部分が設けられた。 日本導入も今年中。価格はファントム未満、ゴースト以上初のSUV、初の4WDではあるが、その根幹となる車台は、ファントムで初めて用いられた「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」というアルミスペースフレームだ。他のブランドが使ったら不遜だと言われそうな名前のこの車台は、ゴースト、レイス、ドーンといった現行ラインアップにもモデルチェンジのタイミングで採用されるだけでなく、将来のEV化への対応も想定されているという。ただし今のところ彼らの顧客からは電動化の要望はほとんどないようだが。 新しい車台を得た最新のファントムは元々の乗り心地のよさに加え、信じられないレベルの静粛性を得たほか、重さ2.5トン超、ホイールベース3m超の図体をものともせず、ワインディングロードをハイペースで駆け抜けることが可能なハンドリングを実現した。カリナンは4WD化もあり、ファントムに比べ約100kg重くなっているものの、これに近い乗り味を実現しているのではないだろうか。史上最も高い目線で楽しむロールス・ロイスということになる。 ファントムと同じ6.75リッターのV12ツインターボエンジンを搭載する。最高出力は571ps/5000rpmとファントムと同じだが、最大トルクはフラッグシップに配慮したか、あるいは何らかの最適化の結果かわからないが50Nm少ない850Nm。発生回転数はわずか1600rpmである。4WDシステムの詳細は明らかになっていないが、機械的なセンターデフロックなどは備わらず、電子制御されたフルタイム4WDとのこと。グループであるBMWのテクノロジーが用いられているのは想像に難くない。 電子制御エアサスによって車高(ロードクリアランス)のコントロールが可能。SUV化によってフロア高が上がったが、カリナンはまずドアを開けると40mm下がって乗員を迎え、ドアを閉めると基本の車高に戻る。逆にドライバー自らが40mm上げることもできる。つまり80mm幅で上下するということ。最大渡河水深は540mm。ドライバーにダイヤルで走行モードを選ばせることはない。センターコンソールに「OFF ROAD」と書かれたボタンがひとつ。悪路ではこれを押しさえすればすべてが最適化される。何しろ「effortless everywhere」というのがカリナンに課せられた使命だ。カリナンの乗員はどこへ行くのにも苦労知らずでなければならない。 リアがラウンジシートの5人乗り仕様と、左右が独立したシートの4人乗り仕様がある。4人乗り仕様の後席乗員背後にはパーティションガラスがあり、猛暑や極寒の地でリアハッチを開けても室温が保たれる。また4人乗り仕様には、リアハッチを開けてスイッチを押すとラゲッジフロア部分から後ろ向きに腰掛けるための2座のレザーシートとカクテルテーブルがせり出してくる「ビューイングスイート」というオプションが設定されている。 日本導入は2018年内の予定。価格は未定だが、ファントム未満ゴースト以上という位置づけのようだ。ロールス・ロイスはSUVをもたない数少ないブランドだったのだが、カリナンの登場によって、残るSUVをもたない主要ブランドはフェラーリとアストンぐらいになった。うちアストンは開発中であることが公然の秘密になっている。 動画/塩見 智 スペック【 カリナン 】 ※欧州参考値 |
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