贅沢なオールラウンダー、パナメーラ4S早朝、箱根ターンパイクに着くや、最初に乗ったのがパナメーラ4Sだった。パナメーラは去年、フェイスリフトをうけ、4ドア+テールゲートのスタイリングが一段と洗練されると同時に、メカニズムにも変更が施された。そのなかでも目立つのが、パワートレーン、すなわちエンジンラインナップの変更である。 これまで、車名にSがつくモデルには基本V8エンジンが搭載されていたが、その伝統はGTSにのみ残され、他のSモデルはV6ツインターボをボンネットの下に収めている。もちろん試乗した4Sもその例外ではなく、エンジンは420psと520Nmを生み出す3リッターV6ツインターボで、そこに7段PDKを組み合わせ、4輪を駆動する。 そのパワートレーンで、1940kgという決して軽くない車重を走らせるわけだが、そのパフォーマンスは、0-100km/h加速4.8秒、最高速286km/hと公表されているから、フル4シーターの4ドアGTとしては充分な速さである。 実際、あくまで軽くスムーズに回転を上げながら、ターンパイクの急坂を望むとおりのペースで駆け上っていくパナメーラ4Sの実力は、ポルシェのイメージに恥じないものだと思った。しかもそれに加えて、シャシーのもたらす身のこなしがまたポルシェらしい。 最近のポルシェの傾向に沿って、操舵力はちょっと拍子抜けするくらい軽いが、しかし路面フィールは充分に伝えるステアリングを切り込むと、ノーズがリニアかつクイックに向きを変えてコーナリングに入っていく。サスペンションもほとんどサルーン並みに柔らかいのに、腰の据わったコーナリング姿勢を見せるところが、まさにスポーツカーとサルーンの両方の美点を兼ねることを目的に生み出された、パナメーラらしいところだ。 しかも試乗車は4Sだから、路面状況を問わないオールラウンド性も高いはずだ。したがって、1台のポルシェですべてを済ませようという向きには、絶好のモデルかもしれない。ただし、この一台に1480万円を投じられる分厚い財布の持ち主であれば、の話だが。 最大の目玉、911ターボS続いて乗ったのは911ターボSだった。実はターボS、このフルライン試乗会の最大の目玉で、集まったメディアから引っ張り凧。したがって、当日それに乗れるかどうかは、会場におけるクジ引きで決まる、という状況だった。そうしたら、カービュー編集者のTくん、クジ運が強いのかどうかは知らないが、2時限目にターボSに試乗する権利を見事に引き当てたのだった。 僕にとっては、去年秋のドイツ国際試乗会以来2度目の911ターボSだったが、日本で乗ってもその魅力は基本的に変わらなかったといっていい。その魅力の根幹とは、途方もない高性能と、快適さに満ちた日常性を、見事に両立させていることにあるといえる。 まずは途方もない高性能について書くと、911ターボの高性能バージョンたるターボS、エンジンは基本的にターボと同じ3.8リッター水冷水平対向6気筒ツインターボで、最高出力はターボの520ps/6000-6500rpmに対して560ps/6500-6750rpm、最大トルクは660Nm/1950-5000rpm(オーバーブースト時710Nm/2100-4250rpm)に対して700Nm/2100-4250rpm(オーバーブースト時750Nm/2200-4000rpm)を発生。トランスミッションは7段PDKのみの設定で、電子制御多板クラッチによるPTM=ポルシェトラクションマネージメントを介して、前後輪にトルクを適正に配分する4WDを採用する。 結果ターボSは、1610kgの車重を発進から100km/hまで3.1 秒、同じく160km/hまで6.8秒で加速し、トップスピード318km/hに達するという、歴代市販型911で最速のパフォーマンスを手に入れている。 しかもそれに加えて、リアアクスルステア、すなわち後輪操舵を新採用したシャシーの進化も著しく、ハンドリングと高速における安定性が一段と向上している。その結果、ニュルブルクリンク北コースにおけるラップタイムで、ウルトラスポーツタイヤを装着したターボSが同様のタイヤを履く991GT3を破るという、信じられない現象も起こっている。 560psと700Nmを使い切れそうな凄さドイツを舞台にした国際試乗会では、その高性能と快適さの両立ぶりを公道とサーキットの両方で実感して来たが、果たして日本の路上ではどうか? まずは試乗会ベースのホテルを出て海沿いの道路を走るが、そこではターボSの快適さがストレートに実感できた。 電子制御アダプティブダンパーを備える脚は、ダンパーのスポーツモードを選ぶとちょっと硬めではあるが、ノーマルモードでは意外なほどしなやかに動き、20インチ径のピレリPゼロを履くバネ下の質量を感じさせぬ、快適なライドを提供してくれる。ニュルブルクリンクで市販型911最速のラップをマークする猛者とは、とても思えぬ乗り心地なのだ。標準装備のPCCB=ポルシェセラミックコンポジットブレーキがバネ下重量の軽減に役立っているのも、好ましい乗り心地の一因になっているはずである。 パワートレーンにも同様のことがいえる。560psと700Nmを叩き出す3.8リッター水冷フラット6ツインターボは、低回転からもスムーズに反応して有効なトルクを捻り出すし、ツインクラッチ2ペダルの7段PDKも滑らかな変速を可能にしているから、狭い街道筋や市街地を低速で流すことを強いられても、ドライバーはストレスを感じないで済む。それに加えて、リアアクスルステアリングが50km/h以下では後輪を前輪と逆位相にステアするため、小さな舵角でノーズが鋭く向きを変えるのが味わえるのも小気味よい。 一方、ターンパイクのような高速ワインディングに入って鞭をくれると、ターボSは超高性能車の側面を即座に発揮する。踏み込むスロットルの深さと速さに応じて加速は自由自在、どこから踏んでも背中をバックレストに押しつける強烈な加速を振る舞ってくれる。 それでいて、猛烈にパワフルであることがもたらす恐怖感のようなものは特に感じられず、3.8リッターのフラット6ツインターボが生み出す怒涛のパワーを、シャシーが見事に受け留めている印象をうける。つまり、560psと700Nmを危なげなく使い切れる感じがするのだが、そこがこの991型ターボSの最も凄いところだろう。 というわけで、2500万円近くを911に投入できる状況にある余裕の御仁なら、普段使いのためのクルマとしてターボSを手に入れても、決して間違いにはならないと思う。 最もユニークなカイエンはSハイブリッドそして最後に乗ったのが、カイエンSハイブリッドだった。「ポルシェがSUVを!」とスポーツカー好きを落胆させながら初代がデビューしたのは2002年のこと。今やカイエンは、ポルシェにとってもその顧客にとっても、なくてはならぬ存在になっている。 その2代目となる現行カイエンには、3.6リッターV6の素のカイエンから、4.8リッターV8ツインターボのターボSまで、6モデルで日本でもラインナップされているが、そのなかで最もユニークな存在といえるのが、カイエンSハイブリッドではないだろうか。 これは、3.0リッターV6スーパーチャージドエンジンと8段ティプトロニックS型ATとのあいだに、電気モーターを備えるエレクトリックシステムを組み込んだパラレル方式を採用したハイブリッドモデルで、エンジンは333psのパワーと440Nmのトルクを発生、それを47psのモーターでアシストし、トータルで380psと580Nmを生み出すとされる。 対する車重は2130kgで、0-100km/h加速6.5秒、最高速242km/hという、ポルシェとしては大人しめではあるものの、絶対的には充分以上の動力性能を発揮する。それに対して燃費は、ヨーロッパ仕様のデータを見てみると、3.6リッターV6の素のカイエンに比べて市街地で50%ほど、トータルで20%ほど向上する、とされているようだ。 実際にドライビングしてもそのとおりの印象で、平坦路での加速はもちろんのこと、ターンパイクの上りも、決して鮮烈ではないが、充分以上のペースで駆け上がっていく。 シャシーの手応えはSUVのイメージよりもソフトで、乗り心地はゴツゴツした感触のない快適なものだし、操舵力の軽いステアリングを操ってのハンドリングも、それなりにロールするものの、実際の車重から想像するよりも軽快な印象をうける。 そんなふうに、それなりにまとまりのよさを感じたカイエンSハイブリッドだが、これよりぐっとコンパクトなマカンがどんなドライビング感覚を持っているのか、それが気になった筆者であった。これもプライスは1000万円オーバー、1130万円とされている。 |
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