最新世代ディーゼルを導入。パワースペックは平均的メルセデス・ベンツ、BMW、ボルボ、プジョー・シトロエン、ジャガー・ランドローバー、マツダ、三菱、トヨタに次いで、フォルクスワーゲン(以下、VW)がディーゼルエンジン搭載モデルをラインアップに加えた。搭載されたのはパサートとパサート・ヴァリアント。採用されたのは2リッター直4ターボディーゼルで、2015年秋のディーゼル問題発覚時に使われていたエンジンとは世代も使われる技術も異なる最新世代のディーゼルエンジンだ。 最高出力190ps/3500~4000rpm、最大トルク400Nm/1900~3300rpmと、2リッター直4ターボディーゼルとしては平均的なパワースペックをもつ。車重1560kgのセダン、1610kgのヴァリアントともにJC08モード燃費は20.6km/L。これも平均的。排ガスの後処理問題も一般的な酸化触媒、尿素SCR、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)で対応する。 ジャガーが最大トルクを430Nmまで引き上げる代わりに燃費は17.1km/L(XEの場合)にとどまるなど、クルマの性格、車重(に関連するギアリング)、世代の違いによって多少スペックが異なる場合もあるが、各社だいたい燃費が20km/L前後で最大トルク400Nm前後というのがパターンだ。現在施行されている排ガス基準をクリアしつつ競争力のある価格の範囲で実現できるパワーがこのあたりということなのだろう。 必要なときに必要なパワーでストレスなし実際に乗ってみてどうか。パサート・ヴァリアントTDIハイラインで山梨のワインディングロードを走らせた。大前提として、VWが誇る最新のエンジン横置きモデル用プラットフォームのMQBを用いて開発されたパサート・ヴァリアントはクルマとしての出来がよい。刺激的なハンドリングを味わわせてくれるわけではないが、多少飛ばしてもリアを中心にどっしりとした、安心感の高い挙動に終始する。飛ばしても流しても乗り心地は快適。 車体がよいとエンジンもよく感じる。低い回転域から豊富なトルクを活かした鋭い発進や、コーナーをクリアした後、直線でグイッと勢いのよい中間加速を安心して楽しめるのも剛性感の高いボディがあってこそ。コーナーが続くだけでなくアップダウンも激しいコースだったが、必要なタイミングで遅れなく必要なパワーを引き出すことができ、ストレスのないドライブを楽しむことができた。今回は試すことができなかったが、高速道路巡航では、ガソリンエンジン搭載モデルと同等かそれ以上の静粛性を保って快適に走行できるはずだ。そして給油時には財布に優しい料金に頬が緩むだろう。 欧州に比べてディーゼル車が普及しない理由ディーゼルエンジン搭載モデルは、同等の装備のガソリンエンジン搭載モデルに比べ割高なのだが、契約時に一度だけ感じた大きな痛みは忘れ、給油の度の小さな喜びは記憶として積もり積もっていくのが人間というものだ。トータルコストでエンジンが高かった分を燃料代で取り戻せるかどうかはユーザーの累計走行距離次第だが、ハイブリッド車同様、数万キロ程度では難しい。ディーゼル車のほうがガソリン車よりも体感的にパワフルなので、そこに価値を見出す人であれば話は別だ。 日本における外国メーカーの輸入車販売台数の約2割がディーゼル車だ。しかし欧州では(ここのところ減少傾向にあるとはいえ)3~5割に達する。この差は何か。いくつか原因があって、ひとつは都市部を中心に、人々がかつてのディーゼル車が発したPMに由来する健康被害にずいぶん悩まされたこと。過去のディーゼル車は堂々と黒煙をモクモク排出した。現在販売されているディーゼル車はとっくに例外なくクリーンなのだが、人々の印象がアップデートされるのには時間がかかる。 もうひとつは、日本はユーザーの平均走行距離が非常に短く、また平均速度が低いため、ディーゼルのメリットを感じにくい市場だということ。そういう市場で真価を発揮するハイブリッド車の人気が高いというのも関連した理由のひとつだろう。 好みや考え方はいろいろ。選択肢があるということが重要いろいろ書いたが、結局、ディーゼルにすべきなのかどうかというと、ケース・バイ・ケースだし、好みの問題も絡むからなんとも言えない。言えるのは、長距離を走る人はディーゼルの分高く買ったとしても回収できる可能性がある。日常的に(つまり低回転域での)パワフルな走りに価値を見出す人には強くオススメする。私個人はこの点に最大限の価値を見出し、実際に直4ディーゼル車を毎日使っている。ディーゼルの振動はよく抑えられ、エンジンの静粛性もハイレベルなのは間違いないが、とはいえガソリン車よりは振動も音も出るので、遅くてもいいから振動せず静かなほうがいいという人にはオススメできない。ただし高速巡航時に限ってはガソリン車よりも静かだ。 VWに限らず、ディーゼルがガソリンよりも良いか悪いかという話にあまり意味はない。選択肢があるということが重要なのだ。VWはEVのe-ゴルフを日本発売し「2025年までに最大300万台のEVを生産する」と表明しているのに加え、先日新たに「2022年末までに世界各地の16カ所の工場でEVを生産する(現在は3カ所)」と発表した。EVにも本気だ。天然ガスや化学合成した再生可能ガスを使ったTGIテクノロジーの研究も進めている。環境保護の観点からもユーザー個人のメリットの観点からも、選択肢を広げることこそ重要と考えているのだ。途中で反省するきっかけもあったので、よけいその思いを強めているはずだ。 なので、パサートはガソリンでもディーゼルでもいい。選択肢があることを喜びながらじっくり選ぼう←仕事放棄(笑)。ただし、パサートは今夏にデザインの変更を伴うマイナーチェンジが予定されているので、買ってすぐデザインが変わってしまうのは勘弁という人は、あわてて飛びつかず、まずは情報収集すべきだ。アルテオン風デザインになるという噂も。 スペック【 パサート ヴァリアント TDI ハイライン 】 |
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