大きな野望とともに復活した新世代サルーンついに日本上陸を果たしたアルファロメオ渾身の新世代モデル、「ジュリア」。古い世代の方ならご存知だろうが、その名は1960年代のアルファロメオが世に送りだしていた名車に付けられていた名前そのもの。それが復活したのだから感慨を覚える人も多いだろう。 復活を果たしたジュリアだが、そこにはアルファロメオの大きな野望が込められている。なぜなら近年のアルファロメオはコンパクトモデルを中心としたブランドだったからだ。 2011年にセダンの「159」が消滅した後は、欧州Bセグに属すコンパクト・モデルの「MITO」と、欧州Cセグに属す「ジュリエッタ」の2台が中心。途中でスーパースポーツである「8Cコンペティツィオーネ」や、ミッドシップスポーツの「4C」を擁したし、そもそもはアルファロメオ・ブランドから登場するはずだったオープン2シーターFRが「アバルト・124スパイダー」になってしまうなど、ブランド的にも方向性がいまいち定まらないところもあった。 そんなアルファロメオが送り出した今回のジュリアは、コンパクト系でもスポーツカーでもなく、欧州Dセグに投入された新世代サルーンである。欧州Dセグといえば、メルセデス・ベンツ Cクラス、BMW 3シリーズ、アウディ A4といった強豪が並ぶ激戦区である。しかもジュリアは、なんと1992年に生産を終了した「75」以来となる後輪駆動モデルとして登場したのである。 プレミアムかつグローバルなブランドへと再構築欧州Dセグに属す、後輪駆動のアーキテクチャ…とくれば、当然これまでのコンパクトとは異なるプレミアムなブランドを志向することとなる。事実、このアーキテクチャはマセラティと共同開発したもので、後輪駆動の他に4輪駆動にも対応している設計。 つまりジュリアとは、アルファロメオがプレミアム・ブランドへと変貌を遂げるためのモデルであると同時に、これによってグローバル・ブランドとして復活するための世界戦略車的な意味を持ったモデルなのだ。 日本に上陸したジュリアのラインナップだが、搭載エンジンは2.0L直噴ターボのマルチエアが基本で、日本での展開はベーシックな「ジュリア(受注生産)」に始まり、装備充実版の「スーパー」、さらに280psへと出力アップをして4WDと組み合わせた「ヴェローチェ」、そしてトップモデルには2.9LのV6直噴ツインターボで510psを発生する「クアドリフォリオ」が用意される。 510ps&600Nmの大パワーをFRで受け止めるまず皆さん大注目の「クアドリフォリオ」だが、このモデルは見た目からして圧倒的な存在感を誇る。実際に前後バンパー等のエアロパーツはもちろん専用の、ひと目で高性能を感じさせるデザインとなる。実は全幅は他と同じだが、よりワイドに見える……それだけイカツいのが特徴だ。さらに19インチサイズのタイヤ&ホイールがホイールハウスにぴたりと収まっており、他のモデルと同じ車高ながら、圧倒的に低く見える構えとなる。 イグニッションをオンにすると、フェラーリ・カリフォルニアTに搭載されるV8から2気筒をカットした2.9LのV6直噴ツインターボが、激しいサウンドとともに目を覚ます。 最高出力510ps/最大トルク600Nmを発生するこのエンジンは、8速ATを介して後輪を駆動する。FRでありながらの510psは、よほどの自信がなければ実現できないだろう。この数値ならば今どき4WDで当たり前。しかしながらFRを用意した辺りに、アルファロメオのプレミアム・ブランドとしての意欲が感じられる。つまり走りにおいてもダイナミックな世界観を演出したいのだろう。 実際に走らせると19インチながらも、統合制御されたシャシーによって最低限の快適性は担保されている。このサスペンションは、ストローク感が短く割とすぐに底をつくようなフィーリングだが、ガツンと衝撃はこなくて粘りを感じさせる。このため路面の荒れや段差通過では、ボディを上下させる動きこそ伝わるし、それなりに体も揺すられるが、鋭い衝撃は入ってこない。比較的ハードな乗り味かつ大パワーではあるけれど、街乗りや高速巡行では意外に快適に思えるのだ。 サーキットへ連れ出したくなる痛快さとシーンを問わない“濃さ”そして走行モードを“ダイナミック”へと変更すると、エンジンサウンドも一層高まり、スポーツカーとしての顔を存分に見せてくれる。 まずは何と言っても加速が圧倒的。FRながらも0-100km/h加速は3.9秒だし、最高速も307km/hを達成しているほど。アクセルを踏み込むと快音を響かせながら、グイグイとスピードが上がっていく。ちなみにフロントのスプリッターは、速度に応じて可変するタイプが与えられている。 しかもエンジン特性は2500~5000回転で最大トルク600Nmを発生するフラットトルク型のため、力が途切れずに、速い。またこうした性格のエンジンだから、むしろMT(用意はされていない)で走らせたら回転の頭打ちを感じやすいため、むしろATの方がマッチングが良いだろうとも思える。 今回は公道での試乗のみだったが、本当の実力を見るならばサーキットへ向かうべきだ。事実、そのコーナリング性能は極めて高いため、公道では至極安定して駆けぬけていく。510psを発生するツインターボから湧き出る力を余すことなく後輪に伝え、FRならではの醍醐味ともいえるリアのスライドを味わうには、クローズドコースが相応しい。要はそれほど高いダイナミクスを備えているし、おそらくその性能を解放すれば、メルセデスAMGやBMW Mにはない痛快さを味わうことができるはずだ。 しかしながら、普段の街中で乗るのも悪くない。圧倒的な性能を携えて、それをゆとりとして感じつつ転がす、というのもまた一興といえるだろう。とにかくクアドリフォリオは、そんな風にシーンを問わず“濃い味”を堪能できる1台である。その意味では、このクアドリフォリオこそ、かつてからのアルファロメオ・ファンが思い描くアルファロメオといえるだろう。 軽やかで爽やかなスポーツサルーンの味わい当然ながら、ジュリアはクアドリフォリオだけがジュリアではない。クアドリフォリオに負けず印象的だったのが、次に乗った「スーパー」である。 廉価版の「ジュリア(受注生産)」はレアな1台として、実質的なベーシックモデルといえるのが、ジュリアの装備充実版である「スーパー」。欧州Dセグメントのライバルと同等の装備をほぼ全て備えたモデルである。つまり、今や当然ともいえるADAS(運転支援システム)もしっかり備えており、まさにイマドキのサルーンといえる内容だ。 搭載エンジンは2.0L直噴ターボのマルチエア。最高出力は200ps、最大トルクは330Nmを発生する。このスペックに関しては「ジュリア」と同じ。そして8速ATのトランスミッションも同じだ。 「スーパー」は装備こそ充実しているが、ラインナップの中ではシンプルなモデルであることは間違いない。それだけに車重も「クアドリフォリオ」の1710kgに対して、1590kgと軽量になっている。また、搭載される4気筒は鼻先も軽く感じさせるために、余計に身のこなしの軽さが味わえるモデルとなっている。 実際に試乗すると、まず驚かされるのがハンドルのクイックさだ。ライバルに比べると大分シャープなギア比であることが誰でも感じられるだろう。それだけに当初は面食らうが、少し走るとこれに慣れて、実に軽快な感覚を覚える。そもそもクルマの素性としてジュリアの中でも軽量な部類に属し、鼻先も軽いわけだから、動きそのものが軽やか。それに加えてハンドルに少し意思を込めれば鼻の向きが変わるようなハンドリングが融合することで、本当に操るのが楽しいサルーンになっている。 エンジンスペック的には大したことがない。だが実際に走らせると、扱いやすさと軽快なエンジンの吹け上がりがあり、爆発的な速さはないものの1750rpmから最大トルクを発生するだけあって、常に頼もしいトルク感が得られる。それが、ちょうどいい気持ち良い力強さとなって感じられる。そうしたエンジンの印象が、先のハンドリングや身のこなしの軽い乗り味と相まって、実に爽やかなスポーツサルーンの味わいが生まれているのだ。 本質を極めた「スーパー」がイチオシ!確かにクアドリフォリオは圧倒的な速さと濃厚な味わいで、これぞアルファロメオといえる1台に仕上がっている。しかしながら、スーパーに触れて試乗すると、欧州Dセグメントの中で見てもしっかりと、アルファロメオという個性を感じさせる内容ながらも、プレーンで毎日乗っても飽きのこない1台に仕上げられている。そして現実的に選ぶならば……と考えると、スーパーは実に魅力的だと感じられるはずだ。 もちろんこの他にも、同じ2.0L直噴ターボのマルチエアながらも280psを発生するチューニングを施し、4WDを組み合わせた「ヴェローチェ」も魅力的。さらに本国には、同じエンジンラインナップながら駆動方式やトランスミッションを様々に用意しているため、将来的にはさらなるモデル追加も期待できるかもしれない。 とはいえ現時点で狙い目なのは、実質的なベーシックモデルである「スーパー」であることは間違いない。欧州のプレミアムなサルーンが欲しい。そう考えたなら、まず一度は試してみてほしい。もちろん予算が許せばクアドリフォリオの熱さを堪能すべきだが、価格的になかなか手が出ないのも事実。そう考えるとスーパーは、現実的な価格ながらもしっかりとアルファロメオを味わえる。 でも、よくよく考えてみれば、“かつてのジュリア・スーパー”のように、素に近いシンプルなモデルの方が本質を極めた1台ともいえる。その意味では、現代に蘇った名車ジュリアは、やっぱりスーパーがなんだかんだでど真ん中の1台なのである。 スペック【 ジュリア スーパー 】 【 ジュリア クアドリフォリオ 】 【 ジュリア ヴェローチェ 】 |
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