スタートは好調! 販売の40%以上がMT車新型シビックの販売が好調と各メディアで報じられている。それは素直にめでたい。 シビックシリーズ全体の発売から約1ヵ月時点での受注台数は1.2万台以上。これは月販目標(2000台)の6倍以上にあたる。11月上旬にオーダーしても、国内生産のセダンで年明け、ハッチバックで来年春、タイプRにいたっては来年の夏以降の納車になるそうだから、今は「生産がまったく追いついていない」という嬉しい悲鳴状態ということだ。ちなみに、その1.2万台の約50%をハッチバックが占めて、残る半分をセダンとタイプRがほぼ同数で分け合うというから、セダンとタイプRがそれぞれ約25%ずつのシェアとなる。 なかでも興味深い事実は、ハッチバックの販売の35%を6MTが占めるということだ。シビック全体における“ハッチバックのMT”のシェアは、50%×35%……の約17.5%という計算になり、さらにいうと、このハッチバックとは別に全体の25%を占めるタイプRは全車6MT。つまり、シビックの国内受注の4割以上(17.5%+25%=42.5%)がMT車というわけだ。 また、明確な数字は示されていないが、20~30代の若者層のオーダーも好調という。こうしたシビック初期受注の好調ぶりを「クルマ人気復活」、「セダン、もしくはハッチバックの復権」、あるいは「若者のクルマばなれにブレーキ」といった論調で報じる向きもあるが、さすがにそれは先走りすぎと思う。 シビックの初期受注は全体の半分近くをMT車が占めるわけで、それだけスポーツ指向の熱心なマニア筋が中心であることを意味する。スポーツ系モデルでは、発売直後にはオーダーが殺到するも、需要が一巡するとそれ以降はパッタリ……というケースも多い。今回のシビック人気が本当の意味での「復権」かどうかは、もうしばらくの経過観察の必要があるだろう。 かっこよく見せる基本要素を網羅しているそんな10代目シビックは、日本だと先日発売されたばかりだが、北米では一昨年、中国では昨年に発売済みで、グローバルではすでに、歴代シビックでも指折りのヒット作になっているという。 新型シビックがヒットしている理由には「かっこいいデザイン」と「セダン、ハッチバック、タイプRの3機種を同時開発したことによる走りの良さ」があると、ホンダ自身は分析する。 新型シビックの造形をかっこいいと思うかは個々人の主観によるだろうが、少なくともパッケージレイアウト上ではクルマを素直にかっこよく見せる基本要素=「長い、幅広い、低い」をきっちりと網羅している。 1.8mという全幅も日本のCセグメント車では最大値だが、それ以上に長くて低いのが新型シビックの大きな特徴である。ハッチバックで4.5mを超える全長と1.45mを下回る全高はともにCセグメントとしては異例に長くて低い。さすがに全長がこれだけ長いと、Cセグメントとは思えないほど立派にみえる。このあたりのクラスを超えた存在感も、新型シビックがヒットした背景にありそうだ。 インテリア素材の“適材適所”を求めたい内装デザインも個人的には少しばかり煩雑な気もするが、こういうテイストを好む人もいるだろう。ただ、ダッシュボードのメインとなるソフトパッド素材に対して、シボ入りのハードな樹脂がちょっとツヤがありすぎ……という質感差は少し気になる。 正確にいうと、気になるのは質感差そのものより、それを目立たせてしまうデザインのほうである。たとえば、新型シビックのインテリアでは、あまり質感が高いとはいえないハード樹脂のシボが、運転中に目がいきがちなナビ画面付近に使われていたり、あるいはフェイクのステッチが成形されたパッドを助手席前の一等地に配されていたり……と、低コスト素材をわざわざ目立つ場所に使うようなデザインになっている。 このクラスでインテリアにふんだんなコストがかけられないのは、シビックにかぎったことではない。だとしたら、それをできるだけ感じさせず目立たせない意匠や素材づかいをすべきなのに、新型シビックはわざわざ損をするようなデザインなのが少し残念だ。 4輪がベッタリと張りついている感がすごい今回のシビックではプラットフォームをゼロから完全新開発して、しかもハッチバック、セダン、タイプR、(そして海外向けのクーペ)を同時並行で開発したことも自慢だという。 これ以前の2世代ほどのシビックは、北米やアジアが中心のセダン/クーペと、欧州メインのハッチバックはプラットフォームから別物の設計になってしまっていた。そのうえで、タイプRは欧州向けのニッチ商品として、欧州シビックをベースに後追い開発するのが通例となっていた。 しかし、今回の新型シビックはタイプRも含めてすべて同時開発。よって、タイプRだけを後づけで強化するのが非効率すぎるとベース設計にタイプR設計を入れ込んでいる部分もあり、標準のハッチバックやセダンにはある意味で贅沢な設計になっている。 シビックのシャシー性能は、なるほどちょっと驚きの高性能である。ボディはビクともせず、いかなる場面でも4輪がベッタリと張りついている感がすごい。ステアリングはかなり強力でクイックな設定なのだが、それを乱暴に振り回しても、リアが追従しきれずに破綻するようなケースはまずない。 タイヤのサイズや銘柄からも分かるように、明確なスポーツ仕立てのハッチバックに対して、セダンはより控えめな性格づけとなっている。高速ではハッチバックより明らかに滑るようなフラットライドが印象的。ただ、そんなセダンでも他社平均からすれば、もはやスポーツセダンといってもいいほどの俊敏な仕立てである。 日本仕様の標準シビックに搭載されるエンジンは1.5リッターVTECターボの1本立て。182ps/220Nmという出力は欧州にいくつかある同等エンジンと比較してもハイチューン。コーナーで不用意に踏み込むと、前輪が瞬間的にかきむしるような素振りを見せるほどのトルクだ。また、車重もこのボディサイズにしては印象的なほど軽く、新しいシビックはシャシーだけでなく、動力性能でも欧州なら“GTI”と名乗っても不思議ではないほどのスポーツモデルである。 1.0リッター3気筒ターボも望まれるそんな日本仕様シビックの価格は265~280万円強。額面だけ見ると国産Cセグメントとしては明らかに高額だが、GTIレベルの性能で、しかも安全デバイスを含めてナビ関連以外は最初からほぼフル装備状態であることを考えると、内容的には割高ではない。 こういうラインナップになっているのも、さすがに7年2世代ぶりのシビック復活とあって、まずは様子見といった部分も大きいからだろう。1.5リッターターボ(とタイプR)のみなのも「今どき日本でシビックを欲しがるのは、かなりの走りマニアにして、コアなホンダ好き」と定義したからだし、メーカーオプションの選択肢をほとんど用意しなかったのもハッチバックが輸入車であることも含めて、当初は大量販売を見込んでいないからだ。 まあ、それでもシビックを復活させてくれたことには、クルマ好きのひとりとして歓迎の拍手を送りたい。しかし、あえていうと、今どきの1.5リッターターボのCセグメントがスポーティで速いのは当たり前。シャシーもおそらく国産車では圧倒的にトップの能力といっていいが、シャシー性能だけでクルマを選ぶ人も少ない。このクラスで300万円近い選択肢しかないのは、やはりハードルが高い。 シビックはグローバル商品だけに、これ以外にも魅力的なバリエーションがある。たとえば欧州などで販売されている1.0リッター3気筒ターボだ。これは日本ではまだ見ぬ最新鋭ダウンサイジングエンジンで、自然吸気1.8~2.0リッター相当の性能をもち、6MTだけでなく2ペダルのCVTの用意もある。 この立派なボディが1.0リッターで軽々と走るとあれば、1.5リッターのスポーツモデルよりインパクトはずっと大きい。シビックが日本でも本格復権するとすれば、この1.0リッターターボのようなモデルもきちんとラインナップされて、それが販売の主力になってこそ……だろう。 スペック(ハッチバック)【 シビック ハッチバック(CVT) 】 【 シビック ハッチバック(MT) 】 スペック(セダン)【 シビック セダン(CVT) 】 |
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