見た目は明確なキープコンセプト2000年に初代X5を発売したBMWは、プレミアム・ブランドのなかで真っ先にSUVを世に送り出したメーカーであり、ブームの火付け役ともいえる。だが、SUVは一過性のブームではなかったようで着実にシェアを伸ばし続け、いまでは乗用車のメインストリームになろうかという勢いだ。BMWがSUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)ではなくSAV(スポーツ・アクティビティ・ヴィークル)と呼ぶXシリーズも、いまではBMW全体の1/3を占めているという。 そのXシリーズのなかで中核をなすX3がフルモデルチェンジを受けて3代目となった。大型化されたキドニーグリルを中心にフロントマスクは立体感が増し、ワイドなエアイントレットなどでよりスポーティに。空力性能を意識した美しいルーフラインでエレガントなシルエットともなっているが、明確なキープコンセプトであり目新しいというほどではない。 最近はBMWやアウディ、メルセデス・ベンツなどプレミアム・ブランドを牛耳っているジャーマン3は熟成されたコンサバなデザインで王者の風格を漂わせる一方、ドイツ以外で勢いのあるボルボやジャガー・ランドローバー、レクサスなどは攻めのデザインで勝負に出ている対比が興味深い。ハードウェアにしてもドイツ一強というわけではなくなりつつあり、競争は激化してきている。 初期導入の2.0Lディーゼルに試乗とはいえX3も大きな進化をみせている。頭文字がFではなく、新たにG01というコードネームとなった新型X3は、ボディサイズは先代に比べて全長が55mm伸び、全幅は10mm広がり、全長4720×全幅1890×全高1675mmへ。わずかだが大型化されつつも、ボディにはアルミニウムやプラスティックなど複合素材を随所に採用。エンジン、サスペンションなどもアルミニウムを多用して車両重量は最大で55kgもの軽量化が図られた。 もう一つの目玉は安全機能・運転支援システムの充実だろう。ルームミラー内のステレオカメラ、前方3基、後方2基のミリ波レーダーを駆使した最新世代のドライビング・アシスト・プラスを装備している。 日本仕様にまず用意されるのはディーゼルのxDrive20dとガソリンのxDrive20i。20iは2018年2月からのデリバリーということで、今回は20dのみの試乗となった。1気筒あたり500ccで3気筒は1500cc、4気筒は2000cc、6気筒は3000ccとなる新世代のエンジンは、すでに幅広い車種で採用されている。2.0Lディーゼルもいくつかのモデルで試乗済みだが、X3ではさらに静粛性が高く感じられた。SUVはドライバーとエンジンの距離があるので、静かになるのかもしれない。 群を抜いて秀逸な8ATのドライバビリティ最高出力190PS、最大トルク400Nmというスペックはライバルに対してとくに秀でているというわけではないが、フィーリングは最良の部類。低回転域では豊かなトルク感があってディーゼルのメリットが強調される一方で、アクセルを強く踏みこんでいけば5500rpmまで軽々と回る。ディーゼルでもBMWらしい味付けがなされているのだ。 トルクコンバーター式8ATもあいかわらず素晴らしく、思い通りに加速・減速がコントロールできる。他にも優れた2ペダル・ミッションはあるがBMWとZF製8HPの組み合わせは群を抜いていて、その秀逸なドライバビリティは世界中の自動車メーカーがベンチマークとしている。おだやかに走りたいときは発進やシフトチェンジがなめらかだが、アクセルペダルをグイッと踏みこむと素早さとダイレクト感が顔をだす。Dレンジのままでもほとんど事足りるが、素早く追い越しをかけたいとき、エンジンブレーキを積極的に使いたいときなどは、シフトレバーをポンッと左側に倒してSレンジにすれば即座に適切なギアが選択される。 バイワイヤのミッションは必ずしも昔ながらのシフトノブは必要ではなく、BMWも一度はステアリングコラムレバーを採用したことがあるが、操作性の良さではやはりシフトノブがいい。パドルでもシフト操作は可能だが、多段になってくると何度引けば適切なギアになるのかわからないので煩わしい。ブラインドタッチでずぼらに手を動かすだけでDレンジとSレンジを行き来できる現在のシフトノブは、インターフェースとしても最強なのだ。 スポーティさと快適性を高次元でバランスパワートレーンの秀逸さもさることながら、磨きをかけたシャシー性能にも驚かされた。タイヤがなめらかに転がっていく感覚、スムーズなサスペンションのストローク感など、すべてが洗練されている。背が高く重量もあるSUVでしかるべく操縦安定性をもたせると、乗り心地はちょっと硬めになるのが常。ましてやBMWは駆け抜ける歓びが身上なので初代X3などはガチガチといったところだったが、今回試乗したX3はスポーツサスペンションと245/50R19のランフラットタイヤを装着するM Sportながらいやな硬さを感じさせない。 ちなみに試乗車はアドバンスポーツZ.P.Sを履いていた。ヨコハマタイヤがBMWに標準装着されるのは初めてのこと。他と比べたわけではないので断言はできないが、今回の試乗では十二分なしなやかさと静粛性を備えていた。 ワインディングを元気に走らせればBMWらしい痛快なハンドリングが味わえる。ステアリングを切れば切っただけノーズが素直にインへ向き、狙ったラインをぴたりとトレースしていく。タイトコーナーでもクルリと回り込んでいく感覚があってSUVだということを忘れてしまうほどだ。 ポルシェ・マカン、ジャガーFペイスあたりが、スポーティさではライバルとなるが、一体感の高さ、しっとりとしていていつまでも走りたくなってしまうステアリングフィールの良さなどはBMWならでは。一度このハンドリングを味わってしまうと簡単には浮気できなくなってしまう。ただし、同日に5シリーズや3シリーズなども走らせたのだが、低全高ゆえにハンドリングで得られる歓びはより濃厚だということも再認識した。SUVの進化は凄まじいが、それでもまだセダン系に優位性があることはお伝えしておきたい。 それにしても近年のBMWの乗り味は洗練されてきわめて上質になった。その昔はスポーティさと引き替えに硬くてゴツゴツしていたものだが、そんな我慢はまったく必要なくなったのだ。逆に長年のライバルであるメルセデスは、スポーティ志向を採り入れてお互いが歩みよっているようにも思える。良きライバル関係で高めあっているからこそ、スポーティさと快適性を高い次元でバランスさせている。ドイツ以外のライバルの追い上げも激しいが、新型X3に乗ってみると、その実力の高さに改めて脱帽させられるのだった。 スペック【 BMW X3 xDrive20d Mスポーツ 】 |
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