独特の雰囲気を放つスクエア気味のフォルム最近は新しいボルボに試乗するのが楽しみで仕方がない。多くのブランドとハードウエアを共有していたフォード傘下時代にも、ボルボならではの個性が盛り込まれてはいたが、2016年発売のXC90以降の新世代商品群は大きな投資を受けてボルボがボルボのために念入りに開発したプラットフォームとパワートレーンによって、見違えるほどの乗り味を見せるようになったからだ。 以前は、プレミアムカーを牽引するドイツ勢に対して、サイズや価格を少しずつずらして買い得感を演出しているような面も見受けられたが、いまは完全にガチンコ勝負。走りの実力では肩を並べ、北欧ならではのデザインではリードさえしている。そんな中でデビューを果たしたのが、新世代商品群のコンパクト・セグメント第一弾となるXC40。XC90やXC60は素晴らしいモデルではあるが、それらが身近なモデルでも引き継がれているのか大いに期待しての試乗にのぞむこととなった。 スペイン・バルセロナの明るい陽光の下で対面したXC40は、兄貴分たちが落ち着いているのに比べると見るからに楽しげで若々しかった。サイドウインドー・グラフィックは後端に向かって跳ね上がり、ドアパネル下部の彫刻刀で削り取ったような凹面とともにアクティブな雰囲気を醸し出している。30代の若手が中心となってデザインしたということもあって、ツートンカラーの設定や運転席側ドアのちょっと前、ボンネットの切れ目に小さなスウェーデン国旗をあしらうなど遊び心もにくい。 ターゲット・ユーザーは若者および若者の心を持ったオジサン・オバサン、つまりはヤングアットハートであれば年齢層は問わない。ちなみにボルボでは3つのシリーズのイメージを紳士靴にたとえていて、90シリーズはフォーマルな黒の高級革靴、60シリーズは少しカジュアルに茶色のバックスキンの革靴、そして40シリーズはプレミアムなスニーカーとのこと。たしかにXC40はお洒落な街並みや気持ちのいい自然のなかを駆け出したくなるようなイメージがある。 それと同時にCセグメントとしてはずいぶんと立派で何やらユニークなカタチをしていることにも気付く。ボディサイズは全長4425×全幅1863×全高1652mm。BMW X1やアウディQ3、メルセデス・ベンツGLAなどといったライバルに比べて、全長は同等かやや短いぐらいだが、全幅は広く、全高は高い。短くて幅広というスクエア気味のフォルムが、他にはない独特の雰囲気を放っているようだ。 新たにCMAを採用。随所にミニバン並みのユーティリティも90/60シリーズのプラットフォームはSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)だったが、40シリーズには新たにCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)を仕立ててきた。フロントアクスルからAピラー付け根あたりまではフィックス(共通化)とし、それ以外はモデルごとにフレキシブルにするというコンセプトは同様。SPAのモデルはフロントサスペンションがダブルウィッシュボーンでリアのマルチリンクにはリーフスプリングを採用していたが、CMAはフロントがマクファーソンストラット、リアはマルチリンクだが一般的なコイルスプリングとなる。エア・サスペンションの設定はないが可変ダンパーのFour-Cはオプションで用意される。 現在のボルボのエンジンはすべてを直列4気筒2.0L以下に集約するというDrive-Eコンセプト。ガソリンはターボにスーパーチャージャー、電気モーターなどを組み合わせることによってパフォーマンス違いを用意。ディーゼルは1種類となる。まずラインアップされたのはガソリン・ターボのT5(最高出力247PS/5500rpm、最大トルク350Nm/1800-4800rpm)とディーゼル・ターボのD4(同190PS/4000rpm、同400Nm/1750-2500rpm)の2種類となっている。 いまのボルボの強みの一つであるインテリアは、兄貴分たちと同様にスカンジナビアン・デザインを感じさせてくれる。センターコンソールを運転席側へやや傾けたり、ステアリングの握りが太くなっているなどドライバーオリエンテッドな面がXC40の特徴。面白いのは、ティッシュボックスがすっぽりと収まるグローブボックス、ドア内蔵のスピーカーを通常の位置からずらして大容量としたドアポケットなどユーティリティに大いに気を使っていることだ。ラゲッジルームも使いやすくフックまで付いている。まるで日本のミニバンや軽ハイトワゴンのようだが、ここにも若者が開発の中心を担った効果が表れている。 快適性とスポーティ性が見事にバランスしたT5もっとも関心が高かったのがCMAの乗り味がSPAに対して劣ってしまうのかどうかということだったが、結果的には初出のわりに完成度が高く、しかも大いに満足のいくものだった。試乗したのはT5 AWD R-DESIGNとD4 AWD モメンタム。前者はスポーツ・サスペンションに20インチ・タイヤ、後者はスタンダード・サスペンションに19インチ・タイヤの組み合わせだった。 まずはT5で走りだしたが、想像していたよりもずっとしなやかだった。フロントサスペンションはダブルウィッシュボーンではなくマクファーソンストラットだが、適度にストローク感があって兄貴分たちに比べても遜色ない洗練された乗り味を提供する。路面の大きな突起を乗り越えてもきつい突き上げに見舞われることなく、それでいてダンピングが効いているので上下動が後にひくことのないスッキリとした乗り味だ。 コーナーではステアリングの切り始めからレスポンス良くノーズが反応。スポーツカーのように切れ味が鋭いというほどではないが、じつに素直でドライバーが狙ったラインにのせていきやすいのだ。サスペンションはジワリジワリとスムーズにストロークしていき、動きの予測が立てやすい。快適性とスポーティ性のバランスは見事だ。 シャシー担当のエンジニアにどういったセッティングを狙ったのか質問したところ「とにかくコントローラブルであることを狙いました。硬くてピッピッと動くような見せかけのスポーティさではなく本当の一体感を味わえるように。ですから楽しいのに乗り心地も悪くはないはず。とくにR-DESIGNはそれが上手く表現できていると思います」とのこと。 20インチの大径タイヤをきっちりと履きこなしていることには感心させられたが、ボルボは新世代商品群となってから承認タイヤを取り入れていることも功を奏しているのだろう。サイドウォールには”VOL”のマークが誇らしげに入っている(ちなみにBMWは星のマーク、メルセデスはMO)。 XC40では2Lガソリン・ターボのT5がベストマッチかEPS(電子制御パワーステアリング)はアシスト量の大きいラックアシスト式だけあって操舵力が軽めながらインフォメーションが確か。チープなEPSにありがちなカクカクとしたコギングのような感触はなく滑らかで高級感がある。センター付近のわかりやすさ、微舵領域での反応なども申し分ない。ざらついたロードノイズがやや耳に付くこともあったが、20インチ・タイヤとしては妥当なセンではある。その他のエンジン・ノイズなども含め、静粛性に関しては兄貴分たちのほうが若干有利かもしれない。 D4に乗り換えるとロードノイズが減り、乗り心地にはさらにマイルドさが加わって快適そのものだった。コーナーでの振る舞いにも不満はないが、R-DESIGNの適度に活発なハンドリングのほうがXC40のキャラクターにはあっているようだ。 エンジンに関してはすでにお馴染みのものなので多くは語らないが、低回転域からトルクフルなD4はやはり日常使いには優れていると感じた。だが、T5もまったく悪くなく、XC60で乗るよりもずっと良く感じられた。150kgほど軽いからか、低回転域からターボのもたつきを感じづらく、ドライバビリティがいいのだ。しかも高回転域まで伸びやかでスポーティ。ノイズも耳に付きにくいので、XC40ではT5がベストマッチなのかもしれない。 XC90やXC60などボルボの新世代商品群に惹かれてはいるものの、サイズや価格などで二の足を踏んでいる人にとってXC40は理想的な存在だろう。人によっては横幅がやや広いのがネックになるかもしれないが、デザインや質感、乗り味などはコンパクト・セグメントだからといって手抜きされてはいないので期待していい。日本へは2018年の6月前後にまずT5 AWDから導入が始まる。その後、180PS程度のガソリンのFFがエントリーモデルとして追加されるようだ。 D4については残念ながら未定。3気筒のT3は本国でも1年以上後にならないと発売されないが、日本に導入される可能性もあるようだ。また、2019年以降になるが48VのマイルドハイブリッドやEV(電気自動車)も追加される。日本は電動車両の有望市場と見られているから、こちらの導入にも期待したい。 スペック【 ボルボ XC40 T5 AWD R-DESIGN 】 |
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