今回ドイツに並び、次でドイツを越える!?「今回で欧州のトップブランド並みに持ってくる! 次はぶっちぎる!! と言う目標を立ててやってます。今回僕は凄く無謀なことをやってます」 ひさびさ強烈なカリスマ節を聞いた気がしましたわ。それもホワイトボード付きで。そう、かつて「ニュルでポルシェをぶち抜く!」と仰天予告をした日本が誇るカリスマエンジニア、日産「R35 GT-R」元開発トップの水野和敏さんだ。今や専門誌やネットメディアでも引っ張りだこで、独自理論が大爆発中だが、やっぱり生で聞くと刺激的だし、特に自ら開発中のクルマ話は興味深い。 そう、水野さんは2013年に日産自動車を退社後、韓国ヒュンダイ行き? すわ、中国メーカーに!? という噂もあったがビックリ仰天、台湾の裕隆グループが立ち上げた自動車ブランド「LUXGEN(ラクスジェン)」に入社。それも開発会社「華創車電技術中心(HAITEC)」の副社長にいきなり就任。現在、SUVの「U7」「U6」「U5」、ミニバンの「M7」、セダンの「S5」やコンパクトの「S3」などすべての車両開発を任され、日本の厚木に事務所も置き、台湾と往復する日々。GT-R 1車種以上に、メーカー全体の開発を任されてると言っていい。 今回ラッキーにもラクスジェン(納智捷汽車)総経理の蔡文榮(ツァイ・ウェンロン)さんを直撃できたが、ラクスジェンは台湾オリジナルで2009年に始まったばかりのメーカー。聞いてビックリだが、ボディに加えてエンジンまで完全独自開発&生産中で、去年台湾でシェア4%の2万台、中国大陸で10万台を発売。「2023年に中国で20万台」の目標をブチ上げ、中東進出まで検討している。 そもそも裕隆グループは台湾で日産&三菱車のノックダウン生産&販売をする大グループ。これらを合わせたシェアは約25%で、自社ブランド成功はやっぱり悲願なわけだ。 キモは台湾&日本のいいとこどり開発!そこでキーになるのが水野さんの豪腕と日本の開発パワーで「日本の自動車開発技術、サプライヤー技術に、台湾の電子技術、生産性を合わせたら物凄いものが作れる」という“東アジア開発圏”なる理論が今回のキモ。 実際、水野さんはラクスジェンの開発・改善の舞台に大分阿蘇のオートポリスを選んでいて「ここならアップダウンやヘアピンがあったり、レイクサイド路で乗り心地やロードノイズ、ハンドリングのザラザラなどあらゆるものが見える」とか。 そのほかエンジン開発は日本のレーシング界で知られた「東名エンジン」、タイヤは日本の「ブリヂストン」、鍛造ホイールは「レイズ」、サスペンションはドイツの「ビルシュタイン」と共同で行い、ビルシュタインは阿蘇のガレージの中にショックアブソーバーを作れる設備まで作り、ブリヂストンもトラックに500本ほどの試作タイヤを持ち込み「転がり抵抗がEVより少なく、サーキットも走れて、雪道まで走れるオールシーズンタイヤを専用で作ってる」とか。水野さん曰く「GT-Rより二歩も三歩も進んだ開発体制を作っちゃってる」そうな。 待ってました! 今回も新・水野理論が炸裂で、今回はラインナップの中でも核となるU6の“ドイツ車に並ぶ”マイナーチェンジモデルに試乗させてもらったわけだけど、ここでもやっぱり新水野理論が大爆発! 1つ目は「FFの1.8リッターSUVで、4WDの2リッターSUVを越える」理論で、試乗ライバルに「BMW X1」や「アウディ Q3」の4WDモデルを持ってきてFF 1.8L直4のU6と直接比較。 2つ目は「クルマの性能で最も大切なのは0-100km/h加速」理論。実際、良いタイムを出そうとしたらピークパワー以上に低回転トルクが必要で、そうすることで「加速性能と低燃費」が同時に稼げるとか。で、実際、新型U6の速い方の「GT220」は7.5秒で2リッター4WD並みらしい。ふむふむ、そんなにいいんかいな。 3つ目は「出来の悪い直噴ターボよりMPI(マルチポートインジェクション=従来型のポート噴射インジェクション)ターボの方が良い」理論で、水野さん曰く直噴ターボで尊敬できるのはメルセデスのみで、「後はほとんどガソリンが空気と十分に混ざる前にツブのまま蒸し焼きになって黒鉛が出てる」とか。そのため今回のマイチェンU6の1.8リッターターボはあえてポート噴射のままで、その範囲できっちりパワーと燃費を出しているそうな。 確かにその爽快な走り味にはビックリ!肝心のマイチェンU6だけどオートポリスで乗ったのは1.8Lターボ搭載の「GT」ととハイパワー版の「GT220」の2モデル。ざっくり言うと全長4.6m級のFFミディアムSUVだがデザインはさすがに難しいものがある。 なにしろ生まれて10年弱の台湾ブランド。どんなにカッコ良くてもBMW、メルセデスの蓄積されたプレミアム感はないし、歴史はまだまだこれからなのだ。 そういう意味で冷静に見ると今回のマイチェンで、主にグリルや樹脂回りが変わってイマ風にはなった。以前に比べ、造形が緻密になり、メッキ類が派手になり、特に大きく変わったのがグリル下のバンパーの開口部でアウディではないけど6角形化している。 リアも窓下のガーニッシュに「LUXGEN」と大きなロゴが入ったし、全体にプレミア感漂う水平基調になった。ボンネットにも小さくエアアウトレットが付いている。 一方気になったのがインテリア。専用開発された大柄のバケットシートはかなり頑張っている。座り心地もホールド性もいい。が、インパネ全体の樹脂パーツの質、チリ段差、精度はドイツ車はもちろん日本車にも負けている。水野さんも言ってたが「まだまだこれから。だけど台湾では日本車を組み立ててるし、日本系サプライヤーもいるから大丈夫」だそうで新型に期待でしょう。 サーキットでも安定した走りは流石の水野ブランド肝心の走りだが、こちらにはビックリ。正直、FRのBMWが持つ直進状態から切り込んだ時のステアリングのシャープさや精度感、アウディほどの全体の剛性感、カチッとしたブレーキフィールはない。 だけどエンジンは「これが1.8Lターボかよ?」と思うほど下からトルクが出て、上まで爽快に回る。馬力にしてU6GTが32psアップの202psで最大トルクが32.6kgm、新たに追加されたU6GT220だと52psアップの222ps、最大トルクが33.6kgmってのは凄い。特に低回転の太り方は歴然で、旧型と比べるとエンジン排気量変わったでしょ? と思うほど。 実際、東名との共同開発でヘッド回り、ピストン、イグニッション、プラグまで全部新規開発で「変わってないのはエンジンブロックだけ」。その効果はデカい。 さらにビックリなのはFFとは思えない自然な走りだ。これまたボディは剛性を補強しているだけでなく、サスペンションはほぼ総取っ替え。正直、普通のFFミディアムSUVでフルパワーをかけてコーナーを立ち上がると、タイヤが腰砕けのようになり、驚くほどトリッキーなアンダーステアを発生するものだがU6はそれがない。全体にはアンダー傾向だが、「どこからタイヤ限界が出たの?」と思えるほど動きは自然。サーキットを全開で走っても恐くない。 それはブレーキもだ。当日のテストで全長約4.7kmのオートポリスを何10周もしているのに、小沢が乗り換えてもへこたれない。部分的な味ではまだまだ欧州プレミアムに足りないところは多いが、普通のFFターボのSUVでここまで安心してサーキットを攻められるとは思わなかった。 実際、水野さんの狙い所はそこで「欧米の2Lターボ4WDは500万円~600万円。だけどラクスジェンは300万円~400万円」。要するに欧米テイストのSUVを、台湾や中国価格で出すのが今回の成功の方程式なのだ。加え、台湾のIT技術は大したもので、今回のU6もスマホゲームのポケモンGOの如く、実写映像とバーチャル映像を合わせてモニターに映す新世代AR技術を搭載。これまた1つの台湾車アドバンテージとなる模様。 残念ながら当分日本での販売はないが、水野パワーが台湾や中国でどこまで通用するのか目を離せない。なにより数年後に出るはずの「水野パワー100%投入ラクスジェン」に早いとこ乗ってみたいものなのであーる。 スペック【 U6 GT 】 【 U6 GT 220 】 |
GMT+9, 2025-6-24 03:48 , Processed in 0.052171 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .