燃費はマイルドハイブリッドの27.4km/Lに対して32.0km/Lスズキ・スイフトにハイブリッドモデルが加わった。こう書くと、「スイフトのハイブリッドは、すでに存在しているはず」と思われるかもしれない。少し紛らわしいけれど、すでにマイルドハイブリッド仕様が存在しているスイフトに、7月よりフルハイブリッド仕様もラインナップされるようになったのだ。スズキのラインナップを見渡せば、すでにソリオにはマイルドハイブリッドとフルハイブリッドの2種のハイブリッド車が設定されている。 試乗した感想を書く前に、マイルドハイブリッドとフルハイブリッドの違いを簡単に説明しておきたい。どちらも1.2L NA(自然吸気)エンジンをベースにする点は同じだが、まずトランスミッションが異なる。マイルドハイブリッドはCVT、フルハイブリッドはスズキがAGSと呼ぶシングルクラッチ式ATと組み合わされる。 モーターをはじめとするシステムにも違いがあり、マイルドハイブリッドはIGSと呼ばれるモーター機能を備えたオルタネーター(発電機)でエンジンをアシストする。一方、フルハイブリッドはMGUという駆動用モーターを搭載。エンジンのアシストを行うほか、モーターの駆動力だけで走るEV走行も可能となる。ちなみに、フルハイブリッドもIGSを備えるが、マイルドハイブリッド用とは若干機能が異なり、主にアイドリングストップ状態からスムーズかつ静かにエンジンを始動する場面で活躍する。 ざっくり言えば、フルハイブリッドのほうがモーターの存在感が大きくなる。結果、マイルドハイブリッド仕様のJC08モード燃費が27.4km/Lであるのに対して、フルハイブリッド仕様は32.0km/L。今回試乗したハイブリッド SL(フルハイブリッド/FF)が194万9400円。試乗車と同じ運転支援装置を備えたハイブリッド ML(マイルドハイブリッド/FF)が172万1520円。フルとマイルドの価格差は、ざっと約22万円といったところ。 AGSの弱点が補われ、加速感はスムーズで上質今回試乗したのは、単眼カメラ+レーザーレーダーを組み合わせた運転支援装置を標準装備する上級グレード、スイフト ハイブリッド SL。自動ブレーキ機能や車線逸脱警報機能といった安全装備を搭載している。 ハイブリッドシステムを起動して、試乗スタート。発進加速は力強い。メーターパネルの回転計と速度計の間に位置するマルチインフォメーションディスプレイを確認すると、エンジンとモーターが力を合わせて車体を押し出していることがわかる。軽快な発進加速には、エンジンとモーターの連携プレイのほかに、960kgという軽量ボディも寄与しているはずだ。 ここで一旦停止。スイッチを押して、走行モードを標準モードからエコモードに切り替えて、もう一度発進加速を試す。すると、ブレーキペダルから足を放し、アクセルペダルも踏まないクリープの状態では、モーターだけでEV走行になった。ここでアクセルペダルを踏み込むと間もなくエンジンも始動して、ハイブリッド走行となる。ここでのエンジンの始動は意地悪く観察しなければわからないほどナチュラルで、このあたりのチューニングは丁寧に行われているという印象を受けた。 市街地を走りながら気がついたことは、このハイブリッドシステムは燃費だけでなく、スムーズな加速感の獲得にも貢献しているということだ。マニュアルトランスミッションのクラッチ操作とシフト操作をコンピュータ制御するAGSは伝達効率に優れ、CVTより軽量かつコンパクトにできるというメリットがある。一方で、シフトアップする時の変速の遅さや、変速時にギクシャクするという弱点も抱えていた。 ここで、フルハイブリッドが搭載するMGUが活躍する。MGUはトランスミッションを介さずにダイレクトに駆動輪に力を伝える。そこでシフトアップ時、エンジン側からのトルク/パワーの供給が途切れた際に、モーターの力を伝えて補うのだ。よって、スイフト ハイブリッドの加速感はスムーズで上質なものとなった。 ハイブリッド車であることを忘れるくらいナチュラル高速道路に入ってもハイブリッドシステムの連携プレイは快調で、本線への合流時にアクセルペダルを踏み込むと、エンジンをモーターがアシストしてスーッとスピードが上がる、気持ちのいい加速感が得られる。速度が80km/h以下の時にアクセルペダルから足を放すとエンジンが停止する。エコモードに入れると、エンジンが停止する頻度がさらに増した。 こうした一連の流れはナチュラルで、発進加速でEV走行をする場面以外は、自分がハイブリッド車を運転していることを忘れるほど。人によっては、「高額の買い物なのだから、ハイブリッド車を運転しているという“スペシャル感”がほしい」と思われるかもしれない。ただし、ハイブリッド車であることを忘れるくらい、ハイブリッドシステムの連携がよく練られているということでもある。 登り坂で顔を出すシフトアップ時の変速遅れハイブリッドシステムとともに完成度の高さに感心したのは、操縦性と乗り心地がバランスしたシャシー性能だ。タウンスピードでの乗り心地はやや固め。マンホールや路面の不整から生じるショックを比較的ダイレクトに伝える。けれどもそれを不快に感じないのは、ボディがショックをきっちり受け止め、車体の揺れがすぐに収束するから。辛口であるけれど爽やかな乗り味だ。 高速道路で速度が上がると、フラットな姿勢を保つ美点がさらに強調される。速度が増すごとに快適性も増すあたり、欧州車っぽい味付けだと感じた。もうひとつ、ステアリングフィールも良好。タイヤがどこを向いているのか、路面がどうなっているのかが、ステアリングホイールの手応えで理解できる。ワインディングロードでのハンドリングも小気味良い。安定した姿勢を保ちながら、思うように向きを変えるから、エンジンとモーターの好連携もあって、楽しく、パワフルに走ることができた。 ひとつだけ気になったのは、「登り坂+低スピード」という条件で顔を出すシフトアップ時の変速の遅れ。1速から2速へのシフトアップで、看過できないくらい間が空くのだ。恐らく、MGUによるアシストが追いつかないのだろう。試乗したのが富士山の山麓で急勾配の登り坂が多かったことは、スイフトのハイブリッドにとってはやや不幸だった。 バラエティ豊かなスイフト。次の楽しみはスポーツ「登り坂+低スピード」の場面を除けば、運転して楽しく、乗り味に上質さも加わったスイフト ハイブリッドに好印象を抱いた。ただの実用車の域を超え、クルマや運転が好きな人の心にも響くモデルだと考える。贅沢を言えば、インテリアにもう少し上質さや遊びがあれば、大人のクルマ趣味にふさわしいコンパクトカーになるはず。コストとの兼ね合いになるのは理解しているけれど、そこまで期待したくなるほど出来映えに感心したということだ。 それにしても、スイフトのラインナップを見ると驚いてしまう。トランスミッションは5MT、CVT、5AGS、6ATの4種。原動機も1.2L NA、同マイルドハイブリッド、同フルハイブリッド、1L直噴ターボの4種と、バラエティ豊かだ。ちなみに、フルハイブリッドの「HYBRID」のエンブレムが黒地に白字であるのに対して、マイルドハイブリッドは白地に青字。オーナー以外は、識別は困難だろう。 てっきり、フルハイブリッドの登場によってマイルドハイブリッドは姿を消すと想像していたけれど、当初から“マイルド”と“フル”は両立させる予定で、つまり今後も併売されるという。価格や燃費、動力性能など、ユーザーには実に幅広い選択肢が用意されることになる。 9月のフランクフルトモーターショーではスイフト スポーツも発表されるから、スイフトの購入をお考えの方は、どれを選ぶべきか眠れない夜が続くだろう。 スペック【 スイフト ハイブリッド SL 】 |
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