街乗りメインだけどSUVが欲しいという方へマツダCX-3が一部改良を受けた。トピックはガソリン(レギュラー仕様)モデルの追加だ。2015年の発売当初、ディーゼルモデルのみに絞ることでCX-3をある種先鋭化させたマツダだが、とはいえ台数も欲しいということで、ざっと30万円安いガソリンモデルを追加した。軌道修正であることは間違いないが、ここ数年でコンパクトSUVカテゴリーの乗用車市場全体に占める割合が同社(ならびに全自動車メーカー)の予想を超えて大きくなったため、CX-3の担うべき役割が増えたということでもあるようだ。 ディーゼルと新たに加わったガソリンを数値で比べると、1.5リッター直4ディーゼルターボは最高出力105ps/4000rpm、最大トルク27.5kgm/1600-2500rpm、車両重量は1250~1340kg。対する2.0リッター直4ガソリンは同148ps/6000rpm、同19.6kgm/2800rpm、車重は1240~1300kg。ディーゼルのほうが重いが、その差はFWDで30kg、4WDで40kgにとどまる。 ディーゼルの力強さか、ガソリンの息の長い加速かそれぞれのエンジンがもつ特性が典型的に出ていて、好みが分かれるところだろう。低い回転域に大きなトルクが凝縮されているディーゼルは、グイッと力強い加速を得られるが、その加速はほどなく頭打ちとなる。これに対し、ガソリンはディーゼルほど力強い加速は得られないが、高回転まで回り、息の長い加速を味わうことができる。 一般的にディーゼルは緩い加速時に反応が大味になりがちだが、マツダのディーゼルにはDE精密過給制御というひと工夫が入っていて、アクセル操作にかなり忠実なレスポンスが得られるので、その点でのガソリンの優位性をあまり感じない。 高速巡航時はホントにディーゼルの方が静かディーゼルのもうひとつのネガであるガラガラ音も、ピストンピン(ピストンとコンロッドをつなぐ軸)に制振装置を組み込んで原因のひとつである共振を減らしてあるので、マツダのは静かなのだ。ガソリンがガソリンにしてはさほど静かではないこともあり、どっちか当てようとせずに運転席以外に乗ったらどっちかわからないのではないか。 高速巡航時は回転が低い分、むしろディーゼルのほうが静かだ。これを人に言うと、時に「そうなんですかぁ」といかにも話半分で聞いている雰囲気が伝わってきて気分を害するのだが、ホントにそうなのだ! 重量差が30~40kgに過ぎないこともあって、ハンドリングの面では差を感じなかった。 年1万キロ走った場合の燃料代の差は約3万円ところで、ガソリンモデルは日本車として初めてWLTC(世界統一試験サイクル)モード燃費の認可を取得した。冷機状態での走行割合を増やし、アイドリング時間を減らし、運転者以外の重量物を考慮するなど、これまでで最も現実的な使い方に近いとされるモードであると同時に、海外メーカーも原則として同じモードを使って計測するため、比較が容易になることが期待されている。 当然ながら、JC08モード燃費よりもやや厳しい値が出がち。新モードでのガソリンCX-3の燃費はFWDが16.0km/L、4WDが15.2km/Lとなる。加えてガソリンCX-3は、平成30年排出ガス基準の75%低減を実現し、5つ星を獲得した最初のクルマでもある。ま、これは単にタイミングの問題だが。 ディーゼルモデルはまだJC08モードしか認可を取得していないため、参考までにJC08モードのAT同士で燃費を比較すると、ディーゼルが23.0km/L(FWD)/21.0km/L(4WD)なのに対し、ガソリンは17.0km/L(FWD)/16.6km/L(4WD)。ガソリン価格比較サイトのgogo.gsによると、8月14日時点での燃料の全国平均価格は軽油が105.3円、レギュラーガソリンが127.5円。これをベースに年間1万km走行した場合の燃料代を比較すると、ディーゼルが4万5782円、ガソリンが7万4999円となる。その差2万9217円(FWDの場合)。 20万円の価格差を埋めるには7~8年かかる車両価格はディーゼルのほうが27万~31万8600円高い。ただディーゼルはエコカー減税およびグリーン税制を適用されるため、実質価格差は20万円弱となるだろう。それにしたって年間1万km走行程度では、燃料代でディーゼルが元を取るには7~8年かかる。これをどう考えるか。 僕ならば年1万km以上走行するし、常用域での体感的な力強さに価値を感じるし、音と振動も気にならないから「ディーゼル」を選ぶ。それにこの価格帯なら一括払いか、ローンを組んでも頭金の割合を大きくするだろうから、購入費が高く、維持費が安いという理由からもディーゼルを選ぶ。購入費が高いのは忘れるけれど、維持費の高い安いは毎月ジワジワ感じ続けるから。 数年後の下取り価格差が購入価格差と同程度についてくれればラッキーだ。しかし走行距離が少なく、スタイリングが好きで選ぶのであって、走行特性にさほどこだわりがないというのであれば「ガソリン」を選ぶのも、もちろんあり。両方試乗して決めるべし。選択肢があるのはいいことだ。 廉価グレードでもサポカーS・ワイドに該当最後の最後で話は変わるが、経産省と国交省は高齢運転者の事故防止、被害低減を目指す対策の一環として、自動ブレーキと誤発進抑制装置を備えたクルマをセーフティ・サポートカーS、略して「サポカーS」と呼ぶことを17年4月に決めた。 サポカーSは作動速度域が30km/h以下の自動ブレーキと誤発進抑制装置を備える場合は「ベーシック」、30km/h超でも作動する自動ブレーキと誤発進抑制装置を備える場合は「ベーシック+」、歩行者も検知する自動ブレーキをはじめ、誤発進抑制装置、車線逸脱警報、先進ライト(ハイ/ロー自動切り替え式もしくは配光可変式)を備えるものを「ワイド」と分類する。 マツダは17年度中に主要5車種に先進安全技術「i-ACTIVSENSE」を標準装備することを発表済みで、現時点でデミオ、CX-3、CX-5、アテンザの4車種に標準装備された。そしてこれら4車種がサポカーSの「ワイド」に分類されている。自動車メーカーはこうした装備を廉価グレードではオプションまたは設定なしとし、スターティングプライスを低く設定しがちななか、どの車種も全グレードが該当するのは立派だ。 スペック例【 CX-3 20S Lパッケージ(FF) 】 【 CX-3 XD プロアクティブ(FF) 】 |
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