世界販売好調な新型シビックは日本で成功するか?何事も直に聞かねばわからないことってあるもんです。それはなにあろう「シビックを今さらなぜ売るのか?」の理由。不肖小沢がプロトタイプ試乗でじっくり聞いてきました。 既にコラムでも書きましたけど、ホンダは今夏ほぼ7年ぶりに“ある意味”大黒柱とも言うべき「シビック」の国内復活を決めました。ある意味と付けたのは、いわゆるコンパクトハッチバックの代名詞、シビックが今も変わらず世界じゃベストセラーでも日本ではちと違う実情があるからです。 2010年に日本で販売停止した8代目シビックの販売台数はわずか年間約9000台(2009年、2010年は8219台)。一方、グローバルでは2015年に56.5万台、2016年に67.8万台と、まごうことなき大黒柱。日本と海外、特にアメリカとじゃポジショニングが全然違うわけです。 しかも復活を決めた新型10代目は、去年アメリカを中心にグローバル展開して既に年間約67万8000台の大成功! この話なくして日本復活のストーリーは語れません。 そもそもホンダが作ったスペースと燃費の市場に今さらなぜ?今回小沢はしつこく「マーケティング的には売れそうもないシビックを今さらなぜ復活させるの?」と問いただしました。なにしろ10代目の開発テーマは「シビックの原点に立ち返って、走りと使い勝手を両立させた」と言ってるわけです。 いまどきの日本では200万円台のファミリーカークラスって「ミニバン」と「ハイブリッド」しか売れないんです。実際トップセラーは「トヨタ プリウス」だったり、影の主役とも言うべきハイブリッドミニバン「トヨタ ノア&ヴォクシー&エスクァイア」3兄弟だったりする。それこそ初代「ホンダ ステップワゴン」が切り込み、せっせと作り上げてきた燃費&スペース最優先のマーケットなわけです。 ところが10代目シビックは全長4.6m超×全幅1.8mとハンパにデカい上、乗員たったの5名で、なんとハイブリッド仕様は設定ナシ! 低燃費のダウンサイジング1.5Lターボ&CVTを組み合わせるとはいえ、北米基準で36MPG程度。換算して15km/Lぐらいと、日本市場ではスペック的に売れる要素が見つかりません。 しかし直撃した担当デザイナーの田邊淳二氏は「気持ちが先行しているかもしれませんが…」と前置きしつつこう断言しました。「狙ったのは新しいプレミアム。というのも今や東京で売れる乗用車の3割がドイツプレミアム。小沢さんも悔しくないんですか?」と。 「走りで世界を驚かす!」を地で行くハンドリングFFマシーン田邊氏や開発LPLの竹澤修氏はさらに続けました「10代目はシビックの原点に帰って本当にやりたかったことをやろう考えた」と。 具体的にはプラットフォームを完全新規でイチから開発、メイン市場のアメリカを想定したサイズやボディバリエーションを守りつつ、本気でドイツに勝てるクルマに作り上げた。要はハッタリ抜きの味と走りのガチンコ勝負。どうやらソイツが「良いモノを作れば売れる」という“新ホンダ理想主義”であり、あえてマーケティング無視の戦略となったようなのです。 実際小沢は今回まずスポーティな1.5L直4ターボのハッチバックにサーキットで乗りましたけどマジでビックリ。ハンドリングが異様なレベルで、ステアリングが切れる切れる。しかもその切れ方がタイヤを路面に無理やり接着剤でくっつけたようなレベルで物凄い。 しかもコノ手はいくらスポーティと言っても大抵アンダーステアなんですが、いきなり1コーナーにオーバースピード目で飛び込んでったらリアがグイっと出る。もちろん滑り方はスムーズでしたけど、確かに実用ハッチどころか「BMW ミニ」をも超えたスーパーハンドリングFFマシーン! ついでに乗り心地はそれでいてしなやかでボディ剛性は岩の様。1.5L直4ターボもハッチはセダンより9ps増しの182psでCVTとは思えないダイレクト感もあって、彼らが「走りで世界を驚かす!」と言い切るのも納得のレベル。 最初からタイプRまで想定して共通シャシーをゼロ開発お次はハッチより大人しめとはいえ、同じ1.5L直4ターボで173psを発揮するセダンに乗りましたけどこっちもかなり凄い。ハッチほど路面に吸い付く感覚はないものの、ビックリするほど曲がって楽しくパワフル。これにアメリカ人が喜ぶのも納得かもしれません。 実際、今回開発陣が「欧州基準で作った」というのは、具体的には「ハッチバックとセダンとタイプRを最初から想定して作った」シャシー&ボディです。タイプRまで最初から眼中に入れていたおかげで、今までにないレベルのボディができた。それは本当なのかもしれません。 とはいえ小沢的にはやはり見た目と質感がちと疑問です。まずその「今までにない画期的シルエット」ってフォルムですけど、今までにないヌメリ感とエッジ感の両立はわかるし、リアのなんとも言えないワイルドなデコレーション具合もカッコいいっちゃカッコいいんだけどこれ、日本のミニバンとか欲しがるファミリー層に本当に刺さるの? と。 それからインテリアです。これまた今までにない直線と曲線の組み合わせで、スッキリとしていつつ重厚感もあって悪くないですが、マテリアル的にVWやアウディ、BMWと真っ向張り合えるかって違うような。 ドイツ版プレミアムと大衆車の間に国産版プレミアムはあるか?ところがそう言うと「ドイツ系とはお値段が違いますから。具体的には彼らと日本の実用車の中間を狙ってるんです」というお返事。 確かにミニバンに飽きた人、もうちょっと別テイストに興味ある人に刺さる300万円前後の国産車って今ありません。そういう人は、少し無理して300万円以上のBMWやアウディ、VWを買ってるのかもしれません。あるいは高めのハイブリッドモデルなんかを。 加えてシビック開発者は言います。「事前にお客様に見せると、みんな意外といいね! って言うんです。こういうクルマが欲しかった、といわゆるホンダファンが」。 その昔ホンダのスポーツ系シビックやそれこそ日産シルビアなんかに乗ってた人がミニバンを卒業し「なんか面白いクルマないかな」と思っている。そこに新型シビックはユニークデザインもあって案外刺さりそうだと。具体的には「ホンダ社員でシビックを欲しがってる人が結構多い」んだとか。 日本じゃ売れない、は後ろ向き過ぎなのかもしれないが…実際小沢の「シビックなんてミニバンとハイブリッドしか売れない日本で売れるわけない!」 はちと後ろ向き過ぎなのかもしれません。最初から訳知り顔で「アナタは家(アメリカ)を出なくていいの。世間の荒波を渡れるわけないんだから」と箱入り娘を縛る頑固な両親であり、一時は「日本の投手なんて通用しっこない!」と野茂英雄を否定していた日本のプロ野球関係者みたいなもので。最初からネガティブ指向でマイナス面ばかりを考え、プラスを考えない。そういう部分も無きにしもあらずです。 しかしですね。アメリカで売れてる日本のグローバルカーって現実、日本市場では売れないものばかりなんですよ。今の日産「ティアナ」やスバル「レガシィ」、トヨタ「カムリ」などなど。ま、これらはちとデカすぎるサイズも問題なんですが。 シビックなんて売れるわけない! って小沢の予想、見事に外れるかもしれません。ある程度はいい感じで売れるのかもしれません。そしたらスイマセン、小沢は本気で謝りますよ。読みが甘かったと。 でも、そもそもアメリカほか世界120ヶ国以上で66万8000台も売れてるシビックシリーズ。正直、日本で売れなくてもたいして困らないんだろうなぁとか思ったりもしてるんですよね。 スペック【セダン、ハッチバックの参考スペック】 【タイプRの参考スペック】 ※すべて参考値 |
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