フルモデルチェンジでキドニーグリルはシャッター付きに今や年間生産台数200万台を超えるBMWには派生車種もたくさんあるが、メインストリームの車種も健在だ。その定番商品のひとつである「5シリーズツーリング」がセダンに引き続きフルモデルチェンジを果たした。2017年5月にBMW本社のお膝元ミュンヘン近郊で試乗してきたのでレポートしよう。 基本骨格はセダンをベースに後部に綺麗なラゲッジルームを備えたのがツーリングだ。1991年にE34型5シリーズから始まったツーリングだが、先代(F11型)からDピラーの傾きを大きくして、リヤウインドウを寝かせスタイリッシュになった。新しいツーリング(G31型)はその傾きがさらに大きくなったように見える。ツーリングは使い方も含めておしゃれなクルマだから、ユーザーのニーズに沿ったものだ。 ただし全体の印象としては先代モデルから大きく飛躍したものではない。奥さんに内緒で同色に乗り換えても気付かれないかもしれないと思うほど、新しいモデルのインパクトは弱い。嬉しいのは先代モデルのユーザーで、古さを感じないでそのまま乗ることができる。 とは言っても先代のツーリングと比べるとキドニーグリルはシャッター付きになったし、ヘッドライトのデザイン、バンパー下のエアインテークのデザインも新しい。フロントはスポーティさとパワーをイメージしているようだ。テールランプもより幅広く見えるデザインに変わっているから、決してマイナーチェンジのレベルではない。 520d(523d)と530d、2台のディーゼルモデルに試乗フルモデルチェンジだという証明はサイズの拡大だ。ドイツ本国での表示では、全長4943mm(+36)、全幅1868mm(+8)、全高1498mm(+10)、ホイールベース2975mm(+7)だから一回りとは言わないが、少しだけ大きくなっている。ただ見た目では大きくなったという印象はなくスリムなスタイルは健在である。 幅が広くなり、ホイールベースが伸びた分は後席のスペース拡大に使われた。3人乗りの後席に3脚のチャイルドシートが乗せられる。また後席足元のレッグスペースも18mm拡大している。 5シリーズツーリングのリヤサスペンションは今回もエアスプリングが採用されている。ラゲッジルームに重い荷物を搭載したときにもオートレベライザーが車高を調整してくれる。リヤゲートはガラス部分だけでも開けられる2ウェイ方式が継承されている。 今回試乗したのは2種類のディーゼルエンジン搭載車で、2リッター4気筒は「520dツーリング」(日本名「523dツーリング」)、3リッター6気筒は「530dツーリング」である。 4気筒ディーゼルエンジンは先代モデルのN47D20C型というコードネームからB47D20型へと最新型に変わっている。最大トルクは400Nm(+20)/1750-2500rpmにアップし、燃費は11%向上という。車重が100kg軽量化されているから走りも燃費も良くなっているはずだ。 直4ディーゼルは新エンジンで静粛性が大幅に向上ミュンヘン郊外のガーヒングにあるBMWプレスセンターを起点にミュンヘン南西部の大きな湖まで520dツーリングでドライブを楽しむ。まず感じたことは車内の静けさだ。静粛性は格段に向上している。ガチャついたエンジンノイズはまったく聞こえてこない。アクセルペダルを踏んだときにもモゴモゴッという感じの燃焼音か排気音が遠くで聞こえるだけだ。 新型エンジンになったからといってここまで静かになるとは驚いたが、その秘密はボディ側にあった。エンジンルームをカプセル化して音が外に漏れないようにしたのだ。キドニーグリルのシャッターも貢献しているかもしれない。さらにエンジンマウントも改良して振動が出ないようにしているが、これはアイドリングストップからの再始動での振動の小ささにも寄与している。さらにエンジンルームとキャビンを隔てるバルクヘッドにも静音対策をして音を車内に伝えないようにしているという。 5500rpmからレッドゾーンが始まるタコメーターは、Dレンジでアクセル全開にして加速していっても、4200rpmで自動シフトアップしていく。マニュアルモードで引っ張っても5000rpmまで届かない。低回転域から太いトルクが発生するから高回転まで回す必要もなければ、回しても意味がないのだ。アウトバーンでは200km/h巡行は楽だった。エンジン回転数は2800rpmで車内も静かさを保っている。カタログ上の最高速は230km/hだが、実際にはそれをオーバーするところまで試したが、風切り音も気にならない。ドイツならビジネスエクスプレスとして活躍できそうだ。 直6ディーゼルは620Nm、0-100km/h加速5.8秒5シリーズツーリングは2リッター4気筒ディーゼルで充分満足できると確信したところで、帰り道は530dツーリングに乗り換えた。3リッター直列6気筒ターボエンジンであるが、こちらもN57D30A型からB57D30型へと新型エンジンに変わっていた。最高出力は195kW(265ps)(+5kW)/4000rpm、最大トルクは620Nm(+20Nm)/2000-2500rpmというパワーとトルクを発揮できる。最高速は250km/h、0-100km/h加速は5.8秒というからそのパフォーマンスが想像できるだろうか。 確かにアクセルペダルを踏み始めたところからモリモリと湧いてくるようなトルクで押し出される感じが伝わってくる。交差点を曲がって加速するとか、ワインディングロードでカーブの立ち上がりで再加速するときにクルマの重さを感じない軽い動きなのだ。アクセルペダルを1mm踏み込んだだけでもしっかりとそれに反応するから気持ちがいい。シフトをマニュアルモードにして自動シフトアップする4700rpmまで引っ張っても室内は静かなままだし、エンジンから伝わってくる振動の少なさに驚いた。加速中は4気筒エンジンより高い音(ポンプ音?)が聞こえたが、基本的には低周波の排気音が力強さをアピールしている感じだった。さすがに長年直列6気筒にこだわってつくってきただけのことはあると改めて感心した。 高速道路での100km/h巡行では8速ATとの組み合わせでエンジンは1200rpmしか回っていないから、実質的な燃費は相当良くなりそうだ。 新しいディーゼルエンジンはアドブルー方式を採用BMWでは新しいディーゼルエンジンからは全車にアドブルー(尿素)を使ったNOx対策をすることになった。これはもうすぐ迫っている厳しい排ガス規制のユーロ6cにパスするためだ。ユーロ6、ユーロ6b、ユーロ6cと徐々に高度な排ガス処理が必要になるが、BMWでは一気にユーロ6cまで達成した。 アドブルーを使うことのメリットは、特にエンジン負荷が大きいときに発生するNOxを、アドブルーを使った後処理で無くすことができるから、パワーを制限しなくても済む。必要なときには大きなパワーやトルクを出すことができるし、レスポンスや燃費でもNOxを気にしないでパフォーマンスを発揮できる。 アドブルーはどこから補給するのかというと、燃料の給油口の横にある青いキャップを外して入れる。まずはパッシブタンクと呼ばれる13リッターのタンクに入る。これは燃料タンクのそばにある。そこからポンプでエンジンルームにある9リッターのアクティブタンクに送られる。アクティブタンクにはヒーターが付いていて、極寒時でもアドブルーを使えるようにエンジンがかかっているときにはヒーターでスタンバイしている。 ドイツでの走行パターンでは1万5000kmくらい持つらしいが、200km/hオーバーで走るアウトバーンがない日本ではもっと伸びるはずだという。アドブルーがタンクになくなったら法律上エンジンがかからないプログラムになっている。もちろん事前に知らせてくれるし、BMWのディーラーで整備していればまず問題は起きないはずだが、最悪の場合には今日本のほとんどのガソリンスタンドで入手できる。日本の大型トラックはアドブルーを使っているからだ。 ドイツと日本の販売開始の時期の差はほとんどなくなっているが、まずは523dツーリングから入荷するだろう。しかし530dツーリングの味を知ってしまったいま、6気筒のディーゼルエンジンも日本仕様として入ってくることを期待したい。新型5シリーズツーリングは、見かけの変化は最小限だが、中身の進化は目をみはるばかりの上質感、快適性を備えてきた。 MINIのPHEVは2シリーズのシステムを採用いよいよMINIにもPHEVの波が押し寄せてきた。2021年に欧州で施行されるCO2の排出ガス基準は、メーカー平均95g/kmという厳しさだから、PHEVをたくさん売らなくては達成できそうもない。 MINIのPHEVのシステムは「2シリーズ アクティブツアラー」のPHEVと基本的には同じものだ。フロントは1.5リッター3気筒ターボエンジンを搭載し、リヤは電気モーター駆動する。AWDであるがプロペラシャフトは存在しない。もちろん前後で協調制御はしているが、その動きはコンピュータ制御により最適化されている。 リヤシートの床下にある燃料タンクを小さくして空いたスペースに二次バッテリーを搭載している。走り始めは電気モーターによる後輪駆動だ。走り始めるとエンジンがかかって、その後エンジンだけで走る。この一連の動きはスムースである。 エンジンに付属しているオルタネータは大型化され、ハイボルテージのモーターにもなるので、発電だけでなくエンジンを回して駆動力を助けることもできる。カーブの立ち上がりでアクセルペダルを踏んでいったときに、エンジンの力が出る前にすっとモーターの駆動が補助してくれるし、後輪の電気モーターも力強くトラクションを発生するから、通常のエンジンのみのモデルより気持ちよく走れる。 今回のツアー後半ではスペインのバルセロナで「MINI クーパー S E カントリーマン」(日本名「クロスカントリー」)に試乗したが、普通のクルマとして評価したときにも乗りやすくていいクルマだったことを報告しておこう。 スペック【 BMW 520d ツーリング 】 【 BMW 530d ツーリング 】 |
GMT+9, 2025-6-25 10:21 , Processed in 0.295734 second(s), 18 queries .
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