完全自動運転にはどんなシステムが必要なのか?ホンダの先進技術をメディアに説明する「ホンダミーティング」というマニアックなイベントが開催されました。八郷隆弘社長も登壇し、海外のジャーナリストなども参加するビッグな催しであります。 編集の注目は“(ホンダの)自動運転技術はいまどのレベル?”です。自動運転にどんな技術が使われているのかを知るにもいい機会となったので、わかる範囲で説明してみましょう。 試乗したのは「レジェンド」に自動運転デバイスを組み込んだテスト車両。オーバルのテストコースに入って、出るまでに、2段階のレベルを体験しました。 1:本線合流前にボタンを押すとレベル2の自動運転開始 ・・・試乗自体は最近よくある自動運転のそれで、テストコース内ということもあり、車両の動きはスムーズで安心感のあるもの。途中、遅いクルマを車線変更して追い抜くシーンも違和感はありません。 テスト車には自動運転のための下記のシステムが搭載されていました。 自動運転はレベル2→レベル4の順番で進化する!?それぞれのシステムはどう使われるのでしょうか。まずは高精度な地図と、カメラやセンサー類がリアルワールドから得た情報をすり合わせて、自車位置や周辺環境を正確に認識し、ステアリング・アクセル・ブレーキを操作して走ります。クローズドのテストコースで予定されたコースを走る程度であれば、レベル2(ハンズフリー)は楽勝といった感じです。 問題はここから。例えばレベル2では監視や運転の責任はドライバー側にあるから、システムが運転不可能な状況になったとき、ドライバーは即座に運転を引き継いで正確な判断と操作でクルマを安全運行させなければいけません。しかし、ハンドルやペダル操作をシステムに任せて監視だけ、となると、眠くなったりボーっとしたりしちゃいそうですよね? そのため、ドライバーを監視するカメラやセンサーがあるわけですが、この辺りはなんだか微妙です。 より高度なレベル3(アイズフリー)では運転責任がシステム側に移りますが、システムでは手におえない! と判断された場合には警告後一定の時間を置いて、ドライバーが運転を代わる必要があります。でも、どのタイミングで警告を出し、どの程度の時間までに代わる必要があるかは、状況によっても変わりますよね。TV電話ならすぐ代われそうだけど、スマホをチェックしているうちに少しウトウトしかけてた、なんて状態からハンドルを持たされても困るわけです。システムと人間の間で運転責任が行き来するこのレベル3は、責任の線引きがあいまいで実用化は難しいのではないか? と言われはじめました。それなら完全自動運転のレベル4にしたほうが現実的、というわけです。 もっと高度なレベル4(ブレーンフリー)になると、システムが手におえない状況でもクルマを安全な場所に安全に停止させるまでは、システムが責任を持って行ないます。ただし、こうした判断や運用が可能になるのは、高速道路や自動車専用道路のような、不確定な交通要素が比較的少なく、クルマが安全に停止できるエリアがしっかりしているところから。というわけで、一般道まで自動運転が可能になるのはさらに先になりそうです。ホンダの場合、2025年頃までにパーソナルカーユースに向けたレベル4技術の確立を目指すと言っています。 たとえば画像処理だけで自動運転できる時代は来るのか?高速道路のような限定された空間でも、自動運転には様々なデバイスや制約が必要になりそう・・・というのを見てきたわけですが、そうなると将来、たとえば画像認識だけで自動運転が可能になる時代はやって来るのかも気になります。今回はその画像認識だけで走行するテストカーにも乗ることが出来ましたよ。 乗ったのはAIによる画像認識技術で、研究所内の一般道に模した道を認識して走る技術。白線が無かったり、消えかかっていたり、白じゃなくて黄色だったり、交差点や停止線があったり、路側帯に線は無く代わりに植木が生えていたりするところを、画像認識だけで「道はたぶんココ!」と認識して走っていくわけです。 画像から道らしい形態やパースを読み取るのはなかなか人間的な感覚(?)が必要ではと察するわけですが、最近はニューラルネットワークによるディープラーニングによって、AIの学習・判断力が急速に高まりつつあり、グーグルの「アルファ碁」が世界最強棋士を破ったように、いつかは視覚情報だけで人間以上にクルマを運転できるだろうとエンジニア氏は言います。 とはいえ現状では、この道路認識に信号を読み取るタスクを加えようと思うと、人間なら地理感覚、通常交差点のどの位置に信号があるか、逆光などでどう見えるかなどからたちどころに認識できるわけですが、AIは地図情報などの併用がマストです。ましてや歩行者や自転車、対向・交差・合流する車両や駐車車両なども入ってくるとなると、レーダーやライダーの併用も必須というのは間違いないでしょう。逆に言えば、複数デバイスで使うにしても、個々のデバイスを鍛えることは有効なんですね。ホンダでは、画像から複数の歩行者の動きや移動方向などを予測するシステムなども、並行して開発が進んでいます。 正確な地図情報=ダイナミックマップも問題です。cmオーダーの精度で三次元情報としてサンプリングされるこのデータは、高速道路のみの情報なら全国でも10ギガ単位で済むという話もありますが、一般道の路地までとなればテラ単位は確実。全国を計測してまわる地図作り作業も膨大な予感がしますが、ダイナミックマップの特性でもある事故や規制や工事といった時々刻々変化する変更情報をネット経由でクルマに取り込むとなると、そのデータ量もすごいことになりそうな気がしました。 ・・・というわけで、着実に研究が進むホンダの自動運転技術に感心しつつも、だからこそ自動運転時代までのハードルの高さを改めて認識した今回のイベント。一方でAIをはじめとする技術が急速に進歩しつつあるのもまた事実で、期待と妄想を膨らませつつ見守りたいと思います。(編集T) |
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