“端正スポーティ”な個性が際立つ近年のボルボの飛躍の礎となったモデルとして、まず挙げるべきはやはり「XC60」だろう。2009年、隆盛のミディアムクラスSUV市場にグッドタイミングで投入されたXC60は、デザインでも走りでも従来ボルボのイメージを覆す若々しさが打ち出され、新たな層にアピールすることになる。しかも一方で、受け継がれた快適性、そして安全性を徹底的に追求する姿勢が、従来のファンからも変わらずに支持され、結果として累計約100万台を販売する大ブレイクに繋がったというわけである。 そんなXC60が、実に8年ぶりとなるフルモデルチェンジを行なった。新型は、デザインも走りも安全性も、守りに入らず積極的な攻めに出た、なかなかの意欲作だ。 全長4688×全幅1902×全高1658mmと、欧州仕様同士の比較では44mm長く、11mm幅広で、55mm低くなったボディは、スタイリングのイメージを従来から大きく変えている。90シリーズで先に使われた車体の基本構造であるSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)を用いることで、ロングノーズ化、ショートオーバーハング化を実現したフォルムは、それでも躍動的だった先代に較べれば、兄貴分であるXC90にも似た端正な雰囲気。その中で、絞り込まれたフロントに跳ね上がったリアクウォーターウインドウ、前傾したリアゲートなどが、カジュアル感に繋がっている。 個人的には、もう少し若々しくても良かったかな? と思わないではない。しかしながら最近のボルボに共通のスタイリッシュさは外していないし、周囲のライバル達がスポーティさを強調する中で、却ってキャラクターが立っていて悪くないのかも、という気もしている。皆さんはどのように思われるだろうか? さらに快適でさらにクリーンな室内空間同様にインテリアも、縦型タッチスクリーンを中央に置く水平基調のダッシュボードを使った、XC90以降の流れに則ったデザインとされているが、ウッドなど様々な素材が設定されたトリムの入れ方などは、より遊び心を感じさせる。また、そのタッチスクリーンを使ったインフォテイメントシステム、SENSUS(センサス)の操作系がマイナーチェンジされ、使い勝手を更に向上させたのもトピックだ。 空間的には、特にリアシートの余裕が増している。後席も独立しての空調設定が可能で、且つ外気中の汚染物質や粒子を除去し、新鮮な空気を提供すると謳う“クリーンゾーン”4ゾーン クライメートシステムも室内で過ごす時間を快適なものとするのにひと役買ってくれることだろう。 ラゲッジスペースはリアシート使用時で、床下収納まで含めて505Lの容量を確保。先代の495Lよりわずかに拡大された。カーペットが敷き詰められた床面は広くフラットで使い勝手は上々だ。尚、エアサスペンション搭載車には車高を下げるローディングモードも備わる。 エンジンはお馴染み“ドライブE”パワートレインの直列4気筒2.0Lガソリンとディーゼル、そしてガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせたT8=プラグインハイブリッドが用意される。試乗したのはガソリンの「T6 AWD」と、ディーゼルの「D5 AWD」。但し、日本で販売されるディーゼルモデルは「D4 AWD」になる予定なので、今回は「T6 AWD」の話を中心としたい。また、試乗車はすべてオプションのエアサスペンション付きだった。 しっとりとした乗り心地に頬が緩む走り出してすぐに大いに驚き、そして次の瞬間には頬が緩んでいたのは、乗り心地が素晴らしく良いからだ。剛性感高いボディを土台にしなやかに上下するサスペンションは、最初はソフト過ぎると感じたほどだが、ダンピングはちゃんと効いているのでフワフワと不安定になるわけではなく、市街地や高速道路ならば快適な走りを楽しめる。 但し、それでも私なら普段はダイナミック・モードにしておくかもしれない。ダイナミック・モードでも十分以上に快適だし、不意に現れたコーナーでも遅れのない反応を示してくれるからである。ステアリングフィールも、このぐらい引き締まっていた方が好みだ。 90シリーズは全般に、エアサスペンション装着車でも乗り心地には、ややしっとり感を欠く感があるが、同じコンポーネンツを使いつつもXC60では、着実に進化が進んでいると実感させた。聞けば最新、最先端のドライビングシミュレーターの導入が、セットアップの作業を大幅に助けたのだという。この乗り味も、やはり競合ひしめく中での個性化に繋がっているのは間違いない。 動力性能は十分以上。街中でも高速道路でも、まったく不足を感じさせなかった。但し、強いて言えばエンジン音をもう少し抑えたいと感じる場面があったことは指摘しておく。なまじ走りの質が高いだけに、些細なことも気になってしまうのだ。 ボルボらしい安心&安全に3つの新機能先進安全・運転支援装備についても、ボルボらしく更に充実。新たに3つの機能が追加されている。自動ブレーキシステムのシティセーフティに追加された“ステアリング・アシスト機能”は、50~100km/hの間で自動ブレーキだけでは衝突を避けきれない時、内輪にブレーキをかけて車両の向きを変え、更には操舵による回避を促す。 そして“オンカミング・レーン・ミティゲーション(正面衝突回避支援機能)”は、60~140km/hの速度域で対向車線へのはみ出しを検知するとドライバーに警告し、操舵アシストで車両を元の車線に引き戻す。更にBLIS(ブラインド・スポット・インフォメーション・システム)にも、車線変更しようとした際に、死角に他車の存在があると警告を発し、操舵により元の車線へと引き戻す機能が追加された。 S90/V90と同じく、130km/hまでの速度域で速度、前走車との車間、そして車線を維持して半自動運転を可能にするパイロットアシストも用意される。但し、起動中はステアリングにいかにも制御されているという感覚が強く伝わり、それが時にドライバーの意思とぶつかることもあった。機能の向上だけでなく、日常的に使いたくなるぐらいに制御にも一層の洗練を期待したいところだ。 最近、周囲のクルマ好きの友人、知人達から「ボルボが本当にカッコ良くなったね」と言われる機会が増えている。XC90から始まったデザイン変革は、瞬く間に受け入れられたようだ。その雰囲気を継承しつつ、見た目も価格ももう少し身近で、しかも走りの質にも安全性にも更に磨きがかかった新型XC60のアピール度は、相当に高い。あるいは先代以上のヒットになる可能性は十分にある。 気になるのは販売時期だが、おそらく秋頃にはその姿を間近で見ることができるのではないだろうか。もうしばらくの辛抱だ。 スペック例【 XC60 T6 AWD 】 【 XC60 D4 AWD 】 日本発表(予想)=2017年秋 |
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