Q2の本命グレード登場アウディQ2は上級の1.4 TFSIをベースにした「ファーストエディション」が先行上陸した。ただし、1.0リッター3気筒ターボを積む1.0 TFSIが「日本市場の本命にして売れ筋」になるであろうことは、アウディジャパンも明確に認めるとおりである。その本命たるQ2の1.0リッター車には、299万円という戦略価格をかかげる素の「1.0 TFSI」と、その上級モデルとして「1.0 TFSIスポーツ」があり、今回の試乗車は後者である。 素の1.0 TFSIが上級のスポーツに対して、内外装の装備が省略もしくはグレードダウンするのは当然である。ただ、衝突低減自動ブレーキやアダプティブクルーズコントロールなどのアドバンスドセーフティ機能が、素の1.0 TFSIではオプションでも装着不可なのは、このクラスの最新モデルとしては考えモノなのは事実。 そんな素の1.0 TFSIは、300万円切り……という目を引く価格で、潜在顧客をショールームに引き寄せる“ツカミ”の役割が最大の任務であることは否定できない。実際、アドバンスドセーフティ系以外の装備内容でも、素の1.0 TFSIにLEDヘッドライトやスマートキー、リアカメラ……といった(スポーツで標準化されている)装備をオプションで盛っていくと、あっという間に364万円のスポーツより高価になる。 つまり、素の1.0 TFSIはオプションを一切追加せず、簡素な仕様のまま割り切って乗らないかぎり、正直なところ、あまり買い得感はない。Q2の本命は厳密には1.0 TFSIスポーツの一択……というのが、アウディジャパンの本音ということだ。 積極的な操作で小排気量ターボを楽しむQ2の主力エンジンとなる1.0リッター3気筒ターボは、ご承知の向きも多いように、すでにA1スポーツバックで上陸しているものと基本的に共通だ。ただし、Q2ではA1のそれより過給圧が引き上げられて、A1の1.0 TFSIが95ps/16.3kgmなのに対して、Q2は116ps/20.4kgm。従来の自然吸気エンジンでたとえると、1.6リッター相当から2.0リッター相当にチューンアップされているということだ。 ちなみに、この116ps版1.0リッターターボは、欧州ではすでにA3やVWゴルフにも搭載されて世に出ている。つまり、Q2も含めてVWグループMQBモジュール車の定番ガソリンエンジンという位置づけになっている。Q2 1.0 TFSIスポーツの車重は、たとえばVWゴルフのTSIトレンドライン/コンフォートライン(1.2リッター4気筒)より成人男性ひとり分ほど(70kg)重い。しかし、エンジンのピーク性能も最高出力/最大トルクともに1.2 TSIより高く、大きいので、アクセルペダルをきちんと踏んであげれば動力性能は十分といっていい。 実際、首都高を含めた都心部を中心とした今回の試乗では、1.0リッターのQ2は当たり前だがなんら不足はなかった。もっとも、高いギアでの巡航状態から踏み込んだときなどの瞬間的な“間”に、排気量の小ささを感じさせなくはない。それを嫌って無意識に多めにアクセルを踏み込んでしまうと、今度はキックダウンして想定以上の加速力が発生してギクシャク……という小排気量ターボ特有のクセが出ることもある。 ただ、そういう場合はドライブモードセレクトを“ダイナミック”、もしくはシフトレバーをSレンジに入れれば、低めのギアを選びながら、どんな場面でも活発に走る。1.4リッターならDレンジに放り込んだシフトレバーに、あらためて手が伸びるケースは街中ではほとんどないが、1.0リッターではそうやって積極的な操作を心がけたほうがスムーズに走る。そういうところに楽しさを感じるマニアもいるだろう。 これまでにないヒラヒラとした運転感覚を意図的に演出1.0 TFSIスポーツの車重は4気筒の1.4 TFSIより30kg軽い。ご想像のとおり、その30kgはすべて前軸重量で軽くなっている。スカスカのエンジンルームのわりに、思ったほど軽くない……というのが正直な印象だが、1.3t強のクルマで前軸で30kg差なら、直接乗り較べれば、多くの人が“なにかちがう”と気がつく程度には軽い。 ただ、同じスポーツなら標準サイズのホイールサイズは1.0 TFSIと1.4 TFSIともに17インチ。車重差が30kg程度ならサスペンションのチューニングは同じか、変えてあっても大差はないはずである。サスペンションチューンの詳細は今回判然としなかったが、乗り心地や操縦性は、以前試乗した18インチ装着の1.4 TFSIファーストエディションとよく似ている。もちろん、低速でのアタリの柔らかさでは今回の17インチのほうが上手だが、基本的には車重や動力性能のわりにパリッと引き締まったフットワークが印象的。重厚さより軽快感、俊敏性を前面に押し出したキャラクターを意図しているのが明白だ。 そうした意図はQ2のリアサスペンション選びに象徴されている。同じMQB車でも、A3やゴルフは1.4リッターターボ以上でマルチリンク、それ未満のエンジンでトーションビームという設定なのだが、Q2のそれは今回の1.0 TFSIはもちろん、上級の1.4 TFSIでもトーションビームが選ばれている。 Q2はバリアブルレシオのクイックなステアリングに、トーションビームによる“尻の軽さ”を組み合わることで、これまでのアウディにないヒラヒラとした運転感覚を意図的に演出している。そこがQ2の新しさであり、アウディが意図する“若者テイスト”ということなのだろう。 MQBベースの贅沢な骨格設計。高めの価格は妥当…?そんなQ2に「アウディのSUVなのにクワトロじゃないのかよ?」とツッコミを入れたくなるエンスージァストも少なくないだろう。ちなみに欧州には一応クワトロが存在するが高価な2.0リッターディーゼル専用で、ドイツ本国でもQ2はあくまでFFがメインのクルマである。 前記の操縦性の演出からも分かるように、Q2はその小回り性能を利して、都市部でキビキビと走るキャラクターカーとして売り出している。そうしたQ2の新しさはFFでこそ強調されるようになっており、クワトロを押さないのもQ2の意図的な商品企画である。 今回の1.0 TFSIスポーツに、自慢のコネクト機能が追加される「MMIナビゲーションパッケージ」と、フル液晶のメーターパネル「バーチャルコクピット」という“らしい”オプションを2つ追加すると、合計価格は400万円の大台をちょっと超える。Q2をQ3の弟分としてBセグメント級のコンパクトSUVと捉えると、確かに価格はかなり高めだ。 ただし、Q2の基本骨格はすでにA3にも使われて、そして次期Q3にも使われるはずのMQBであり、“コンパクトSUV”と断じてしまうのは可哀想な気もする。まあ、今後VWグループはBセグメントモデルにもMQBを使っていくそうなので、分不相応とまではいわないが、競合車の多くよりは明らかに贅沢な骨格設計であることは事実だ。 また、アウディ自身も「Q2は単純なQ3の下級モデルではなく、クラスレスな商品」と語っており、なるほど内外装の仕立てレベルはA3に匹敵する高級感である。骨格設計を共用する新型VWティグアンの1.4リッターFFで360~463.2万円という価格設定を妥当とするなら、アウディのブランド代も含めると、Q2の価格もこんなものかな……とは思う。 スペック【 Q2 1.0 TFSIスポーツ 】 |
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