全幅1800mm×全高1550mmは都会派だから春の軽井沢のクローズドコースで新型スバルXVを試乗した。前々日に降った季節外れの雪によってコース脇には雪が残っていたが、なんとか舗装路を走らせることができた。結論から申し上げると、乗り心地、ハンドリング、商品的魅力の面で非常によくできていた。インプレッサが昨年のモデルチェンジで新しい車台を得て飛躍的にハンドリングと乗り心地を向上させたため、ベースがインプレッサのXVもそうなったという図式だ。 XVはインプレッサをベースに、ロードクリアランスを高め、フェンダーモールやルーフレールなど、アクティブなルックスをまとった派生モデルとして、2010年に初代が登場した。車名は初代のみインプレッサXVで、12年にモデルチェンジした2代目から単にXVとなった。インプレッサがモデルチェンジしてしばらくしてから登場するのがパターンだ。 新型のサイズは先代とほぼ同じ。正確には全長が15mm、全幅が20mm拡大した。その結果、全幅は1800mmとなったが、これはミラーを含まない数値であり、ミラー形状を変更している新型のミラーを含む車幅は先代の2019mmと変わっていない。全高は1550mmで変わらない。都市型SUVの代表格であるXVはほとんどの立体駐車場を利用できるよう全高は1mmも上げるわけにいかなかった。ちなみに、ルーフレールを装着すると1595mm、シャークフィンアンテナを装着すると1575mmとなる。 SGPはインプレッサではなくXV基準で開発された!?冒頭述べたように、新型XVにはインプレッサ同様SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)が用いられている。これはスバルがこのほど新規開発した車台で、インプレッサで初めて採用された。BRZなどの一部モデルを除いて、今後モデルチェンジするスバル車に順次採用される。 このためこの車台がダメだと向こう10年くらいのスバル車がダメになり、非常に重要なものだが、よくできていた。身体に感じるボディ剛性が高いために運転している間ずっと安心感が高く、乗り心地が快適で、細やかな操作にもクルマがきちんと応えてくれる正確なハンドリングを備えていた。評判の高い欧州のCセグハッチにも決して引けを取らないと感じた。インプレッサよりも高価なあそこやあそこよりずっといいなと思った。 XVを担当した操縦安定性部門のエンジニアによると、SGPは特に背の高いモデルでも不安、不満のないハンドリングを備えることができるよう考えられている。いわく車高の低いモデルを想定した車台を車高の高いモデルに適用させるより、車高の高いモデルを想定した車台(今回のSGPがこれ)を車高の低いモデルにも適用させるほうが簡単だそうだ。 実際、ワインディングコースでXVのステアリングホイールを右へ左へ回しながら元気よく走らせてもぐらつくようなことは一切なく、それでいて不自然に足まわりを硬くしたクルマ特有の、突っ張るような動きも感じなかった。 XVはスペーサーで嵩上げしてロードクリアランスをインプレッサの130mmに対し70mm増しの200mmにまで向上させているのだが、前後ともサスペンションのジオメトリー、スタビライザーのロール剛性、トレッドなどを最適化することで、インプレッサと同じような感覚で運転することができた。 Xモード搭載で200mmの最低地上高がさらに活きるロードクリアランス200mmというのは、XVのようにハッチバックをベースとしたSUVとしては立派な数値。一見悪路に強そうなマッチョなスタイリングをしたSUVであっても、200mm未満のモデルは少なくない。200mmというのは悪路走破性が高いか低いかを分ける基準としてちょうどいい数値だと思う。複雑な4WDシステムを搭載していても200mm未満だったら、悪路へ足を踏み入れないほうが懸命だ。 高いロードクリアランスという基本性能を確保したうえで、新型XVにはスバルお得意の「Xモード」がほとんどのモデルで採用された。これは低速時に悪路で最大限のトラクションを確保するための装置で、ATシフター近くにあるスイッチを押せば、4輪に独立してブレーキをかける横滑り防止装置や、フロント60%:リア40%の前後トルク配分を必要に応じて変化させるアクティブトルクスプリット式4WDシステムが統合制御され、雪道や泥濘路などでの発進時に威力を発揮する。 この日、前々日の降雪のおかげで図らずも雪が溶けかけた泥道が用意された。ぬかるんで人が歩くのも大変な路面をXモードオンのXVはこともなげに走破した。まぁこれもロードクリアランス200mmがあってこそなのだが。 スムーズで不足もないけど1.6ターボも欲しくなるオンロードよし、オフロードよしのXVに弱点があるとしたらエンジンだ。エンジンはいずれも水平対向4気筒DOHCの1.6リッターと2リッターの2種類。コストの関係で1.6リッターがポート噴射、2リッターが直噴という違いはあるが、どちらもこの排気量の自然吸気エンジンなりのパワーをもっている。 力が不足しているということはないが、運転して楽しいエンジンではない。近頃は低回転からもりもりとトルクを発する過給器付きエンジンに慣れてしまっていることもあって、XVのエンジンが自然吸気で、ある程度回さないと力を発しないことも物足りない。もちろん2リッターのほうが力強いが、どちらかがどちらかに比べて良いとも悪いとも感じなかったので、価格と相談して決めればよいと思う。 「レヴォーグ用の1.6リッター4気筒ターボエンジンがせっかくあるんだから載せるといいんじゃないですかね?」。井上正彦プロダクトゼネラルマネージャーにこう尋ねたところ「排気の取り回しが異なるので即座に載せることはできませんが、できないわけではありません」と玉虫色のお答え。時期はまったく予想が付かないが、いつかは出そうな気がしないでもない(←これも玉虫色)。 カニバリ上等!? いま買うなら迷わずXVかところで、日本でSUVを振り返ると、最初はトヨタ・ハイラックスサーフや三菱パジェロあたりのサイズの人気が高かった。というかそのサイズのSUVしかなかった。その後、人気SUVのサイズはだんだん小さくなった。ニッポンジャストサイズのSUVが増えたのだ。 例えばトヨタRAV4は一時期、一世を風靡した。そしてコンパクト化の傾向は続き、スバルの調査によれば、最近になって日産ジュークやホンダ・ヴェゼル、マツダCX-3あたりのBセグメントSUVの販売台数が、CセグメントSUVのシェアを抜いた。XVはCセグSUVに属するが、この調査結果を受けて、BセグSUV検討客も獲得すべく、開発の途中から1.6リッターエンジン搭載車も追加したのだとか。 現状、フォレスターとXVの売れ行きは2対1でフォレスターが多い。スバルは将来的にこれを逆転させたいようで、そのためにも先代ではあくまでインプレッサの派生モデルだったXVを、独立したモデルとして際立たせ、販売増につなげたいのだそうだ。 そのためか、インプレッサとXVの価格差は戦略的に小さく、インプレッサの同様のグレードに対し、わずかに8万~10万円アップでしかない。全車アイサイトver.3を標準装備する。最上級モデルの「2.0i-S アイサイト」で267万8400円。XVにはアクティブ・トルク・ベクタリングや、Xモードが備わる(最廉価版を除く)んだから、この価格差はXVに有利に働くのではないだろうか。カニバってもどっちもスバルだからOKということか。 スペック例【 SUBARU XV 1.6i-L EyeSight 】 【 SUBARU XV 2.0i-S EyeSight 】 |
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