500ps/460Nmへとパワーアップ。6速MTも復活!今年3月のジュネーヴ モーターショーで発表されたタイプ991の後期型となる新型ポルシェ911 GT3は、エンジン排気量が従来の3.8Lから4.0Lへと拡大され、最高出力は500ps、最大トルクは460Nmに達した。ファンの方ならご存じの通り、このスペックは先代911 GT3 RSと共通である。 更に新型911 GT3では、先代で一旦廃止となったマニュアルギアボックスが復活した。これも、911 GT3 RS用の4.0Lエンジンに6速MTを組み合わせた限定車、911 Rへの大きな反響が引き金になってのことだ。 要するに新型911 GT3は、先代911 GT3 RSの心臓に、911 Rで使った6速MTを流用したモデルなのだろう。正直、スペックを見た段階ではそんな風に解釈していたのだが、スペイン・グラナダで行われた国際試乗会で解ったのは、それは間違いだったということだ。実はこのエンジン、数値上のスペックこそ同一ながら、実は内部構造に大幅に手が入れられたエボリューション版だったのである。 吹けあがりやサウンドはさらにドラマチックにマドリッドからのチャーター機で現地に着くと早速、空港には試乗車が用意されており、その中から6速MTモデルを選んでスタートしたのだが、実はこの時はまだ詳細なスペックを確認する前のことだった。走り出して、まず気づいたのはドライバーの真正面に据えられた回転計のレブリミットの表示が911 GT3 RS、911 Rの8800rpmより高い、9000rpmからになっていること。更に言えば、低~中回転域からすでに回転上昇が滑らかに感じられた。 これはと思い、高速道路に入ってからアクセルペダルを深々と踏み込んでみると、吹け上がりはまさに、回せば回すほどパワーが盛り上がり、そしてサウンドも澄んでいく格段にドラマチックなものに変貌していた。そして回転計に記されている通り、圧倒的な迫力を感じさせながら、9000rpmまで淀みなく回り切ってみせたのだ! 新たな心臓は“純レーシングエンジン”その晩、ポルシェAGエンジン開発マネージャーのトーマス・マダー氏に訊くと、冒頭の通り、エンジン内部に大幅に手が入れられていることが解った。クランクシャフトはメインベアリング径が拡大され、コンロッドベアリングの幅と厚みも増大。また潤滑系も、新しいオイルポンプの採用、クランクシャフト内部へ直接供給する新しいオイルラインが設定されている。高効率な潤滑によりオイル流量は40%以上もの低減が可能になり、フリクションが軽減された。 更に、油圧ラッシュアジャスターを廃してバルブ駆動をリジッド化しているのもトピック。これも当然、高回転化に寄与する。懸念される耐久性も、まったく問題ないという。 実はエンジンのこれら基本骨格は、ポルシェ カレラ カップで使われている911 GT3 Cup、更には純レーシングカーである911 RSR用のエンジンと、まったく同一なのだという。言い方を変えれば、純レーシングエンジンが新型911 GT3の心臓なのだ。 もちろん進化しているのはエンジンだけではない。新型911 GT3は、ラテラルエアブレードを備えた新しいフロントバンパー、スポイラーリップに、床下の整流、大型ディフューザーの搭載、20mm嵩上げされたリアウイングなどによって、Cd値を悪化させることなく最大ダウンフォースを20%増大させている。ラムエア吸気システム、リアリッドのカーボンヒンジや軽量ポリウレタンなどを用いたリアバンパーによる軽量化なども見所と言えるだろう。 乗り心地の良さに驚き、レーシーな叫びに頷く翌日はまずPDKモデルを試乗する。パワートレイン云々の前に驚くのが乗り心地の良さで、しなやかに動くサスペンションがあらゆる入力をすんなりいなしてしまう。スプリングレートは従来と変わらないが、リアのダンパーにリバウンドスプリングが入り、更にはタイヤが改良されるなどした効果だ。これなら十分、デイリーユースに供することができる。 但し、乗り心地は良いが室内はやかましい。ロードノイズもエンジン音も遠慮なく入ってきて、100km/hで会話の際に声のトーンを一段高めたくなるほどだ。まあ、GT3のファンにとっては、そうであってこそというところだろうけれど。 尚、カレラ系と違ってGT3のPDKは7速がオーバードライブとはなっておらず、最高速も7速で記録する。100km/h走行時のエンジン回転数は2500rpm前後となる。これはMTの6速とほぼ一緒だ。 サーキットではまさに水を得た魚そして、いよいよサーキットでの試乗である。舞台は初めて訪れた「Circuito Mike G Guadix(シルクイート・マイク・ジー・グアディクス)」。何とレジェンド、ヴァルター・レアル氏が、筆者1人を先導するという贅沢過ぎるプログラムである。 ここでの911 GT3は、まさに水を得た魚。9000rpmまで回るエンジンは、パワーもサウンドも凄まじく刺激的なだけでなく、自然吸気ならではの右足と直結したかのようなダイレクトなレスポンスで、旋回時の微妙なコントロールも実に容易い。 PDKの完成度も120%文句無し。何しろサーキットで、レジェンドに必死で食らいついていく文字通りの全開走行でも、Dレンジのままパドルを触る必要をついぞ感じさせなかったのだから。 一方でMTも、SPORTモードでは自動ブリッピング機能が働きヒール&トゥの必要がないから、サーキットを十分に楽しめた。 快適性を高めたシャシーは、こうした場面では縁石を突破する時などの接地性の向上にも繋がっていた。コントロール性の良さはまさに特筆もの。そう、911 GT3が乗り心地のために走りを犠牲にするようなことはあり得ないのである。 悩むための猶予はある初代911 GT3がデビューしたのは1999年。初めての水冷エンジンモデルであるタイプ996の時代だ。つまり今年で18歳。新型911 GT3は、そんな意味で相応の成熟を感じさせる一方で、持ち前の溌剌としたスポーツ性を、いよいよひとつの高みに到達させたという感を抱いた。 価格は一気に200万円近くも上がってしまったが、そのパフォーマンスを考えれば、個人的な買える買えないはともかくとして、とても高いだなんて言えない。 尚、新型911 GT3は最終的な生産数こそ大きくはならないだろうが、それでも限定車ではなく、カタログモデルとして設定される。つまり、もし魅入られてしまったとしても、今しばらくは悩むための猶予が与えられるというわけだ。さて、どうする? スペック【 ポルシェ 911 GT3 】 ※左ハンドル仕様のみ |
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