押し出し感のある顔に変更。インテリアの質感も上がったフォルクスワーゲンのAセグメントモデル「up!」がマイナーチェンジを行った。輸入車の場合、声高にマイナーチェンジとは言わず、マーケティング戦略的にも“新型”と言うことが多いのだが、そこは横に置いておくとして……。 up!が日本に導入されたのは2012年10月。これまで小変更やコスパに優れた特別仕様車、またシリーズという考え方ならば2015年には最低地上高を文字通り“up”させた「cross up!」などもラインナップしてきた。それでもこのセグメントのライバルがニューモデルを投入してくる中、販売面のテコ入れも含めてタイミングとしては正直遅すぎる感もあったが、今回意匠などの変更も含めて商品力を向上させている。 エクステリアではフロント&バンパーやリアコンビネーションランプを中心に変更した。いわゆる昨今の“VW顔”に並ぶわけだが、比較的日本人が好む“押し出し感”があって好ましい印象だ。up!のセールスポイントでもあるボディカラーは全7色、この中に新色が3つ設定されるが、全体的にup!のアピアランス向上に一役買っている。 インテリアはこれまで外装と同じ塗装色をダッシュパネルに採用していたが、今回は新しい4色のダッシュパッドを採用。IML(インモールドラベリング)と呼ばれる加工を施すことにより、全体としては変更前のカジュアルな感じから立体感のあるワンランク上の仕上げとなった感がある。そして今回の大きな目玉とも言えるのが、新しいインフォテインメントシステムの採用なのである。 スマホで様々な機能が使えるコンポジションフォン「Composition Phone(コンポジションフォン)」。これがup!に設定された新しいインフォテインメントシステムである。これまで国産メーカーに比べるとこの領域では輸入車はやや遅れていた。正確に言えば、日本の道路事情や日本人の嗜好に合わせたシステムを組み込むことが難しかったのかもしれないが(文化が違うので当たり前?)、現行ゴルフVII導入時に設定された「Discover Pro(ディスカバープロ)」や現在では時代の要請とも言える通信を活用した「フォルクスワーゲン Car-Net(カーネット)」へ大きく進化を続けている。 一方でup!はというと、組み込み式のカーオーディオ(1DINサイズでもない)のため市販品との入れ替えは基本無理。肝心のナビに関してもディーラーで販売していたカロッツェリアのポータブルナビを専用キットで取り付けていたのがこれまでだった。 車両価格が比較的安いup!ではあるが、せっかくのインテリアの雰囲気を壊さず、それでいて前述したように通信との連携を両立させなければならない。その回答が今回のコンポジションフォンというわけだが、誤解のないように言っておくとこれは単なるスマホアプリではない。昨今のスマホアプリは進化を続けているが、それ自体は車両との連携性はほとんどない。 コンポジションフォンは5インチのカラーディスプレイを内蔵したユニットで、メーカーオプション設定される(試乗車はオートエアコンとのセットで8万6400円)。これとスマホをBluetooth接続することで様々な機能を使うことができる。 また当たり前と言えばそれまでだが、専用ホルダーにより簡単かつ確実にスマホを固定でき、さらにUSB端子がインパネ上部に出てきているので機種によって変換コネクター(またはケーブル)は必要になるが、充電ができるのでバッテリー切れの心配も緩和されるはずだ。 ナビ機能は「カーナビタイム」をベースに開発スマホにはまず専用アプリである「フォルクスワーゲン maps + more(マップスアンドモア)」をインストールする。原稿執筆段階でiOSは9.0以上、Androidは4.4以上のバージョンが必要。またiPadとiPod touchには非対応となる。 今回のテストでは現状最新のiPhone7(4.7インチ)にアプリをインストールしてテストした。iOSの場合、Apple Storeで10日間150円で購入できるのもその理由だった。ちなみにup!の購入時には1年間のライセンスが同梱されてくるので(つまり無料)すぐに全機能を使うことができる。 コンポジションフォンと専用アプリがインストールされたスマホをBluetooth接続することで使える機能は多彩だ。ラジオ局の選択や音楽再生、平均燃費などの走行データ、またタコメーターと冷却水の温度が確認できるライブメーター、そしてVWらしいというか、エコ運転に役立つ「Think Blue.トレーナー」という専用機能も使うことができる。また電話回線を使うことで万が一のトラブルの際に役立つ「アシスタンス&カスタマーセンター」もスマホの画面をワンタッチするだけで使うことができる。ちなみにカスタマーセンターへの通話料は無料である。 そして搭載されるナビ機能だが、アプリ自体の開発を「ナビタイムジャパン」が行ったと聞いて正直安心した。すでにスマホナビアプリとして定評ある「カーナビタイム」をベースに開発されていることで渋滞回避能力にも優れるルート案内機能や道路データのアップデートの早さ、駐車場の空きやガソリンスタンドの価格情報など有料ならではの充実した機能を有している。これらとほぼ同様の機能が使える点は非常に好ましい。実際のテストでも都内の渋滞をスムーズに回避し目的地まで誘導。当初設定したルートに対して1度渋滞回避を行ったがそのルートも納得できるものだった。 up!の場合、スマホとドライバーとの視線距離は短いほうではあるが、4.7インチでは少々情報が掴みづらい部分もあった。5.5インチのiPhone7や6PLUS、同サイズのAndroid端末との接続のほうが当然地図は見やすくなるだろう。 気になるASGの挙動。現状のコスパを考えたオススメモデルは?試乗は都内のストップ&ゴーの多いエリアと首都高速を中心に行った。up!というと、どうしても気になるのがロボタイズド5速MTである「ASG」のフィーリングだ。正直、発売当初のASGはギクシャク感が大きく、普段ATに乗っている人にとってはこの違和感が厳しかったはずだ。 実際はちょっとした慣れの問題で、アクセルを踏み込んでいく途中でスッとアクセル開度を緩めればスムーズに走ることができるのだが、これだけATが進化している中で軽量化やコストダウンは図れても、ASG自体の評価はもうひとつだったのは事実だろう。ただこのASGも2015年の一部改良でエネルギー回生機構やアイドリングストップとの協調制御が組み合わされ、導入初期よりも幾分ショックが改善された記憶がある。 確かに過給器も無いということで、ちょっとした上り坂では苦しい場面もあった。しかし流れが良い市街地でスッとアクセルを離すと、そのギアを固定して(無駄なシフトダウンはしない、という意味)ミズスマシのようにスーッと走る感覚は嫌いじゃない。減速が必要ならばブレーキをしっかり踏めばいいし、アクセルオフの状態ではエネルギー回生機構も作動するので燃費向上にも幾分か寄与するはずだ。高速道路に関しても、クルマ自体の挙動は軽自動車以上にしっかりしている。 ひとつ文句を言わせてもらえれば、やはりステアリングにテレスコピック機能が無いことが惜しい。見た目以上にシートの出来が良いゆえに、コストダウンとはいえ改善を期待したい。 またせっかくのインフォテインメントシステムなのに標準装備スピーカーの音が正直厳しい。予算に余裕があるならスピーカーのグレードアップをしてほしい。そうでなければ「move up!」をベースに現在限定車で販売されている「up! with beats」がオススメだ。音の好みは千差万別だが、7スピーカー&300wのデジタルアンプを搭載、さらにコンポジションフォンや専用アルミホイールまで標準装備で車両本体価格が200万円を切る。個人的には実用性を少し割り切ることで172万3000円の2ドアモデルを購入する。現在コスパはこれが一番高いと感じている。 スペック【 high up! 】 |
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