ビッグなミニがさらに大きくミニって我々が思っている以上に売れている。日本市場では8年連続で前年超えを果たし、2016年には実に2万4548台を販売した。この台数はブランド別の新車販売ランキングでも、メルセデスやBMW、VW、アウディに次ぐ堂々の5位に位置する。コンパクトカーが得意なフランスやイタリア勢にも大きな差をつける人気ブランド、ということになる。 そんなミニが2月23日に日本で発表した新モデルが、2代目へと進化するクロスオーバーである。このモデルを1月の末に、イギリスのロンドン近郊で試乗してきたのでレポートしよう。 ミニのラインナップの中で、クロスオーバーはもともと特異な成り立ちを持っていた。先代クロスオーバーは当時のミニのラインナップとは一線を画すモデルとして、専用設計のプラットフォームを用いていた。なのでこのモデルが登場した時から、ノーマルのミニとは別の大きなボディの“ビッグなミニ”であることが売りだった。しかも実際に出してみるとクロスオーバーは結構な台数を稼いだのだった。 そして現在では、ミニは3ドア/5ドア/カブリオレの各モデルが新世代モデルへと移行を果たしており、またクラブマンも先にフルモデルチェンジして新世代モデルとなっている。 そうした背景の中で、今回のクロスオーバーはクラブマンと同じプラットフォームを用いており、欧州BセグメントからCセグメントのモデルへと成長進化したのが最大の特徴である。そう、お気付きの人もいるかもしれないが、このプラットフォームはBMWが2シリーズグランツアラーやX1で用いた新世代のFF系アーキテクチャである。 ディーゼルとハイブリッドで新展開こうして今回のクロスオーバーは、クラブマンも含めて、ミニのラインナップの中での立ち位置を以前よりもさらに明確に上級移行させたことになる。 つまり今回のクロスオーバーの登場で、ミニのラインナップはいわゆるBセグメントに属すモデル群(3ドア/5ドア/カブリオレ)と、Cセグメントに属すモデル群(クラブマン/クロスオーバー)に分けられた。これはミニのラインナップ拡大だけでなく、プレミアムな位置付けのモデルも用意して、これまでとは異なるユーザー層の獲得を狙う戦略だろう。 新型クロスオーバーのパワーソースは他のミニ同様に、様々に用意される。だが、今回のクロスオーバーで最大のトピックは、日本仕様ではガソリンは無くなり、ディーゼルとミニ初のプラグインハイブリッドで展開することだ。これは現行クロスオーバーの販売が、ほぼディーゼルという状況を受けての判断。当初はディーゼルの「クーパーD」と「クーパーD ALL4」、「クーパーSD ALL4」という割り切ったラインナップでスタートし、PHVの「クーパーS E ALL4」は今年の第2四半期に導入される予定だ。 ただ今回イギリスで試乗できたのは、2.0Lターボを搭載した「クーパーS ALL4」のみだった。エンジンスペックは、最高出力192ps/最大トルク280Nm。対して日本仕様でもっとも高いパフォーマンスを見せる「クーパーSD ALL4」は190ps/400Nmだから、今回の試乗車よりもさらにトルクフルということだ。 走りには重厚感と落ち着きが漂うそうしたことを念頭に置いて走らせたわけだが、まず印象的なのは、試乗会場となったマナーマウス敷地内のスピードバンプを乗り越えた時に受けた感触だ。 低速でバンプを乗り越える際、先代モデルはどこかが軋みそうな感覚を受けただろう。だが新型はキャビンが相当堅牢かつサスペンションがよく動いているからか、わずかに揺すられはするものの、とてもしっかりした感じでバンプを乗り越えていく。ここで既に、いかにボディが高剛性かが分かった気がした。 もちろんそうした印象は走り出しても健在だった。先代と比べると、明らかに走りに重厚な感覚が増しており、走り全体に落ち着きが漂う。この辺りはまさに、新世代プラットフォームを採用したことによる効果だろう。 試乗車のクーパーSは当然、動力性能も必要十分以上。全長で約200mm長くなり、ひと回り大きくなったが、走りには一層ゆとりが感じられる。しかも実際に日本仕様に搭載されるのはディーゼル。中でももっとも高性能なクーパーSDなら、これ以上にトルクフルなのだから頼もしい。 一方で静粛性に関しても、以前より向上している。なので、この辺りがディーゼル版になった時にどう感じるかが気になるところ。先代のディーゼルはやはり、音や振動が気になる場面があったが、その辺りはディーゼルに乗れていないので何ともコメントできない。ただ、ガソリン・エンジン搭載車も先代よりは静粛性が高くなっているので、新型のディーゼル版も静かになっているはずだ。 ユーティリティの面でも進化は大きく、全長が先代より200mm長くなったことによって、トランク容量も100L増えて使い勝手が向上し、後席も足元が50mm拡大されてよりラクに座れるようになっている。 新時代のプレミアムを具現化する「ミニ」ブランドさて、多くの人が気になっていることは、「こんなに大きくなってもミニなの?」というところだろう。特にクルマ好きの方は、かつてのクラシック・ミニのイメージが強く残っているために、「こんなのミニじゃない」「デカすぎる」「高い」といった意見がよく見受けられる。 しかし、実際に眺めて触れて乗ってみると、改めて“もはや時代は変わった”ということを痛感するのだ。というのもクロスオーバーは、ミニのデザイン・テイストをしっかり備えていて、相変わらずのポップな感覚がしっかりと残っているけれど、その一つ一つのクオリティはCセグメントで見ても高いレベルに到達している。 つまり、見た目はポップでカジュアルな雰囲気だが、それを構成するマテリアルは確実に上質なものとされており、それは走りに関しても同様の印象を受けるのだ。それだけに新型クロスオーバーは、とてもミニらしい佇まいのSUVながら、あらゆる部分にプレミアムを感じる1台となっている。 日本での価格は「クーパーD」が386万円、「クーパーD ALL4」が414万円、「クーパーSD ALL4」が483万円、そして「クーパーS E ALL4」が479万円。上級モデルは3シリーズと並ぶ価格帯に達している。(※318iが446万円)。 そう、ミニという言葉にとらわれずに見ていくと実はこの新型クロスオーバーは、自動車のニーズが多様化した時代にあって、これまでにないプレミアムを具現化したプロダクトを追求していることに気づくわけだ。そしてそのことに気がつくと「ミニ」というのはクルマそのものの名前ではなく、ブランド名であることに気づいてハッとさせられる。 いつのまにか増えた様々なモデル・バリエーションとその戦略。そして実際のプロダクトが属するセグメント内での立ち位置や価格を見ていけば、なるほど「ミニ」はブランドそのものなのである。しかもこのブランドは、かつてのクラシック・ミニのイメージを強く抱く人たちからの反発とは裏腹に、冒頭に記した通り年を追うごとに成長を続けて、もはや人気ブランドとなっているのである。 【関連記事】 スペック例【 ミニ クーパー D クロスオーバー 】 【 ミニ クーパー S E クロスオーバー ALL4 】 |
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