大事なのはカッコいいかどうかランドローバーが、“コンバーチブルSUV”という類まれなジャンルのレンジローバー・イヴォークコンバーチブルを開発した。本国発売から遅れること約半年、このほど日本にやってきた。コンバーチブルSUVとはいうが、ベースとなったイヴォーククーペはクーペとSUVをかけ合わせたクロスオーバーに分類される。つまりイヴォークコンバーチブルはクーペとSUVとコンバーチブルをかけ合わせたモデルということになる。なんだかよくわからないが、そもそも分類なんてどうでもいい。大事なのはそのクルマがカッコいいかどうかだ。それについては一目瞭然。非常に美しくカッコいい。 せっかくのコンバーチブルなので、トップを下ろす場面の実況から。クーペならではの長いドアを開け、適度に身体を包む形状のレザーシートに腰をかける。センターコンソールのカップホルダー脇にあるスイッチをおよそ20秒間押し続けると、ヴェバスト製の5層のファブリックからなるソフトトップがZ型に格納され、フルオープンとなる。 無粋なロールバーはない。必要な時(横転時)に後席背後から飛び出す。閉じるのに要するのもだいたい20秒で、当然ながら最後の固定まで全自動。トップを展開中も格納中も作動音がほとんど聞こえない。ロールス・ロイス・レイスの作動音と同レベルで、静かといっても過言ではない。格納されたトップは、リアシート背後のラゲッジスペース上部に完全に収まり、ショルダーラインとツライチになる。 コンバーチブル化に際し、トップを収めるためにルーフ以外の形状がリアを中心に微妙に変わっているらしいが、見た目には、ルーフ以外はイヴォーククーペとの違いがわからない。ランドローバーのデザイン・ダイレクター、ジェリー・マクガバン氏にしてみれば、コンバーチブルにするからといって自らの傑作を無闇に変える必要はないということだろう。イヴォークには当初からコンバーチブル化の計画があったようだ。 パワー不足は感じないものの横浜の街を走り始める。クローズドで走り出し、走行中にトップをおろしてみる。大きな空気抵抗を受けるはずだが、トップの骨格の剛性が十分なのだろう、スムーズに動く。48km/h以下なら開閉可能。海外で一輪だけ段差に乗り上げ、つまりボディが歪みやすい状態でトップを開閉してみても、あっさり開閉できた。 オープンカーにもいろいろあって、イヴォークコンバーチブルは乗員が開放感を得られるタイプではない。フロントウインドウが寝ていて、ドライバー頭上近くまで迫ってきているのと、ショルダーラインが高いため、囲まれ感が強いのだ。リアに座ると開放感は増すが、風の巻き込みが激しい。このクルマは乗員が開放感を得るためのオープンカーではない。美しいスタイリングの華やかさを、周囲に見せつけるためのオープンだ。 2リッター直4ターボエンジン(最高出力240ps/5500rpm、最大トルク34.7kgm/1750rpm)と9速ATの組み合わせによるパワートレーンはイヴォークと同じ。車重は2020kgと、1760kgのイヴォーククーペや1790kgのイヴォーク(5ドア)よりも200kg以上重いのだが、走らせてみるとパワー不足を感じさせることはなかった。全開加速させると屋根アリよりも若干マイルドな加速かなと思わせる程度。近頃のクルマはトルキーなので、少々重くてもクルマをグイグイ前へ進めてくれる。 ただし、フォードグループ時代のレガシーであるこのエンジンを重いボディに載せているので、JC08モード9.6km/Lと燃費が悪い。ジャガーに搭載される新世代のインジニウムエンジン(2リッター直4ディーゼルターボ)が搭載されると燃費は上がり、走りの魅力もぐっと増すはずだ。さらにガソリン版のインジニウムエンジンも導入間近だというので、いずれはイヴォークファミリーにもそういう新世代エンジンが採用されるだろう。 狙うなら数年後!?トップの開閉状態にかかわらず、251リッターのラゲッジ容量が確保される。別の機会に試乗した際、機内持ち込み上限サイズのスーツケースを2個入れてもまだ余裕があったのを確認している。中央にラゲッジスルー機能を備えているので長尺物もOK。“コンバーチブル・フォー・オールシーズン”というコンセプトというだけあって、季節を問わず、また目的地を問わず、どこへでも行ける走破性や実用性が備わっている。最低地上高は210mm。ちなみに渡河は水深500mmまで可能だ。行く人はいないだろうが。そうそう、実用性といえばリアシートはプラス2の域を超えたスペースが確保されている。トップを上げた際の頭上空間も十分。 価格は765万円。ただしテスト車には、ACC(12万3000円)、アダプティブLEDヘッドランプ(30万4000円)、安全系装備やプレミアムサラウンドシステムなどを含むラグジュアリーパック(70万1000円)、20インチアルミホイールや専用エンブレムなどを含むブラックデザインパック(35万7000円)ほか、計217万2000円のオプションが装着されていて、締めて982万2000円也。 決して安いクルマではない。しかし華やかなクルマはだれにでも買える価格である必要はない。「お、いいじゃん」とポンと買う人、買える人向け。そういう人は飽きっぽいから数年後には『カーセンサー』にポツポツ出てくるはず。我々クルマ好きの出番はそれからだ。 スペック【 レンジローバー イヴォーク コンバーチブル HSE Dynamic 】 ※参考 |
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