軽自動車以外で初めての“モデューロX”ホンダの新車用に用意される純正アクセサリーパーツを一手に引き受けているのが、ホンダの100%子会社の「株式会社ホンダアクセス」である。ちなみに、同社でいちばんの売上を占めるのはナビゲーションシステムで、ドアバイザーやフロアマットも売り上げに貢献しているという。 ドアバイザーのような実用品群はあくまでホンダ純正アクセサリーとして、特別なブランド名はつけられない。だが、純正アクセサリーのなかでも、ボディパーツやサスペンション、スポーツシート、ホイールなど、ユーザーが積極的な思い入れをもって選ぶ種類の部品では、ホンダアクセスは“モデューロ”という独自のブランド名で、実用品群とは少し異なるマーケティングをしている。 ホンダアクセスの商品は、ナビやETCはもちろん、エアロパーツだろうがサスペンションだろうがブレーキだろうが、正規ディーラーで部品単体を注文&取り付けするのが基本だ。そんなホンダアクセスが、新たにコンプリートカー事業=“モデューロX”に乗り出したのは2012年12月のことで、その第1弾が「N-BOX モデューロX」だった。第2弾は「N-ONE モデューロX」、今回の「ステップワゴン モデューロX」は第3弾となる。 上品なだけでは物足りない!?国産メーカーの子会社が手がける純正コンプリートカーとしては、オーテックジャパン(日産)やSTI(スバル)などが長い歴史をもつが、かつてはこの種の商品展開には無縁だったホンダまでが手がけるようになった背景には、トヨタの“G's”のヒットもあるように思える。 また、モデューロの開発陣にしても、本来は全身をトータルチューンとしたいのが本音でも、純正アクセサリーの場合は、サスペンションだけ、エアロだけといった単独装着も、当然ながら想定しなければならない。チューニングを攻めきれない……というジレンマがあったことは容易に想像がつく。 ホンダアクセスによると、今のステップワゴンでは、純正アクセサリーのフロントグリルがちょっとしたヒット商品なのだとか。 その理由はなんとなく想像できる。現行ステップワゴンのフェイスデザインは、押し出しを強調しているはずの「スパーダ」にしても、グリル開口面積をことさらに主張しないタイプだからだ。あえて新しさをねらった上品さともいえるが、ワンボックス系ミニバンでは、現在もやはりイカツい系デザインに一定の支持があるのだろう。 「見た目」「足」「空力」をトータルチューンステップワゴン モデューロXでは、後述する空力性能を意識した専用バンパーに合わせて、フロントグリルも装着して、ベースのスパーダより明らかに押し出しが増している。インテリアも専用の柔らかい肌触りの合成皮革を採用。インパネ加飾パネルもピアノブラック調として、まあ過激なイジリ感はないものの、カラーリングや素材はすべて、いかにも今っぽい。 走り方面での強化は基本的にサスペンションと空力パーツのみで、他社コンプリートカーでよく見られるボディ補強策は施されない。また、17インチタイヤも標準のそれとサイズも銘柄も変えていない(試乗車はブリヂストンのトランザER33だった)。 注目したいのは、空力性能に本格的に踏み込んでいることだ。前記のフロントバンパーに加えてエンジンカバーやリアディフューザーを専用として、床下に速い気流を作ることで、とくに直進安定性を意識。前後の空力バランスにも配慮しているという。 ノーマルより車高を15mmローダウンしたサスペンションも、この空力とセットで煮詰めた専用チューンといい、ホイールもモデューロXに合わせて剛性まで見直されている。 これらの機能部品は今回のコンプリートカー用に開発されたので、少なくとも現時点では純正アクセサリーカタログに部品単体のラインナップはない。いくら予算があっても、アフターで同様のクルマを仕立てることはできないわけだ。 ノーマルも十分に納得できるレベルだったが…タイヤを変えていないことからも想像できるように、モデューロXの走りは、旋回性能をことさら意識したようなスポーツカーもどきのそれではない。ボディをイジっていないこともあって、ヴォクシー/ノアのG'sのように、走り出した瞬間に驚くような別物感があるわけでもない。もちろんセダンのような低重心感とはちがうが、背の高さをことさら意識させず「きちんと走るクルマだなあ」というのが第一印象である。 モデューロXの開発はホンダ本体の助けを借りつつも、走りの味つけはホンダアクセス独自。開発陣によると、目指した走りのキーワードは「高速域でドーンと走れる直進性」、「四輪の接地性」、「全員で快適」という3つだそうで、それらに素直にうなずけるものにはなっている。 今回は比較用にノーマルのステップワゴンも連れ出すことができたが、モデューロXのほうが、走行中の余分な動きは明らかに少ない。現行ステップワゴンも、このクラスとしてはかなり正確で無駄な動きが少ない走り自慢だし、乗り心地も十分に納得できるレベルだったはずだが、モデューロXと同じ場所で交互に乗り較べると、ノーマルはいきなりガタピシとした低級音がやけに目立ってしまうのは事実である。 モデューロXのアシは、単純にバネやダンパーを締め上げてあるわけではなさそうだ。ノーマルと比較してもロールそのものが減少したというより、動き出しからロールスピードがきっちりと抑制されて、背高モノにありがちな唐突な反応が見事に消えている。反応が路面の追従性や微小な操作への反応も正確になっているので、全体にジワッと落ち着いた挙動に終始する。 だから、後席に座っていても、突き上げが明確に増すわけでもなく、それでいてユラユラした揺れが減り、ドライバーもステアリング操作が一発で決めやすい。結果的に後席でも「乗り心地がよくなった」と感じられるようになる。 予算を度外視すれば、これがベスト・ステップワゴン高速道で肩の力をぬいてもピタリと安定する直進性は、なるほど開発陣が注力しただけのことはある。滑らかに動くアシとともに例の空力も効いているのだろうか、横風やワダチなどの外乱に対して自立安定性の向上は明らかだ。ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)をセットして走れば、このクラスとしては屈指の疲れにくいクルマだろう。 パワートレーンや燃費性能にも変更はないので、外観さえ嫌いでなければ、モデューロXはステップワゴン購入を検討しているすべての人に「予算を度外視すれば、これがベスト・ステップワゴン」と素直にいえるデキといっていい。 価格は7人乗りが366.5万円、8人乗りが368.66万円。額面は正直いって高価だが、モデューロXには上級の9インチ・インターナビやETC車載器、ドライブレコーダー、さらには専用フロアマットまでが標準装備される。さらに追加するオプションとして普通に考えられるのは、それこそ「お好みでドアバイザー?」くらいのものだろう。 既存の最上級モデル“スパーダ・クールスピリット・ホンダセンシング(299万円・FF車)”に同等の装備を装着したと仮定すると、モデューロX化のための追加料金は30数万円といったところ。内容を考えると、法外に高くはない。 また、現時点では、ステップワゴン用のモデューロ・サスペンションや本格的なエアロパーツの単品販売もされていないので、後付けのアクセサリーでモデューロXと同等のクルマを仕立てることはできない。それに、単品パーツが今後発売されたとしても、それぞれの単独装着を想定するなら、アシと空力を絶妙にバランスさせたモデューロXほどには、攻めたチューニングはできないと思われる。 ステップワゴン モデューロX・専用装備<エクステリア> <足まわり> <インテリア> 発売日=2016年10月20日 |
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