2695万円~だからこそ実現できる世界があるベントレーが初めて手がけたSUVモデル「ベンテイガ」の車両価格は2695万円。試乗車に装着されていたオプション価格は高級車が購入できる約943万円。総額は3638万円となり、諸費用などを含めたら乗り出し価格は約4000万円。 OP装備を細かく見ると、オーディオシステムが約50万円、22インチホイールが約110万円、リアスポイラーや前後バンパー部など7箇所へのカーボンアイテムがパッケージになったボディキットがCセグメントモデルが購入できる約280万円。ちなみにオーディオシステムなどは試乗車が装備するオプションのオーディオシステムのさらに上に、18個のスピーカーを使って可聴周波数上限まで再現するプレミアムオーディオシステムがあるなど天井知らずだ。金銭感覚がおかしくなりそうな話だが、この世界はそれで良いのだ。 この値段を前提に開発するからこそ具現化できる世界観があり、プレミアム性を生み出しているのも事実。また、オーナーの自分だけの1台を求める要望に可能な限り応じることも必要なので、結果として天井知らずの価格になってしまうわけだ。 世に数々の高級SUVと呼ばれるモデルがあり、特別仕様車のようなモデルも入れるとベンテイガを上回る価格のモデルもあるが、それらとは格が違う。なぜならベンテイガのスターティングプライスは2695万円。小さいエンジンや相応の装備などを用意して1000万円台のグレードから用意している高級SUVとは、作り込みのレベルが異なっているし、狙っている購買層が違う。 無数のオプションでオーナー好みに仕上げられるベンテイガの高級の本質は、高級を直感できる各所の上質な作りに加えて、オーナーが好みに応じて仕上げられることにある。スーツに例えるなら、高級な生地を使うのは当然で、腕利きのテイラーが体に合う仕立てをする、シワやたるみなどない、着込むほどに惚れ込めるスーツだ。食に例えれば “いちげん”の客が入れない老舗や名店で食べるだけでも高級の世界だが、ベンテイガの世界とは、自分の好みを知り尽くした板長やシェフが、自分のために仕入れや仕込みをして出す料理をいただくような高級ということになる。 ベンテイガの基本ボディカラーは17色とそれ自体が多いが、オプションカラーは108色もある。インテリアも同様で、レザーだけで15種類あるし、フロアのカーペットも15種類。ウッドパネルは7種類など、一つとして同じベンテイガはできないと思えるほどだ。 全長5150mm、全幅1995mm、全高1755mmという圧倒的なサイズがもたらす存在感に、ベントレーを象徴するマトリックスグリルや4つのLEDライト、フェンダー盛り上がりをつなげたパワーラインと呼ばれるプレスラインが加わって威厳や迫力を演出する。2995mmのロングホイールベースは、広い後席空間を含めた余裕の居住性をもたらし、ダイヤモンドステッチが刻まれた豪華で居心地良いシートの作りや、ウッドと完全に同化しているかのように嵌め込まれるメタルパーツの冷やりとしたアクセントなど、触感にまでこだわった作り込みが続く。気になるところがあるとすれば、選択した内装色によってはセンターモニター周りの黒いプラスチック感が目立つことだろうか。 見たままの高級感だけでも十分に魅力的だが、さらにオーナー好みの仕上げも楽しめる。こうした満足感は2695万円を払ってこのクルマを手にしなければ味わえない、想像を超えるものがあるだろう。 すべては贅沢さや余裕を演出するために試乗で触れた限り、ベンテイガは高級で優雅な世界観を得られるよう、全ての要素においての余裕や予想を超えた要素を大事にしているようだ。それはベンテイガを目にした瞬間から始まっている。 重厚なドアを開ける。ドアと連動する格納式の乗降ステップの設定がないのは意外だが、エアサスペンションの乗降モードが機能して低くなったベンテイガにエスコートされるように乗り込む。ここでVWグループの別モデルと共用されたボタンやスイッチやステアリングといったパーツを発見した人は夢から覚めるかもしれないが、シートのやさしい触感や作り込みの上質さには満足するはずだ。 こんな雰囲気の中では、気持ちに余裕が生まれるというか、他のクルマではしないのに、助手席のドアを開け女性をエスコートしたくなる。ふだんは飛ばすのに雰囲気にあった優雅なマナーで走ったりもする。クルマを変えればその人のライフスタイルが変わるのは当然だが、ベンテイガの世界観は心理にさえ影響する。 動力性能の余裕も忘れてはならない。掛かっていることを忘れるほど滑らかで静かな6L W型 12気筒をツインターボ武装したエンジンは最高出力608ps/最大トルク900Nm。0-100km/h加速を4.1秒でこなし、周囲のクルマを置き去りにできる。約2.5トンのビッグSUVに鈍重な感覚がないのは見事だ。 大きくハンドルを切ると4輪駆動のデファレンシャル系の制御がギクシャクするのか引っかかる動きなども出てくるが、基本は重厚なのに速くて軽快で滑らかだ。望むパワーがいつでも手に入る余裕の走りはオーナーのゆとりを生み、周囲のクルマのルーフを見下ろせるビッグSUVらしい開放的な視点と相まって、優雅な気分を味わえるだろう。 日常域では優雅な走りだが・・・最初の驚きは車両重量が約2.5トンしかないことだった。ボディサイズや装備を考えると2.8~3トン弱を予想したが、アルミ素材などを駆使して従来の車体構造比で236kgの軽量化を実現し2.5トンを実現。超強力なエンジンと相まって、余裕の加速力を生み出すからこそ、ベンテイガの世界観に浸れるのだが、その極みは乗り味にある。 足回りは車重を利用した味付けだ。これだけ柔軟で乗り心地重視の足回りにしたら、真直ぐ走っている時でさえ路面のうねりでフワフワしそうだが、それを2.5トンの重さで上から押さえ付けている印象。瞬間的な入力にも柔軟に対応するエアサスの特徴もあって、路面からの入力に丸みが絶えずあり、ジワーッと大きな揺らぎで車体が動くような独特の乗り味を生んでいる。これがクルーザーに乗っているような優雅な心地よさを生み、飛ばそうという気持ちさえも収まってしまうのだ。その結果、22インチタイヤでも硬さなどは微塵も感じない。 通常、こうしたセッティングではカーブでグラッと大きくロールすることになるが、そこをカバーするのがベントレーダイナミックライドだ。他の高級SUVのように電子制御ダンパーを使って各足回りの動きをコントロールするのはもちろん、カーブで車体が傾くのを抑制するスタビライザーを電子制御で自在にコントロール。さらには電動パワーステアリングも統合制御して車体の無駄な動きを抑制している。 では飛ばすとどうなるのか? 率直に言うと2.5トンのボディが災いして、操作に対するレスポンスなどに鈍重さを感じることになる。極上に滑らかだった8速ATもギクシャクし出し、変速ショックを発生することもある。ブレーキの利きも不安だ。強引なハンドル操作をすれば、クルマはロール制御などで踏ん張ろうとするが、腰高感は否めない。子供ぐらいの身長なら簡単に死角に入る大型ボディは、交差点などでは急ぐほどに危険性を増すことになる。 そう考えると高額な車両代金を払えるだけでなく、優雅な走りができるゆとりも、ベンテイガのオーナーには求められるのかもしれない。 スペック【 ベンテイガ 】 |
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