1.4Lターボ×FWDのエントリーグレードアウディA4アバント 1.4TFSI スポーツというのは、現行A4アバントに後から追加されたFWDモデルの上位グレードだ。アウディといえばクワトロ(4WD)の印象が強い。クワトロはあらゆる場面でトラクション能力が高く、低ミュー路や不整路など、不安定な状況でのスタビリティ性能も高いという実利だけでなく、メカニカルでマニアックでハイテックなイメージも得られる。「クワトロに乗る男」と「FWDに乗る男」では前者のほうがデキそうな感じだ。果たして、本当にそうだろうか。また、このサイズのFWDとなると同グループのVWパサートと比べてどうかということも気になる。このあたりを確かめるべく試乗した。 新しいA4は、先代よりも大型化したうえに仕立ても立派になって登場した。その結果、セダンの最も安価なモデルでも500万円を超えた。A4はこの世代から上級移行するのかなと思わせたが、このほど相対的に安価な1.4リッター直4ターボを搭載したセダン(447万円~)/アバント(476万円~)が追加された。ライバルのメルセデス・ベンツは1.6リッター直4ターボエンジンを搭載したC180(436万円~)を、BMWが1.5リッター直3ターボエンジンを搭載した318i SE(409万円~)をそれぞれラインナップすることからもわかるように、このセグメントはプレミアムブランドも、いやプレミアムブランドこそ、こぞってダウンサイジング・エンジンを採用する時代だ。 スタイリングは先に発売された2.0TFSI搭載モデルと変わらない。目新しさはないものの、内外装ともに仕立てがよく、長く使っても満足感が持続しそう。前後席ともに広々としているほか、ラゲッジスペースは通常時で505リッター、リアシートを倒せば1510リッターの容量を誇るため、ユーティリティー性能に優れる。 速くて軽くてお財布にやさしいA4アバント 1.4TFSIに搭載されるのは、同じVWグループのパサートが搭載するのと同じエンジンで、最高出力150ps/5000-6000rpm、最大トルク25.5kgm/1500-3500rpmを発揮する。トランスミッションもパサートと同じ7速デュアルクラッチ。アウディの呼称だとSトロニック、VWだとDSGだ。このパワートレーンで1490kgの車重を動かすのだが、これが全域で十分以上のパワーを感じさせ、いかなる状況でも満足することができた。2.0TFSIを搭載したFWDモデルよりも90kg、同クワトロモデルよりも140kg軽いことが大きくプラスに働いているのだろう。 近頃のよくできたターボエンジンらしく、わずか1500rpmで最大トルクに達するため、踏めばどの速度域からでも即座に望む加速力が得られるので走らせやすい。だからといって、ディーゼルエンジンのようにすぐに頭打ちになるのではなく、5000-6000rpmという“点”ではなく“ゾーン”で最高出力を維持するので、加速は伸びやかだ。暴力的に速いのではなく、気持ちよく、胸がすくように速い。高速道路の合流で加速した後、「公道を走らせるならこれくらいで十分だと思うんだ」と話せば、ちょうど知的に見えるくらいの加速力だ。 タイヤのグリップ力の範囲内で走らせる限り、FWDモデルでもなんの不満もない。正確で挙動を予想しやすい素直なハンドリングに終始する。クワトロは鋭い加速をするためだけではなく、緊急時の保険というか安全マージンとしても機能するので、決して否定するものではなく尊敬に値するが、裏を返せば日常的にその恩恵を感じられるものでもない。FWDはシステムがシンプルで軽くでき、機械的フリクションも少ないので燃費面で有利だ。そしてこれが大事だが、価格的にお得だ。 絶対評価としては素晴らしいモデルだが…プレミアムブランドを選ぶ理由のひとつに、ベーシックモデルを選んでも、主要な安全装備が標準かオプションで用意されていることが挙げられる。A4の場合も、衝突軽減ブレーキの「アウディプレセンスシティ」が全グレードで標準装備される。 とはいえ、せっかく現行アウディ車で最も先進的な安全装備を誇るA4を選ぶなら、テスト車にも装着されていた43万円のオプション「セーフティパッケージ」を、高くても選ぶべき。これにはトラフィックジャム機能(渋滞時など低速でステアリングアシストしてくれる)付きACC、アクティブレーンアシスト(60km/h以上での車線維持アシスト)、アウディプレセンスリア(接近する後続車を検知すると衝突に備え、ハザードランプを点滅させ、シートを適切な位置に合わせ、ウインドウやガラスルーフを閉める)、アウディサイドアシスト(斜め広後方からの車両接近を警告)、リアサイドエアバッグ、サラウンドビューカメラなどが含まれる。 ただし、A4アバントは、FWDの1.4TFSI スポーツだと、VWパサートヴァリアント TSIハイライン(463万9000円)と比較して、サイズはほぼ一緒、パワートレーンはまったく同じということになる。加えて、このTSIハイラインには、アウディのセーフティパッケージに含まれる装備のうち、トラフィックジャム機能付きACCやアクティブレーンアシスト、それにアウディサイドアシストやリアサイドエアバッグと同様の装備が“標準”で備わる。 こういう風に理詰めでスペックだけを比べると、たいていプレミアムブランドは不利になると相場が決まっている。けれど、プレミアムブランドは内外装によい素材が用いられ、丁寧につくり込まれている……というパターンの記事をこれまで多数書いてきたし、読んでもきた気がする。ただし、現行パサートについて言えば、内外装ともに品質は相当高く、静粛性も高いレベルを実現している。コストパフォーマンスが高いのはパサートヴァリアントだろう。 一方、どちらがモテるか? これは性能や装備では決まらない。モテるかどうかなんてどうでもよいようでいて、それがそうでもない。リセールバリューというのは、目に見えず理屈で説明できない“印象”も加味されて決まるからだ。買うときにはアウディが割高に思えるが、売るときにはそれを取り戻せる可能性も十分にある。 などといろいろなことに思いをはせてみたものの、アウディA4アバント 1.4TFSI スポーツそのものにまったく罪はなく、絶対評価としては素晴らしいモデルだが、パサートがあるにもかかわらずわざわざA4を選ぶなら、アウディでしか得られないクワトロモデルを選んでみたいという結論に達した。 スペック【 A4 Avant 1.4 TFSI sport 】 【 A4 Avant 2.0 TFSI quattro 】 |
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