レクサスブランドを牽引する量産ラグジュアリークーペレクサスからクールな高級クーペ「レクサスLC」が誕生した。フェラーリ、ポルシェ、ベントレー、アストンマーチンなどが牛耳るラグジュアリー・スポーツクーペの世界だが、BMW 6シリーズやマセラティも得意としている。このセレブな世界に大衆車から発展したトヨタ=レクサスがついに足を踏み入れたことは感慨深い。 2012年のデトロイトショーでレクサス・ブースに展示された真紅のクーペ「LF-LC」を見て、自分も開発をお手伝いしたことがある「LFA」の後継モデルとして試作されたのだろうと直感した。LFAはカーボンモノコックのスーパースポーツとして誕生したが、レクサスのイメージを牽引するにはどうしても量産モデルが必要だったのだ。 「LF-LC」は“ポストLFA”として開発されたプロトタイプだったのである。「LC」にはレクサス・チャレンジの意味も込められ、その意気込みは熱い。ショー会場でインタビューした担当役員は、量産型LF-LCはハイブリッドをコアにして、他に類を見ない新しい高級クーペを作りたいと語ってくれた。私はその言葉の裏に、レクサスブランドを磨き上げる決意を感じたのである。 レクサス第3世代のスタイリング国際試乗会はスペインのアンダルシア州セビリアで開催された。8~13世紀にかけイスラム勢力に支配された後、キリスト教徒が住みついたという街だけに、民族多様性が漂う居心地が良い街をレクサスLCで走る。包み込まれるようなコクピットだが、ドライビングポジションを低目にセットしても前方視界は良好だ。これならサーキットでも狙ったラインをしっかりと見ることができるし、町中の安全運転にも寄与するはずだ。 ショーウインドーに映る姿を見ると、エモーショナルなスタイルに酔いたくなる。“チャプター3”と言われるレクサスLCはより大胆なスピンドルグリルが与えられ、ディテールにこだわってデザインされたエクステリアはエレガントなスポーツクーペに相応しい。 新開発シャシーは完全にドイツ車レベルこのLCから、レクサスのために開発されたFRプラットフォーム「グローバル・アーキテクチャー・ラグジュアリー(GA-L)」が採用された。同等性能の従来型プラットフォームと比較すると約100kgの軽量化を実現しているのも意欲的だが、最大の進化はエンジンの搭載位置を50mmキャビンに近づけ、前輪を80mm前方、乗員位置を80mm後方にレイアウトしたことだ。 その結果、ロングノーズ&ショートデッキというクラシカルな高級スポーツクーペのフォルムが完成。エンジンが低重心化されてダッシュボードも低くなったので、良好な視界が得られたことも嬉しい。ボディサイズは全長4770×全幅1920×全高1345mmと、宿敵と想定されるBMW 6シリーズよりも短くワイドなボディで、いかにも安定性の高いダイナミックな雰囲気をもっている。 新開発プラットフォームの効果は大きい。ハイスピードドライビングでは重量配分の最適化と低重心化、さらに高いボディ剛性のおかげで、乗り心地とダイナミクスが飛躍的に高まっている。サスペンションのストローク感、バネ上ボディのダンピングのバランスは完全にドイツ車レベルに達している。ダンパーは日立製とのことだが、日本のサプライヤーの実力も高まったものだ。これなら6シリーズと正々堂々と戦えるはずだ。 V8×トルコンATとV6ハイブリッド×10速CVT試乗での最大の注目はV8かハイブリッドか? かもしれない。「LC500」と「LC500h」というモデル名が示すようにエンジンは5.0L V8と3.5L V6ハイブリッドが用意される。V8には新開発の10速トルコンAT、ハイブリッドには10速の電気CVT(マルチステージハイブリッドシステム)が採用された。ともに新開発、パワートレーンのキーワードは“10”らしい。 多段化は魅力的だが、開発担当者の苦労は倍増するはずだ。きめ細かい制御を走行シーンごとにチューニングする必要があるからだ。トヨタの場合、従来のギアボックスは「燃費」という価値観に縛られすぎており、ドライバーが楽しめるギアボックスの開発という文化がなかったが、LCはそこにチャレンジした。 エンジンはアメリカがV8、欧州が燃費に厳しいのでV6ハイブリッド、日本がV8とV6ハイブリッドの2本立てだが、マーケットはどう反応するだろうか? どっちが好きか聞かれたら右脳派のV8と答えようまずはサーキットでチェック。さすがに自然吸気の5.0L V8は希少価値だ。アドレナリンが出る量で言えば自然吸気のV8に敵うものはない。従来のアトキンソン型5.0L V8を直噴技術でチューニングしたとはいえ、477ps/540Nmのパワーとトルクは立派だ。 ターボ時代にあえて自然吸気を持ってきたことについては、「いいじゃない、その戦略!」と讃えたい。リニアな加速、シフトダウンのブリッピングの気持ちよさ、自然吸気V8はとにかく楽しく「こいつはやはりLFA譲りのスポーツカーだ!」と感じてしまう。0-100km/h加速は4.5秒以下(今のところ正確な数値は非公表)。ちょいウェットのサーキットではドリフトコントロールもしやすい。燃費は復路の高速でクルーズしてリッター11~12km。V8自然吸気のLC500は右脳派にオススメだ。 ドリフトも楽しめる左脳派のステルス・ハイブリッド次にV6のマルチステージハイブリッドシステムを味わう。加速感、パンチ力ではV8に敵わないが、静かに加速するハイブリッドはちょっと知的だ。パドルでギアダウンするとエンジン回転が上がるが、モーターでエンジン回転を引き上げるので音がしない。静かにギアダウンする姿は「お前はステルスか!」という感じだ。個人的にはギアダウンの音やショックも欲しいが、やり過ぎるとハイブリッドのメリットがなくなってしまう。 トラクションコントロールをカットするとサーキットではドリフト走行が楽しめる。ハイブリッドでドリフトを楽しめるなんて初めての経験だ。左脳派にはV6ハイブリッドのLC500hをオススメしよう。 10速のマルチステージハイブリッドシステムを開発したレクサスのエンジニアは左脳派的に頭がキレるが、右脳で走るドライバーの話も必死で聞いてくれる。理屈で考えるだけでなく、感覚でクルマの走りを捉えているのが頼もしい。燃費は往路の高速走行でリッター16km。0-100Km/h加速は5秒以下なのでタイム的にはV8より10%ほど劣っているが、走り味はまったく違う。 V8ガソリンを超えるハイブリッドシステムが目標ワインディングも楽しめた。ステアリングを切り込むと、自然にノーズがインに引き込まれる感覚だが、手応えはBMWほどダイレクトではない。レクサスとしては過敏すぎず、足りないところもない、ちょうど良い湯加減にまとめているのだろう。 “人馬一体”は他のメーカーが好む言い方だが、クルマの旋回中心(重心点)に着座しているので、ノーズの動きも、テールの動きも手にとるように分かる。この日はウェットだったので、逆に挙動が分かりやすいのはありがたかった。 乗り心地も良かった。タイヤは20と21インチのランフラットを履くが、石畳や路面の悪いところでもランフラットの硬い・重いという印象はなく、両サイズともミシュランが快適だった。 マルチステージハイブリッドシステムでどこまで攻めるのか? 開発担当者に聞くと、ポルシェのPDKのように油圧でギアを切り替えていないので、マルチステージハイブリッドシステムはもっと速く変速できるらしい。個人的には今のところV8をチョイスしたいが、マルチステージハイブリッドシステムの未来は明るそうだ。V8ガソリン車を超えるハイブリッドを作りたいと熱心に語るレクサス開発陣が印象に残る試乗会となった。 【欧州のラグジュアリークーペへの挑戦『Lexus LC500/LC500h』in Spain】 スペック【 LC 500 】 【 LC 500h 】 ※一部は参考値 |
GMT+9, 2025-6-25 11:38 , Processed in 0.051691 second(s), 17 queries .
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