サイズ拡大傾向とは一線を画す全長3400mm以下で全幅1480mm以下――そう定められた軽自動車の枠をわずかながらも超えたサイズのボディに、やはり660cc以下と決められた排気量枠を外れた1リッター・エンジンを搭載。当時のベストセラー軽自動車でもあったワゴンRをベースとしながら、「コンパクトさを特徴とする普通車」として独自のキャラクターをアピールしつつ発売されたのが、1997年に誕生の、その名も「ワゴンRワイド」だった。 現在発売中の「ソリオ」は、その流れをダイレクトに受け継いだモデル。3710×1625mmという全長×全幅は、前出ワゴンRワイドに比べればさすがにそれなりに大型化。が、特に幅方向にはいわゆる5ナンバー枠の限界である1700mmに対して、まだまだ余裕がある大きさだ。 ボディサイズ拡大の潮流が止まらず、全長は短くても幅が広過ぎて日本の環境下では使い辛い…、と思えるモデルが増えつつあるのが世界的な傾向。そうした中にあって、その傾向とは一線を画した真のコンパクトさこそを売り物としている点が、このモデルのパッケージングで最大の特徴と言ってもいいはずだ。 そんな現行ソリオ・シリーズに追加されたばかりの最新バリエーションが、ここに紹介をするソリオのハイブリッド・モデル。今回テストドライブを行ったのは、より個性あるルックスを謳うバンディットだ。 トランスミッションはCVTから2ペダル式5速MTへソリオ・シリーズに新型ハイブリッド・モデルを追加というニュースを耳にして、「あれ、ハイブリッドなら前からあったじゃない」という人の意見は、実は全くその通り。グレード名にハイブリッドを含むモデルは、2015年夏の現行型発売時から、シリーズ中に確かにラインナップされていた。 ただしその実態は、軽自動車では「S-エネチャージ」という名称を用いる、スターター・ジェネレーターによってアイドリング・ストップと加速時のエンジン出力低減を実現させた、いわゆるマイルドハイブリッド・システム搭載車。 そもそもが、モーター出力分だけエンジンに”楽”をさせることで燃費を向上させる、というコンセプトゆえ、こちらではモーターパワーの上乗せを実感することは出来ないし、減速時には発電機として作用するモーターの出力もわずかに2.3kW(≒3.1ps)に過ぎず、今回追加をされたフルハイブリッド・バージョンの10kW(≒13.6ps)とは差があるために、回収が可能なエネルギー量にも大差が生じ、それも燃費差を生じる理屈となる。 今回追加設定をされたのは、従来のマイルドハイブリッド・システム搭載モデルをベースに、より大容量のバッテリーと大出力を発するモーターを加え、いわば”ハイブリッドらしさ”の強化を図ったもの。 ちなみに、両システムに採用される1.2リッター・エンジンは同スペック。ただし、組み合わされるトランスミッションがCVTから「5AGS」を名乗る2ペダル式5速MTへと変更されたのは、「軽量・コンパクト化とコスト面でより有利なため」であるという。 変速時の駆動力をモーターが補填リアコンビネーション・ランプがクリアレンズ化されたことを最大のポイントに、これまでのモデルに対する外装面の変更はごくわずか。一方で、ドライバーズ・シートへと乗り込めばダッシュ中央のクラスター内にモーターパワー・メーターが新設されたことで、こちらは違いが一目瞭然だ。スターターボタンを押すと「システムチェックのため」という理由で必ずエンジンが始動するので、この時点ではストロングハイブリッド・モデルならではという印象を感じることは不可能。 アクセル操作に対する加速感や空調の作動条件を変更させるモード切り替えは、標準とエコという2種類の設定。Dレンジを選択してブレーキペダルを踏む力を緩めると、前者ではこの時点でエンジンが始動してクリープ力が発生し、後者の場合にはモーターのみによるクリープ力となるのが基本のパターンだ。 アクセルペダルを踏み加えると、なるほどエンジン回転数に対して予想と期待をした以上の力強さが得られるのは、今度はストロングハイブリッド・システムの持ち主ならでは。もちろん、踏み込み量に対する加速力の現れ方は、エコモードの方が明確にマイルドだ。 2ペダル式MTでありながら、さしたる発進加速力の必要ない場面でアップシフト時の加速力が殆ど途切れないのは、変速時にクラッチが切り離された場面でも、その間の駆動力をモーターパワーが補填してくれるゆえ。モーター最高出力が10kWなので、さすがにフル加速シーンでは息つき感を解消し切れないが、この制御は日常的にメリットを味わわせてくれる大きなポイントだ。 ちなみにかつて同様の印象を、ディーゼル・エンジンに2ペダルMTを組み合わせ、フロント駆動系はベース車両そのままに後輪側にモーター駆動システムを加えて、“世界初のディーゼルハイブリッド・モデル”を謳った「ブジョ-3008ハイブリッド4」のヨーロッパでのテストドライブで感じたことを思い出した。 力強い加速や高い静粛性などメリットはあるが…「60km/h以下での軽負荷時にはEV走行を行う」という謳い文句は、基本的にはその通り。「巡航時にエンジン出力に余裕がある場合、効率良く発電して充電量を確保し、アシスト頻度を高める」という制御も、マルチインフォメーション・ディスプレイ上のエネルギーフロー表示で、頻繁に行われていることが読み取れた。 一方で、「40km/h巡航時で2km程度」とされるように、EV走行可能な距離がさほど長くないのは、ラゲッジフロア下にコンパクトに収められたバッテリーの容量と大きな関連がありそう。エンジン始動は見事にスムーズな一方で、アクセル踏み込みに対しては「すぐに掛かってしまう」という印象が強いのは、ハイブリッド・モデルならばもう少しEVテイストを味わいたいという人にとっては、ちょっとばかりの不満点となってしまうかも知れない。 従来のマイルドハイブリッド・システム搭載モデルとの価格差は、ひと声20万円プラスというところ。そして、端的に言ってしまえばこうした価格の違いを、燃費向上による燃料代の差で逆転させるのは、まず不可能な相談。前述の力強い加速感やEV走行時の高い静粛性など、このグレードならではのメリットは確かに認められるものの、最大の特徴である燃費の向上が、しかし実は”エコノミー”には繋がらないと気が付けば、伸ばした食指を引っ込めてしまう人も少なくないかもしれない。 そうした点を踏まえると、スズキが敢えてソリオ・シリーズに2種類のハイブリッド・モデルをラインナップに並べる理由は、どうやら燃費面でのメリットのみには留まりそうにない。かつては軽自動車メーカーというイメージが強かったものの、最近ではバレーノやイグニスといった軽自動車の枠を超えたブランニュー・モデルを相次いでローンチし、スイフトの刷新も間近に控えるのがこのブランド。 そんなタイミングで、ソリオに新開発されたストロングハイブリッド・システムを搭載したモデルを加えるのは、”普通車メーカー”としての存在感をますます強くアピールするという、プロモーション効果面でのメリットも大いに考えられるからだ。 スペック【 ソリオ バンディット ハイブリッド SV】 |
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