随所に盛り込まれた目を引く造形レクサスブランドの展開スタートが遅れた日本では、その発足当初である2005年からのラインナップが事実上の前任モデルで、海外市場ではすでにレクサス・バッジを付けて販売されていた「トヨタ・アルテッツァ」から数えれば18年以上と、意外にも長い歴史の持ち主がインテリジェント・スポーツを車名の由来とする4ドア・セダンの「IS」だ。 今回紹介するのは、2013年に発売された現行型に比較的規模の大きなリファインが加えられ、日本では2016年10月に発売されたマイナーチェンジ版。レクサス自身はその特徴を、「革新的なデザイン、エモーショナルな走りを体現するFRスポーツセダンのさらなる進化」というフレーズで表現している。 スピンドルグリルを主役に据えたフロントマスクを採用して以来、「好き嫌い」という好みは大きく分かれることになった一方で、固有のブランドとしてのアピール力は着実に高まったのがレクサス。最新ISのエクステリアデザインも、そんな昨今の作品が「大胆であること」を後ろ盾としていることが、改めて明確に納得出来る仕上がりだ。 下部をよりワイド化したスピンドルグリルや、より高さを増したバンパー下部両端のブレーキダクト用インテークなどが目立つ新しいフロントマスクは、従来型以上に大胆な造形。リアコンビネーションランプもレンズ内部にL字型グラフィックが層状に並べられ、立体感が強められている。 いずれも、ちょっとばかりの奇抜さを伴う仕上がりだが、それもまたこのブランドの作品の、昨今の流儀であると言えそう。ともかく、目を引く造形が随所に盛り込まれるのが、このところの”レクサス・ルック”の特徴なのである。 プレミアム・モデルとしての評価を下げる残念なポイント一方で、水平基調の薄いダッシュボードに高いセンターコンソール、という組み合わせが基本のインテリアは、従来型からのイメージを強く継承。スポーツセダンを自称しながら、意外にも包まれ感が薄いというのも従来から変わりのない印象だ。 ただし、ダッシュボード中央の高い位置にレイアウトされたディスプレイは今回大型化され、「用意されたスペースに対して、画面が不当に小さい…」という、これまでのモデルについてまわった違和感はようやく解消されることになった。表示画面を変更するための、センターコンソール上に置かれた操作部「リモートタッチ」側面に、新たにENTERボタンが追加されて操作性が向上していることにも気が付いた。 その他、オーナメント・パネルの素材変更や新内装色の設定などによって、「機能性と質感を高めた」と説明されるインテリアだが、残念だったのはタッチスライド式で微妙な操作がし辛い温度調整スイッチを筆頭として、同サイズ・同形状のボタンがズラリと並んで、やはり何とも操作し辛い空調コントロール・パネルのデザインに、改良の手が加えられなかったこと。 さらに言えば、すでに現行型のデビュー当初から時代遅れ感が否めなかった足踏み式のパーキングブレーキも、当然期待をしていた電動化への進化が図られなかったのも残念。また恐らくは、これと関連して前車追従機能付きクルーズコントロールの、全車速への対応化も見送られている。前車の速度が40km/h付近まで落ちるとISのクルーズコントロールは、従来と同様その追従機能を呆気なく放棄してしまうのだ。 厳しいことを言えば、未だそんなアイテムを用いているこの段階で、プレミアム・モデルとしての評価はガタ落ちとせざるを得ない。これは何とも残念なポイントだ。 限界域で知ることができる素性の良さマイナーチェンジが行われた最新シリーズの中で、今回サーキットと一般道をテストドライブしたのは主に「IS350 Fスポーツ」。1.6トン台半ばの車両重量に対して、最高318psを発する3.5リッターのV型6気筒エンジンを8速ATとの組み合わせで搭載。この期に及び、アイドリング・ストップメカが与えられなかった点に不満が残るものの、こうしたパワーパックのスペックはスポーツセダンの心臓部として、まずは納得が出来るものだ。 実際、その全てのポテンシャルをサーキットで開放すると、ポート噴射と直接噴射を適宜使い分けるV6エンジンは、全回転域で小気味良く吹けあがり、期待と予想通りのパワフルさを味わわせてくれる。思いのほかタイトな駆動力の伝達感が味わえるATの出来栄えもなかなかだ。 今回のサーキット・ドライブには、「GS F」や「RC F」といった、レクサス自慢の5リッターV8エンジンを搭載するモデルも用意されていた。最高で477psというモンスター級のパワーを披露するそうしたモデルと比べれば、IS350 Fの走りの迫力が可愛いものに映ってしまうのも間違いない事柄ではある。 とはいえ、そんな怒涛の速さを備えるFモデルと比しても負けていないのは、その走りのバランス感覚の高さ。例えば、基本的にはコーナーで弱いアンダーステア傾向を示しつつも、「ちょっとフロントが外に出て行ったかな」と察した時点でアクセルペダルを踏む力を緩めてやれば、元のラインに穏やかに戻ってくれるあたりに、いかにも良く出来たFRレイアウトの持ち主ならではの動きを実感することが出来るのだ。 現実問題として、このモデルをサーキットに持ち込もうという人は多くはないだろう。が、こうして限界域までチェックしてみると、その素性の良さを明確に知ることが出来る。サーキットでも退屈しない走りを、このモデルはしっかり提供してくれたのだ。 一般道でも好印象。気が早いが次期ISにも期待が高まるそんな閉じられたサーキットから、一般道へと舞台を広げると、端的に言って走りの好印象はさらに加速されることになった。 ザラメ状に荒れた路面に差し掛かると、思った以上にロードノイズのボリュームが上がってしまったのは、ちょっとばかり興ざめなポイント。が、18インチと大きなシューズを履くにも関わらずばね下の動きは軽やかで、研磨が行き届いたギア同士が噛み合っているかのようなスッキリとして軽やかなステアリング・フィールを実現……と、このあたりの感覚が、いかにもプレミアム・ブランドの作品らしい上質な走りのテイストを導いている。 フロントサスペンションのロワアームをアルミニウム製へと変更したことを筆頭に、今回のマイナーチェンジでは細部に至るまで、様々な足回り部品のチューニングや電子アイテムの制御方法にリファインが加えられたという。前述のような走りの好印象は、それらの集大成と言えるはずだ。 率直なところ、それは特に大きな跳び幅とは言えないし、「そんな事は気にしない」というユーザーにとっては、そうした部分に拘る結果、価格の上昇に繋がるような事態はとても理解がし難いということになるかも知れない。が、仮に遅々とした進歩ではあっても、今回のリファインによってレクサスが本来目指すべき方向へと進んでいることは実感出来る。気の早いハナシかも知れないが、今から次期ISの出来栄えが楽しみになるような、そんな仕上がりぶりでもあるということだ。 すでに記してきた、プレミアム・モデルとしてあるまじきポイントを筆頭に、まだまだやるべきことは多いとは思う。が、このISを含め、最新モデルたちに横軸を通して眺めると、「ようやくにして、あるべき姿が見えてきた」と、そうも感じられる最新のレクサス車なのである。 スペック【 レクサスIS350 Fスポーツ 】 |
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