より個性的なアピアランスに変化「カングー」「トゥインゴ」と並ぶルノー3本柱のひとつ、「ルーテシア」がマイナーチェンジ。とはいえパワートレイン系の変更は去年の春すでに行われており、今回はルノーのデザイン戦略である「サイクル・オブ・ライフ」を基軸に、そのアピアランスをより個性的なものへと改めることが主題だ。 ちなみにサイクル・オブ・ライフは6つのテーマを持っており、ルーテシアが担当するのは最初のステージである「LOVE」。パリで一番売れているBセグハッチ、そのコンパクトなボディに男女二人が乗り込んで、近しい空間で愛を育むという筋書きだろうか。文字にするとちょっとこっ恥ずかしいけれど、そんなロマンチックな妄想も似合うから、欧州車は楽しい。 マイナーチェンジで目を惹くのは、日本市場では初となる「Cシェイプランプ」。フルLED化されたライトはスモールランプと兼用の常時点灯タイプで、施錠時に一定時間タイマー点灯して周囲を照らすウェルカムランプ機能も装備している。またフォグランプを内蔵したバンパーはよりアグレッシブなエアスクープ形状となり、その目ヂカラと共に、これまで「RS」以外は大人しめだったルーテシアの印象を大きく変えた。 このアピアランス変更と同時に、上級仕様の「インテンス」には3色のダッシュボードトリムカラーと2色のシートカラーを用意した。これはボディカラーとコーディネイトされる形式で、たとえば今回の試乗車「ルージュドゥフランスM(メタリック)」には、ルージュ(赤)のトリムとシートが同色カップリングされている。 装備面は中途半端な印象もということで機関的なブラッシュアップはまったくされていないルーテシアだったが、サポート性が大きく向上したシートに座りながら、その新しいインテリアに囲まれて走ったその印象は、確かに以前とは違うものだった。 トリムが赤ワインのように深みを帯びていたこともあるだろうが、車内の雰囲気には落ち着きがあり、それまでの生活感が強い印象が一転して大人びた(そのドメスティックさも魅力だったが)。メガーヌと同型状になったステアリングも握り部分のフィット感が高く、Bセグメントのハッチバックらしからぬ質感を醸し出している。 ただしBセグメント丸出しの部分もいくつかある。ドアの閉まる音は“バシーン!”と薄っぺらいし、よく見れば大径ホイールのスポークに隠れたリヤブレーキはディスクではなくドラムだ。それが放熱性に優れたフィンタイプであり、性能的にも十分なのはわかるけれど、思わずそこで「あぁ、ルーテシアってBセグなんだよなぁ」と思った。 またACCやオートブレーキシステムといった安全装備が標準化されていないのも、ルノーの痛いところだ(オプション設定も無し)。ちなみに本国ではオートパーキングの機能は既に導入済みだというが、これらはナビと連動する制御の関係から、日本には導入できていないらしい。それでいてボンネットダンパーが装着されているなどチグハグな面もあり、まだまだプレミアムBセグメントを名乗るにはちょっと中途半端な印象も受ける。そういう意味では、マツダ・デミオの方がクオリティは高い。 “しなやかさ”を消してしまう17インチタイヤの採用特に17インチの採用はNGだ(インテンスのみ)。新意匠の多角形ホイールは鮮烈だが、205/45R17のタイヤサイズが、ルーテシアの素晴らしき特徴である“しなやかさ”を帳消しにしてしまっている。これは主にミシュラン「PRIMACY3」のトレッド剛性が高く、ルーテシアが本来持つ、まったりとした運動性能にミスマッチ感を与えていることが原因だろう。操舵に対するグリップの立ち上がりが早すぎるため、真っ直ぐ走っていても路面のギャップでチョロチョロとノーズが動き、その挙動はそわそわと落ち着かない。 ルノーは6速EDC(エフィシエント・デュアルクラッチ)の断続を、耐久性なども考慮し敢えて緩慢にしていると思うのだが、17インチだとこの妙味も活きない。ホットモデルである「RS」張りに鋭いコーナリングに対してその変速スピードが緩慢で、物足りなさを感じてしまうのだ。 もちろんそれはエンジン出力にも影響する。1.2リッターの直噴ターボはその出力が118psと、お世辞にもパワフルなエンジンだとは言えないが、205Nmのトルクを使って粘り強く走ってくれる良質なユニットだ。しかしその出力はタイヤに若干パワーを食われ、その実直さが消えてしまっている。特に全開加速をかける高速道路の合流や登坂道などでは、その印象が顕著だ。 矛盾を抱えて楽しめる人にそういう意味では、今回試乗は叶わなかったが5MTのベーシックモデル「ルーテシアS」(0.9リッター/90ps)が履く、195/55R16サイズの方がマッチングするだろう。もしくはタイヤのランクをひとつ落としてもいい。 デザインで訴求力を高めるうえで、ホイールの大径化は一番手っ取り早い。しかしタイヤの能力をジャストに使い切り、サスペンションをほどよくロールさせながら走るのがルーテシア、もっと言えばルノーの良さである。そして日本のルノーユーザーは、その良さをとっくに知っている。マニアと言われたらそれまでだが、まるでうまいフランスパンを噛みしめるような、その素朴な芳醇さをわかっているのである。新規ユーザーを迎えるにしても、見た目よりもこの味わいをルノーの魅力としてルノー・ジャポンには伝えていって欲しいと思う。 「でも……かっこいいんだよね」。駐車場に佇むルーテシアを見ていると、本当にそう思う。その矛盾を抱えて楽しめる人にこそ、ボクはルーテシアを勧めたい。完璧を求める人には、不向き。でも人生を豊かに生きるコツが、スペックにはないことを知っている人ならば、きっとその良さを味わうことができるだろう。 スペック【 ルーテシア インテンス 】 【 ルーテシア S MT(100台限定) 】 |
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