お洒落でエレガントなフルサイズSUVの登場2018年の世界販売目標を7万台に。成長拡大戦略を掲げるマセラティのそれは、この「レヴァンテ」の成功をもって達成されるだろう。 ラグジュアリーなスポーツブランドとしてマセラティは、ビックセダンの「クアトロポルテ」、弟分の「ギブリ」、クーペモデルの「グラントゥーリズモ」、そしてオープンモデルの「グランカブリオ」をラインアップしてきた。そして、いま最も熱いラグジュアリーSUVセグメントに向けて、今回試乗したレヴァンテを導入してきた。 2016年のジュネーブショーで見た瞬間から、売れないわけがない! と確信したものだ。それほどまでにカッコいい・・・いやオシャレといった方がしっくりくる仕上がりだ。同じラグジュアリーでもドイツ勢とは雰囲気が全く異なる。レヴァンテにはどことなく芸術的要素がそこに加わっている感覚がある。 マセラティを強く印象づける大きく口を開けたようなマセラティグリルは迫力を備えながらも、その奥にグリルシャッターが付いていて、通常時はラジエターなど野暮なメカは見えない。そしてルーフからリアエンド、そして後端のDピラー部の造形が美しい。荷室容量は少し犠牲になっているだろうが、リアタイヤに向けてのサイドの盛り上がりやアーチの形状が綺麗でエレガントという表現を使いたくなる。 こうした造形によってレヴァンテは単独で見る限りフルサイズSUVに見えないことも大きな特徴だ。ボディサイズは全長5003mm×全幅1968mm×全高1679mm。これだけのボディサイズをスマートに見せる。そこにデザインの巧さを感じずにはいられない。 感性重視のイタリアンシックな内外装このクルマには“エスコート”という表現を使いたくなる世界観があるが、それは乗り込む時から感じる。まず、エアサスペンションが車高を落として乗降性を高めてくれる。スカートの女性はそれでも多少気を使うだろうが、乗降ステップが欲しいと思わせない高さまでクルマが出迎えてくれるわけだ。 インテリアの仕上げは外装と同様にエレガントという表現が似合う。時計で言えば、メタルベルトのギラギラ系の高級ではなく、革ベルトのシックな高級の雰囲気を漂わせている。肌触りのなめらかな革がダッシュボードやセンタコンソール脇にまで使われ、質の良さはもちろん、ちょっとアンティークが入ったような品格がある。 ここに電動パーキングブレーキや走行の各種設定ボタン、さらにはApple CarPlayやAndroid Autoに対応した8.4インチのタッチ式モニターなどがアクセント的に入り、ドイツ車とはまた違った世界観を醸し出している。樹脂パーツの使い方にプラスチック感を覚える人もいるかもしれないが、何にせよ感性に訴えかける仕上げだ。気になる人は実物を確認することをお勧めする。 フルサイズSUVだけあって前席のゆったり感は、優雅な移動をサポートしてくれるはず。後席は全長約5mを踏まえると、もう少し広くてもとは思うが、積載力とロングノーズのスタイリングを両立するパッケージと考えると仕方がないところか。ちなみにゴルフバックを積む場合はラゲッジルーム形状の問題でドライバーを抜く必要がありそうだが、絶対的な容量は大きいので安心していただきたい。 ノーマルモードではラグジュアリーな走り運転席に座ってみると、SUVなのに潜り込むようにも座れるシートポジションや、体の要所をしっかりと支えるシートのフィット感、強いフロントガラス傾斜など、視点こそ高いがクーペやスポーツカーのような雰囲気だ。Aピラーも太いので、右左折する際に歩行者が死角に入りがちではある。マセラティが手掛けるSUVだから、スポーツ性重視の攻めたクルマなんだろうと予想したのだが、走り出した瞬間に良い意味で期待を裏切られた。乗り心地が良い。 エアサスペンションの特徴として、路面の凹凸から来るショックの角をいなしてくれるのは当然だが、そもそも足回りがよく動く。強めのうねりのある路面を走ると、車体がややフワッとしてSUVの重心の高さを意識させられるほどだ。 正直、ワインディングで同乗者がいる際などは特に、速度やハンドル操作に気を使うかもしれないな…などと心配していたが、驚きはここからだ。ある程度速度を上げると、ハンドルを切った際のフワッとした動きが不思議なまでに消えて、しっかりしてきた。別物のサスペンションに変わったかのようで、おそらく電子制御ダンパーの減衰力設定が最適化されるのだと思う。 極め付けはスポーツボタンを押したときで全てが豹変する。エンジンの反応、シフトスピード、排気音、コシのある足回りの動き。どれをとっても刺激的でスポーティなドライブフィールになってくれる。 スポーツモードではキャラクターが全方位的に豹変スポーツボタンで最も分かりやすく変わるのは排気音だ。バイパスバルブが開き、止まっていても即座にわかるほど音が太くなる。エクゾーストノートの可変機能は最近では珍しいものではないが、レヴァンテのそれは変化の幅が過激なのだ。 ノーマル時はV型エンジンの低音を強調したドイツ勢なども採用しているドロドロ系。それがバイパスを開くと管楽器のような倍音成分と爆発音を主体にしたものになる。3.0L V6ツインターボ・ガソリンエンジンはマセラティとフェラーリのコラボレーションで開発され、マラネロのマセラティ専用ラインで組まれるが、まさにその背景を思わせる官能的な音。しかもターボでありながら高回転まで回転振動少なく鋭く吹け上がる。ちなみに室内だと低音系の吸気音が大きく、車外で聞くほうが官能的。だからドライバーとしてはトンネルに入るたび、ひと踏みして音の響きを楽しみたい衝動に駆られる。 足回りと駆動系も変化して、グラつき感が減り、ハンドルの手応えにズシッとした重さが備わる。さらに4WDの駆動配分も前にグイグイ積極的に進むように変化。カーブから加速する際、後輪がクルマを押し出しつつ、前輪が引っ張る量が増える感覚だ。これは悩ましいところで、率直に言うとフロントタイヤの駆動感が少ないノーマルモードの方が素直で洗練されたステアリングフィールをもっている。スポーツは4つのタイヤのグリップを駆動力にも旋回力にも余すことなく使い切るタイプで、速いし安定するが、ハンドルが重くなりすぎたり、グリップ力の変化が掴みづらくなったりする。レヴァンテの4WDシステムは、ギブリの4WDシステム・ギブリQ4をベースに仕上げたというが、今後は重量級レヴァンテ用にさらなる熟成が進んでいくのだろう。 マセラティ初のSUVであるレヴァンテが、ラグジュアリーSUV市場においてエレガントなデザインや快適性、サウンドを主体とした官能性能で存在感を示すのは間違いない。今後は「ポルシェ カイエン」や「BMW X5」、「レンジローバー スポーツ」といったライバル勢と、主にダイナミック性能の点でどう戦っていくのか、今後の熟成が楽しみになってきた。 スペック例【 レヴァンテ S 】 |
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