アシスト機能であることを強調テスラ・モデルSに乗る度にいいなと感じるのは、発進する瞬間、タイヤがまさに転がり始める瞬間がスムーズなところだ。これはEV、あるいは発進をモーターのみで行うHV/PHV、FCVでも感じることができる利点で、そのどれも未経験の方には新幹線を思い浮かべてもらうといいかもしれない。そして停止する瞬間にも同じようなことがいえる。 今回、日本で販売が開始されたばかりの隼の翼のようなドアをもつ「モデルX」ではなく、「モデルS」に試乗したのは、最新のソフトウェアである“バージョン8.0”が書き込まれたモデルに乗る機会を得たからだ。バージョン8.0はソフトウェアのアップデートとしては、バージョン7.0でオートパイロット機能が盛り込まれたことに次ぐ規模の変更となる。 細かい点を含めると200以上の変更となるが、まず注目のオートパイロット関連では、バージョン7.0に比べ、ドライバーに“これは自動運転ではなくアシストなのだ”ということを強く意識させる仕様になった。 ステアリングから手を離すべからず走行中、クルコンレバーを手前に2度引くとオートパイロットが作動する。セットした速度でクルーズし、先行車を検知すると、設定した車間を保って追従する。また、車線を認識し、ステアリング操作をアシストしてくれる。従来よりも車線の中央を維持する能力が向上したように感じた。車線を変更したければ、変えたい方向にウインカーを出せばよい。2秒間点滅した後、(変更先の車線に車両がなければ)自動的に車線変更される。ここまではバージョン7.0の段階で実現された。 従来はこれらの機能はステアリングホイールに手を添えていなくても警告が出なかった。テスラはオートパイロット機能について、オーナーに対し、ショールームに見に来た時、契約の時、納車の時の計3度、この機能はアシストであるということを説明すると決めているそうだ。けれど、作動中には警告が出なかった。これをバージョン8.0では、手を添え続けるよう注意するように変更された。一定時間を超えてステアリングホイールから手を離したままだと、メーターの枠が白く点滅する。何度かテストした結果、何秒間手を離せば警告が出るかはその都度違った。何度もテストするとすぐに警告が出るようになった。 この状態ではオートパイロットはまだ作動したままだ。引き続き手を離したままだと、ステアリングを握れという図式の警告がメーター中央に表示される。同時にアラームも鳴るようになる。視覚と聴覚で警告されるので、かなり不快な状態となる。さらに手を離したままだと、枠の点滅、警告に加え、ハザードランプが点滅し、速度が落ち、ほどなく車両は自動的に停止する。後続車が迫ってきて怖かったが、これはドライバーに意識があるからで、万一ドライバーが意識を失った場合、停止するのは適切な措置だろう。 将来の自動運転とEVはイイ関係オートパイロットそのものの出来は、挙動がより自然となったように感じる。先行車の停止を検知して自車が自動停車する際、すっとベテランドライバーのように止まるし、再発進の際にスムーズなのは冒頭にも書いた通り。先行車が速度を上げた際、従来はできるだけ早く車間を設定通りに回復すべく急加速することがあったが、バージョン8.0では人間がするように、緩やかに速度を回復するようになった。全体的にロバスト性が高まったといえるだろう。このあたりに将来の自動運転とEVの相性の良さが想像できる。 この他、ユーザーが体感できる変更としては、自慢の17インチ縦長タッチスクリーンのインターフェイスが変わった。それまで上部に常時表示されていた主要な機能のアイコンが走行中は消え、マップなどを大きく表示できるようになった。タップするか停車するとアイコンが表示される。また、マップ、リアカメラ、ミュージックプレーヤーなどの機能のうち、ふたつを上下にマルチ表示できたが、その組み合わせが多様になった。 大きなタッチスクリーン全面にGoogle Mapsを表示させることができるのはテスラ車に共通する利点だが、従来は目的地検索のやり方が他のカーナビに比べ、あまりやりやすいとは言えなかった。今回それが住所や施設などの入力がしやすくなった。 ただし、テスラに目的地を入力するのに一番いい方法は、今も昔もステアリングホイールのスイッチを押したまま目的地を告げる音声入力だ。認識能力が高い。テスラ専用の無料超急速充電施設であるスーパーチャージャーやCHAdeMOの位置に加え、旅館やホテルなどのデスティネーション・チャージャーの位置がマップ上に表示されるようになったので長距離走行の計画が立てやすくなった。 買い換えなくても“最新”を味わえるクルマバージョン7.0以前のソフトウェアのモデルに乗るオーナーも、iPhoneのようにインターネット経由でバージョン8.0にアップデートできる。もちろん無料。 バージョン8.0の配信開始と前後して、テスラは今後生産するモデルのさらなる性能向上を発表した。車両の360度をカバーするように8個のカメラを搭載するほか、12のソニックセンサーを備え、これまでよりも遠くの障害物(となり得る対象)をいち早く検知できるようになる。これにより格段に増える情報を適切に処理すべく、従来の約40倍の処理能力をもつコンピューターを搭載する。 テスラはこれらの新デバイスが、将来の完全自動運転に対応できるだけの能力をもっているという。ただし、しばらくはこうしたデバイスは搭載されるだけで機能しない。今後、確実な検証を終え、法的にもクリアできた地域に限り、新しいソフトウェアを配信してこれらの能力を解き放ち、自動運転を可能とする計画だ。これからテスラを買えば、その個体がいつの日か自動運転できるようになるかと思うと、なんかこう、いよいよかという気がしてワクワクする。 |
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